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文化審議会

2003年10月3日 議事録
文化審議会著作権分科会国際小委員会(第4回)議事要旨

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第4回)議事要旨


  日  時 平成15年10月3日(金)10時30分〜13時00分

  場  所 経済産業省別館1111号会議室

  出席者 (委員)
齊藤著作権分科会会長、紋谷主査、石井、上原、加藤、児玉、関口、大楽、高杉、前田、増山、松田、山地、山本の各委員
(文化庁)
吉尾国際課長ほか

  配付資料  
資料1     文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)議事要旨(案)
資料2   第38回WIPO総会について
資料3   放送条約に係る諸課題について(論点の整理)
資料4   「国際小委員会」の検討状況について(案)

  概  要
(1) 開会

(2) 議事
1 放送機関に関する新条約に係る諸課題について
   事務局から資料3に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

(○:委員   △:事務局)

  1 譲渡権の付与について

譲渡権は著作権者、実演家、レコード製作者にすでに付与しているので、放送・有線放送事業者にも付与すると全体の統一が図れるのではないか。
実演家に付与しているといっても、音の実演に偏っているので、映像の実演の保護についてもあわせて検討すべきではないか。
映像の実演については別途、視聴覚実演に関する新条約について検討しているので別の問題と考えるべきではないか。
国内についても海賊版被害のデータはないのか。
数字的には把握していないが、インターネット・オークション等で頻繁に売買されている。ただ、条約検討の観点から言えば、海外での侵害実態のほうが重要ではないか。
海賊版の作成に対しては複製権で対応可能だったと思うが、これまでアジア地域で積極的に行使してきたのか。そうでない場合、さらに譲渡権を付与された場合、積極的に行使していくこととするのか。
従来、放送番組著作権保護協議会を中心にレンタル店の取締まり、海賊版業者との直接交渉などを行ってきた。譲渡権が付与されると、より権利行使しやすくなる。
アジアで積極的に事業展開をする前提として海賊版対策を行う必要がある。その際、放送事業者自身が著作権者でないと権利行使できない点が問題である。
テレビ番組の方が映画よりも海賊版であることの証明がしやすい。さらに電波の傍受がされるという点では、映画よりも深刻だと思う。
著作権者が権利行使できるのに放送事業者も独自に権利行使できなくてはならない必然性が分からない。侵害者は著作物を入手する媒体として放送を利用するだけなのに、放送事業者に権利を付与しなければならない理由がよく分からない。
第一義的には著作権者が権利行使すべきだが、プロダクションなど権利行使する力がない場合には、放送事業者が自ら権利行使したほうがより幅広く権利行使できる。また、自分たちのビジネスを展開するため、ということの他に、権利処理の問題から販売していない放送番組について海賊版が売られた場合には、放送を流した者の責任として、著作権者に代わって権利行使すべきという点もある。
放送機関が譲渡権を求める気持ちもわかるし、与えることで特に障害も生じないと思うので、付与してもいいのではないか。ただし、他の権利者と同様に、国際消尽すべき。
譲渡権を国際消尽させてしまうと、せっかく国内市場の支配権を付与するという著作権の意味が失われると思うので、あまり賛成しない。
輸入権の創設の話とも関係してくるので、全体の整合性をみて議論すべき。

2 利用可能化権・インターネットによる同時再送信権の付与について

各国は固定物については利用可能化権を付与すべき、非固定物については有線放送権又は一般的な公衆伝達権で押さえられるのではないか、と考えており、非固定物の利用可能化権は条約案にかかれていない。これに対し、日本は、送信行為がどれだけ行われたか、を証明することは難しいので、アップロードを押さえたほうがはるかに有効な権利であると主張している。
利用可能化権の方が違法取締りに利する。せっかく権利が付与されても実効性がなければ意味がないので、利用可能化権を付与して然るべき。あわせて権利管理情報なども放送番組に付加おかないと権利行使しにくい。
インターネットによる同時再送信権は、米国がウェブキャスティングの保護を打ち出してきたときに出てきた権利の一つ。これを受けて、ECは、放送事業者が自ら放送番組を同時に同内容のものをインターネット上に流す場合については、保護してもいいのでは、と新たに提案した。ECとしては保護の受益者を増やして条約の変質をもたらすことを懸念している。
本条約におけるウェブキャスティングは媒体として利用するだけに留め、ウェブキャスターの保護は別の条約で取り扱うべき。日本はすでに別の条約について提案しているのか。
前回SCCRにおいて、ウェブキャスティングについては本条約では扱わず、別途検討すべき、との提案をし、概ねの支持を得た。

