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資料3

放送条約に係る諸課題について
(論点の整理)



平成15年10月3日
著作権分科会国際小委員会


前回SCCRで提示された議長案と我が国の対応状況

議長案で付与される権利 我が国の提案 著作権法の規定
固定権 ○   98条、100条の2
固定物の複製権(*1) ○   98条、100条の2
固定物の譲渡権(*1) ―   更に検討 ×
同時再放送権 ○   99条
有線放送の同時再送信権 ○   100条の3
利用可能化権(*1) ○   (非固定、固定) △   (非固定のみ)
      99条の2、100条の4
インターネットによる同時再送信権 ―   更に検討 ×
異時の再放送権 ×
公衆伝達権(*2) ○   定義を更に検討 ○   100条、100条の4
技術的保護手段・権利管理情報に関する義務 ○   102条、113条、120条の2
暗号解除 ―   更に検討 ×
遡及 ―   更に検討 6.参照
議長提案において付与されている条件 (*1) possible conditions
  (*2) in places accessible to the public


1. 譲渡権の付与について

1.現状
    条約 WPPTで初めて付与→放送機関には未対応
  著作権法 なし
⇒従来、無許諾の譲渡には複製権で対応
      (海賊版作成者と販売者が異なる場合には対応できない)

2.国際的議論の状況
国名 国内法又はEU指令の規定 各国の方針
米国 放送の固定物(同時固定も含む)に権利を付与 無許諾の固定物の頒布について禁止権を付与
EC 排他的許諾権を付与(域内消尽) 排他的許諾権を付与(ただし、消尽の条件は各国法に委ねる)

3.検討に係る観点
(1) 必要性
アジア等で我が国のテレビ放送の海賊版が流通(2001年著作権情報センターの推計値では、香港2200万本、台湾740万本)
(2) 他の著作隣接権とのバランス
条約 レコード製作者、音に係る実演家に付与
  著作権法 レコード製作者、実演家に付与
(3) 検討事項
放送機関に譲渡権を付与すべきか
仮に「譲渡権」を付与する場合にも、WPPTと同様、「権利の消尽についての条件は各国が独自に定める」旨の規定が必要か


2.利用可能化権の付与について

1.現状
       条約:WPPTで初めて付与→放送機関には未対応
       著作権法:非固定の放送の利用可能化権のみ付与

2.国際的議論の状況
国名 国内法又はEU指令の規定 各国の方針
米国 明確な規定なし 無許諾の固定物の利用可能化について禁止権を付与
EC 固定物の利用可能化について排他的許諾権を付与 固定物の利用可能化について排他的許諾権を付与

3.検討に係る観点
(1) 必要性
ダウンロードよりアップロードの方が違法取締りに適するのではないか
特に、ホームページへの違法掲載、ファイル交換など違法行為の取締りに適当ではないか
形態として、サーバーへの蓄積(固定化)、ストリーム放送(非固定)がある
(2) 他の著作隣接権とのバランス
条約 レコード製作者、音に係る実演家に付与(固定物に限定)
  著作権法 レコード製作者(固定物に限定)、実演家(固定物・非固定物を対象)に付与
(3) 検討事項
放送機関に利用可能化権を付与すべきか
権利を付与する場合、対象を固定物、非固定物とすべきか


3.インターネットによる同時再送信権の付与について

1.現状
       条約 なし
  著作権法 なし

2.国際的議論の状況
国名 国内法又はEU指令の規定 各国の方針
米国 放送の固定物(同時固定も含む)に「公の実演権」を付与 排他的許諾権を付与
EC なし 排他的許諾権を付与

3.検討に係る観点
(1) 必要性
地上波放送番組をウェブ上で同時放送する実態あり
民放連の推計によれば、放送の無断再送信件数は年間約4万件
(2) 他の著作隣接権とのバランス
条約 なし
  著作権法 なし
(3) 検討事項
従来、著作権者には「自動公衆送信権」、著作隣接権者には「利用可能化権」のみを付与してきたが、放送機関に対して、利用可能化権の他、「インターネットによる再送信権」を付与する必要があるのか
非固定物の利用可能化権を付与すれば、「インターネットによる同時再送信権」と同様の効果が得られるのではないか


