第2節 将来の情報社会を担う子どもたちのために

2.「わかる授業」の実現と,子どもたちの興味・関心を高めるために

(1)ITを活用した教育の推進のための環境整備

 学校のIT環境整備については,これまでも,「e-Japan戦略」に掲げられた目標の達成に向けて,高速インターネット接続や普通教室における校内LAN(校内ネットワーク)整備,さらには教育用コンピュータ整備などに取り組んできました。この結果,平成18年3月現在,おおむね9割程度の公立学校において高速インターネット接続が実現し,教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は7.7人まで整備が進みました。しかし,全体としては進展は見られつつも,校内LAN整備の遅れが顕著であるなど,個々の目標においては多くの課題を残しています。
 また,「IT新改革戦略」においても,「光ファイバによる超高速インターネット接続の実現」など,学校のIT環境の一層の整備を進めることが必要であるとしています。
 また,同戦略においては,「教員1人に1台のコンピュータ配備」を促進し,校務の情報化を推進することが新たな目標として盛り込まれました(図表2-11-2)。文部科学省は,校務の情報化を推進し,教員の業務効率化,学校経営の高度化などを図るため,校務処理における効果的なIT活用方策など,校務の情報化の在り方などに関する調査研究を,平成18年度から実施しています。

図表●2-11-2 「IT新改革戦略」における「教育の情報化」の主な目標

(2)教員のIT活用指導力の向上

 学校における「教育の情報化」を推進するためには,教員のITを活用した指導力の向上は重要な課題です。文部科学省においては,「平成17年度までに,おおむねすべての教員がコンピュータを使って指導できるようにする」ことを目標に,教員研修の充実など様々な取組を推進してきましたが,18年3月現在76.8パーセントと目標達成には至っていません。また,「IT新改革戦略」においても,引き続き「概ねすべての公立学校教員がコンピュータ等のITを活用して指導できるようにする」ことを目標に掲げ,各種の施策に取り組むこととしています。
 具体的には,学識経験者や教育関係者などから成る「教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化に関する検討会」を文部科学省内に設置し,教員のIT活用指導力の基準の具体化を図り到達目標を明らかにするための検討を行っています。
 また,教員のIT活用指導力の向上を目指し,学校などを単位として,文部科学省からのビデオメッセージの放映や,ITを効果的に活用した模擬授業などを実施する草の根活動(ICT利活用加速化プロジェクト)を全国展開しています。
 さらに,IT活用指導力を有する教員の割合の低い地域において,eラーニング(注)型の研修システムなどを活用した研修を実施することにより,当該地域の教員のIT活用指導力の向上を図る「ICT活用重点促進事業」を,平成18年度から全国6地域で実施しています。

  • (注)eラーニング
     時間や場所に関係なく,インターネットなどを介して,必要な知識や技術を習得するための手法・方法。
▲模擬授業の風景
(ICT利活用加速化プロジェクト)

(3)教育用コンテンツの充実・普及

1ネットワーク配信コンテンツ活用推進事業

 各学校のあらゆる授業においてコンピュータやインターネットを活用していくためには,質の高いコンテンツ(教材)の充実が必要です。このため,文部科学省は,民間が開発したコンテンツを各学校ネットワーク上で購入し,授業で活用する研究事業に取り組んでいます。これにより,授業で必要なコンテンツが容易に入手でき,かつ民間企業の協力により,より一層教育用コンテンツの普及・促進が期待できます。

2理科ねっとわーく

 科学技術振興機構では,全国の小・中・高等学校の科学技術・理科教育の授業に利用できるデジタル教材を「理科ねっとわーく」(参照:http://www.rikanet.jst.go.jp(※理科ねっとわーくホームページへリンク))というシステムを介して,インターネットなどを通じて無償で配信しています。現在,平成13年度から開発した93タイトルのデジタル素材約4万点を提供し,約2万人の登録教員が利用しています。また,17年1月からは児童生徒の自宅学習,一般家庭での利用が可能な一般公開版(参照:http://rikanet2.jst.go.jp(※理科ねっとわーく 一般公開版ホームページへリンク))も提供しています。