3 異時の放送権の付与について

現行著作権法99条では、再放送・有線放送が同時だけ、という解釈の根拠を教えてほしい。
後日確認して回答するが、立法の趣旨は生放送の同時再放送だと理解している。
同時放送についてだけ権利があり、異時の際には権利がないのはおかしいので、権利を付与していいのではないか。ただ、異時の放送権を付与する、となると、インターネットによる再送信権がないとおかしいのではないか、という気がする。インターネットによる送信についても、利用可能化だけでなく自動公衆送信の部分にも権利が及ばないと平仄が合わないのではないか。

4 技術的保護手段・権利管理情報に関する義務について

義務付けを行った場合には、無反応機器を規制することとなるのか。
条約上では無反応機器の規制に就いて特段議論されていない。WCT、WPPTと同様であると考えてよい。
WIPOでは、アクセス・コントロールについて暗号解除権を付与するか、技術的保護手段の中で検討するか、との意見が出ているので、ここでも検討していいのではないか。
アクセス・コントロールを技術的保護手段と結びつけて検討するのは危険なので、分けて考えたほうがいい。放送されるコンテンツと放送の両方に技術的保護手段等が付加された場合、放送されるコンテンツにあらかじめ付加された保護手段等が消えてしまうという問題はないのか。
現行法120条の2等を創設する際、放送されるコンテンツに付加された保護手段等については、アナログ放送では担保することが無理、ということで、その点を配慮した規定にしてもらった。ただし、技術的に担保できる方向で努力していきたい。
コピー・コントロール信号の改変の禁止については、技術的にやむを得ない場合については考慮してほしい。また、無反応機器の規制については慎重な検討をお願いしたい。世界中のあらゆるコピー・コントロール信号に対応した機器でないと販売できない、となると実質的に機器を製造できない。
現行法と同じ規定であれば、技術的にやむを得ない場合については対応できるのではないか。また、無反応機器の規制については全く議論されていない。

5 遡及効について

遡及しないと対応できない具体例があるのか。
保護されるべき放送は、放送を行うたびに生じるので、遡及されることでのメリットは特にない。WPPTなみであればかまわない。
不遡及のほうが著作隣接権の原則なのではないか。
条約前に放送を受信して作成した複製物を条約後に頒布する際には対抗できるので、遡及効も全く意味がないわけではない。ただ、他の隣接権との整合性を見ると不遡及のほうがいいかもしれない。
条約上の議論ではWPPTというよりもベルヌ条約並み、ということになり、各国の解釈が分かれるところになるのではないか、と思う。

2 「国際小委員会」の検討状況報告について
   事務局から資料4に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

(○:委員   △:事務局)

 
資料4の2ページ目「4.主な意見の概要   (1)放送前信号の取扱いについて」の2番目の意見の、「最低限、放送された番組と同一の信号の保護を要望する意見があった」という部分を、「放送されなかった場合には積極的に保護すべきではない」という内容に修正する。

資料4の2ページ目「4.主な意見の概要   (1)放送前信号の取扱いについて」の3番目の意見を、「著作隣接権は、…公衆に直接送信されない放送前信号を保護する…」から「放送行為に対する著作隣接権は、…公衆に直接送信されない放送前信号を著作隣接権で保護する…」に修正する。

  主査より、同報告案の取りまとめについて一任してほしい旨の発言があり、了承された。

  閉会
   事務局から、次回日程等について説明があった後、閉会となった。



(文化庁長官官房国際課)

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