第1節 国際社会で活躍する人材の育成

2.外国語教育の充実

(1)「英語が使える日本人」の育成のための行動計画

 経済や社会などの様々な面で国際化が急速に進む中,21世紀を生きる子どもたちは,広い視野を持つとともに,国際的な理解と協調を図る上で大切な英語のコミュニケーション能力を身に付けることが大切です。このため,「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」を平成15年3月31日に策定しました。この行動計画は,19年度までに「英語が使える日本人」を育成する体制を確立することを目標に,英語教育の改善の目標や方向性を明らかにし,その実現のために国として取り組むべき施策を具体的にまとめたものです。
 この行動計画に基づいて,英語教育の改善を実現するための施策を積極的に進めていくと同時に,様々な機会を通じて,行動計画について広く国民の理解を促すこととしています。行動計画の主な施策は以下のとおりです。

1スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)

 「確かな学力」の向上に向けた取組の一つとして,今後の英語教育の改善に資する実証的な資料を得るため,英語教育に重点的に取り組む高等学校などを「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)」に指定し(期間は3年間),英語教育を重視したカリキュラムの開発,一部の教科を英語によって行う教育,大学や海外姉妹校との効果的な連携方策などについて実践的な研究を行っています。平成17年度までに119校指定し,18年度は新たに34校を指定しました。

2語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)の推進

 JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme)は,外国語教育の充実や,地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進するとともに我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。この事業は,文部科学省,総務省,外務省,さらに財団法人自治体国際化協会の協力の下に,地方公共団体が実施しています。JETプログラム参加者の職種には,ALT(Assistant Language Teacher:外国語指導助手),CIR(Coordinator for International Relations:国際交流員),SEA(Sports Exchange Advisor:スポーツ国際交流員)の三つがあります。平成18年度の参加者は,44か国からALTが5,057人(うち小学校専属ALT137人),CIRが431人,SEAが20人となっています。
 文部科学省では,外国語教育の充実を図るため,ネイティブ・スピーカーから生徒が直接生きた言語を学ぶ機会を豊富に提供することを特に重視し,JETプログラムを推進しています。また,この事業により招致したALTの指導力の一層の向上を図るため,ALTに対する各種の研修,指導,カウンセリングを実施しています。ALTと日本人外国語担当教員によるティーム・ティーチング(注)は,生徒の外国語によるコミュニケーション能力の育成において大きな成果を上げています。

  • (注)ティーム・ティーチング
     複数の指導者による協同授業のこと。

3英語担当教員の資質向上

 英語の授業の大半を英語を用いて行い,生徒がコミュニケーションを行う活動を多く取り入れるような授業を展開していくためには,英語教員が一定の英語力及び教授力を備えていることが非常に重要です。
 このため,平成17年度から,地域における英語教育の中心的な役割を果たす人材の育成を図ることを目的とし,授業研究,討論・意見交換などのワークショップ(参加型集団研修)を大学と教育委員会との連携の下に開催する「英語指導力開発ワークショップ」を実施しています。また,教員研修センターにおいて,英語教員の海外派遣研修を実施しています。

4小学校における外国語学習

 平成17年度に,総合的な学習の時間や特別活動などにおいて,英語活動に取り組んだ公立小学校は,全体の93.6パーセントに上ります。
 文部科学省では,外国語の中でも,国際共通語として最も中心的な役割を果たしている英語によるコミュニケーション能力の育成を図るため,平成13年度に「小学校英語活動実践の手引」を作成し,全国の都道府県・指定都市教育委員会に配付しました。さらに,17年度から,「小学校英語活動地域サポート事業」を実施し,現行の教育課程の下で行われる小学校の英語活動について,指導方法の改善・向上や指導者の能力向上のための取組を支援しています。

(2)高等学校における外国語教育の多様化の推進

 我が国の国際化に適切に対応するためには,近隣のアジア諸国の言語をはじめ,英語以外の多様な外国語教育についても推進する必要があります。このため,文部科学省では,高校教育の多様化・弾力化を図る趣旨から,英語以外の多様な外国語教育の振興を図っています。
 具体的には「高等学校における外国語教育多様化推進地域事業」を実施しており,英語以外の外国語教育に取り組んでいる都道府県を推進地域に指定し,域内の高等学校を推進校として地域の関係機関と連携の上,教育課程上の課題や地域人材の活用方法などについて実践的な調査研究を行っています。指定期間は2年間で,平成18年度は新たに,ロシア語推進地域として北海道,中国語推進地域として神奈川県,大阪府,和歌山県の3府県,韓国・朝鮮語推進地域として大阪府,鹿児島県の2府県を指定しています。

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