4.異時の放送権の付与について

1.現状
    条約 同時の再放送のみに権利付与
  著作権法 同時の再放送のみに権利付与
従来、無許諾の異時放送には、複製権で対応
(無許諾複製作成者とその複製物を用いて放送を行った者が異なる場合、後者に対応できない)

2.国際的議論の状況
国名 国内法又はEU指令の規定 各国の方針
米国 放送の固定物(同時固定も含む)に「公の実演権」を付与 排他的許諾権を付与
EC なし 排他的許諾権を付与

3.検討に係る観点
(1) 必要性
理論的には可能であるが、我が国では殆ど実態なし(海外では、違法の有線再放送等の実態あり)
(2) 他の著作隣接権とのバランス
条約 なし
  著作権法 なし
(3) 検討事項
放送機関に異時の放送権を付与すべきか


5.技術的保護手段・権利管理情報に関する義務について

1.現状
条約 WPPTで初めて規定→放送機関には未対応
著作権法 対応済み

2.国際的議論の状況
国名 国内法又はEU指令の規定 各国の方針
米国
1 特定の場合を除き、技術的保護手段の回避、又はそれを可能にする機器の製造等を禁止
2 特定の場合を除き、権利管理情報の改変、又は改変がなされた複製物の頒布等を禁止
3 違反した場合、民事罰、刑事罰の適用あり
適切かつ効果的な法的救済を定める
EC 適切な法的保護を与える 適切かつ効果的な法的救済を定める

3.検討に係る観点
(1) 必要性
デジタル放送ではコピー防止、すかし技術を用いることは一般的
(2) 他の著作隣接権とのバランス
条約 レコード製作者、音に係る実演家に付与
  著作権法 レコード製作者、実演家に付与
(3) 検討事項
技術的保護手段(コピー防止)に関する義務付けを行うべきか
権利管理情報(すかし技術)に関する義務付けを行うべきか


6.遡及効について

1.現状
著作権関係条約(ベルヌ条約、万国著作権条約)→遡及
著作隣接権関係条約(ローマ条約、レコード保護条約)→不遡及
⇒TRIPS協定以降、著作隣接権も遡及となる(WPPTは人格権だけ不遡及)
   ただし、現在検討中の視聴覚的実演に関する新条約は不遡及

2. 国際的議論の状況
米国案、EC案とも遡及とする旨規定。

3.検討に係る観点
(1) 必要性
(2) 他の条約とのバランス
(3) 検討事項
本条約の規定について遡及適用すべきか




条約提案比較表

  放送前信号 Unfixed   broadcasting Fixed broadcasting 技術的保護手段 権利管理情報
再放送権 公衆伝達権 有線放送権 固定権 利用可能化権 暗号解除権 複製権 譲渡権 商業的貸与権 利用可能化権 公衆伝達権   暗号解読条項
日本
(更に検討)

(更に検討)

(更に検討)

(更に検討)
×
(更に検討)

(更に検討)
×
(更に検討)
スイス × × ×
アルゼンチン × × ×
EU × × × × ×
ウルグアイ
(EU型)

(Retransmiss
ionに含む)
× ×
ホンジュラス × × × ×
アメリカ ×* × × × ×
ケニヤ × × × × ×
エジプト ? ×* × × ×* ×
IU ×
民放連 × ×
ローマ条約 × × × × × × × × × × ×
TRIPS × × × × × × × × × × ×
日本法 ×
(1970)

(1970)

(1970)

(1970)

(2002)
×
(1970)
× × × ×
(1999)
×
(1999)
         *アメリカ    computer network retransmission/輸入権/加入条件−WCT&WPPT加盟


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