3インターネット活用教育実践コンクール

 平成12年度から,地域社会や学校などの教育における様々な活動の中で,インターネットを有効に活用している優れた実践事例を表彰し,全国に広く紹介することにより,教育の情報化の推進を図ることを目的とする「インターネット活用教育実践コンクール」を実施しています(参照:http://www.netcon.gr.jp(※インターネット活用教育実践コンクールホームページへリンク))。

(4)教育情報ナショナルセンター(NICER)の整備

 インターネット上には教育に役立つ情報がたくさんあります。しかし,目的の情報を見つけることは簡単ではなく,また,有害サイト等へのアクセスの危険性があるなど子どもが利用するには様々な課題があります。
 国立教育政策研究所は,我が国の教育に関する中核的なWebサイトである教育情報ナショナルセンター(NICER:National Information Center for Educational Resources,参照:http://www.nicer.go.jp/(※教育情報ナショナルセンターホームページへリンク))を整備しています。このサイトでは,インターネット上にある教育・学習に関する情報を体系的に整理し,「しょうがっこう」,「中学校」,「高等学校」,「先生」といった利用者分類に応じ,目的の情報を簡単に検索できるようになっています(図表2-11-3)。
 NICERでは,平成13年8月にサイトを開設し,18年4月現在で約27万件の情報を提供しています。学校教育分野を中心に様々な教育用コンテンツがあり,日本地図から学校などの施設情報や地域の文化に関することを調べて学習できる「日本を学ぶ」などの授業を支援するツール(道具),授業の実践事例なども掲載しています。また,18年3月には,国,地域が提供する生涯学習情報を約13万件追加するとともに,その提供システムを構築しました。
 今後も継続的に情報を追加していくこととしており,特に利用者が求める情報の充実などを進めていきます。

図表●2-11-3 NICERトップページ

(5)「eスクール2006」の開催

 平成18年10月に開催された第18回全国生涯学習フェスティバル「まなびピアいばらき2006」では,「eスクール2006」を開催しました。これは,子どもたちが,コンピュータやインターネットに慣れ親しみながら学ぶ様子や学習の成果を広く紹介することを通じ,教育の情報化を一層推進するため,民間企業の参加を得て行ったものです。具体的には,ITを活用して「わかる授業」を実践することをテーマに,オープン教室(だれでも実践できるITを活用した模擬授業),ワークショップ,ブース展示において,教育現場でのITの効果的な実践事例の発表を行いました(参照:http://e-school.nicer.go.jp(※eスクール2007ホームページへリンク))。

(6)地上デジタルテレビ放送の教育活用の促進

 平成15年12月から,東京・大阪・名古屋の3大都市圏において地上デジタルテレビ放送が開始され,23年に全国でアナログ放送から移行することがが計画されています。地上デジタルテレビ放送では,これまでのアナログ放送と比べ,高画質・高音質な番組が視聴できます。また,データ放送,双方向性,インターネットとの連携,電子黒板としての活用など,地上デジタルテレビ放送の教育現場での活用の可能性が期待されています。このような動きを踏まえて,17年度から,地上デジタルテレビ放送の特長を生かして,授業での効果的な活用方策を開発し,普及するためのモデル事業を全国6地域21校で実施し,授業事例を蓄積しています(参照:http://www.chidigi.jp(※デジタル放送教育活用促進協議会ホームページへリンク))。

▲地上デジタルテレビを活用した授業

(7)障害のある子どもたちへの支援

 障害のある児童生徒については,情報活用能力を育成するとともに,障害を補完し,学習を支援する補助手段として,ITなどの活用を進めることが重要です。
 国立特殊教育総合研究所においては,障害のある子どものニーズに対応した情報コンテンツ(教材)の充実・普及のため,「障害のある児童生徒等の教育の総合的情報提供体制におけるコンテンツの充実・普及体制に関する実際的研究」を平成17年度から実施しています。また,各都道府県において指導的立場に立つ教職員などを対象に「情報手段活用による教育的支援指導者研修」を実施しており,他の研修講義の内容を含め,インターネットを通じて全国の盲・聾・養護学校及び都道府県の特殊教育センター等に配信しています。また,同研究所では,ポータルサイト(参照:http://www.nise.go.jp/portal/index.html(※独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所ホームページへリンク))を開設し,障害のある子どもの教育に関する総合的な情報の提供を行っています。

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