第1節 国際社会で活躍する人材の育成

1.国際理解教育の推進

(1)国際理解教育の現状と施策

 国際社会においては,子どもたちが日本人としての自覚を持ち,主体的に生きていく上で必要な資質や能力を育成することが大切です。また,我が国の歴史や文化,伝統などに対する理解を深め,これらを愛する心を育成するとともに,広い視野を持って異文化を理解し,異なる習慣や文化を持った人々と共に生きていくための資質や能力を育成することも重要です。こうした観点から,現在,各学校において,社会科などの各教科,道徳,特別活動や総合的な学習の時間を通じて国際理解教育が行われています。例えば,地域に住む外国人から,その国の郷土料理や民族舞踊などを教わり,それを体験し,料理の由来や踊りに込められた願いなどを学習することで異文化に対する理解を深めるなどの活動があります。
 文部科学省では,毎年,全国の都道府県・指定都市教育委員会の指導主事を対象に「国際理解教育担当指導主事連絡協議会」を開催し,国際理解教育の推進に努めています。平成11年に国際理解教育指導事例集(小学校編)を作成して,全国の都道府県・指定都市教育委員会に配付しました。今後は,18年度中に国際理解教育指導事例集(中・高等学校編)を作成するほか,19年度には小学校編を全面改訂する予定です。
 さらに,平成17年8月には,国際教育に知見を有する有識者からの意見聴取を基に「初等中等教育における国際教育推進検討会報告」を取りまとめ,これを受け,18年度から「国際教育推進プラン」を新たに実施して,国際教育推進のための取組を支援しています。具体的には,地域に核となる学校を置き,そこを中心としてNPO法人等とも連携しながら,国際教育推進のための授業開発やワークショップ(参加型集団研修)の実践などを通して,地域の国際化,国際社会で主体的に活躍できる人材の育成を目指します。指定期間は3年間で,18年度は,神奈川県藤沢市,新潟県上越市,三重県津市,大阪府豊中市の4地域を指定しています。

(2)高等学校等における国際交流等の状況(留学交流,海外修学旅行)

1高校生の留学

 平成17年10月に公表した,「平成16年度高等学校等における国際交流等の状況」によれば,16年度に外国の高等学校へ3か月以上留学した者は4,404人,海外学習旅行者(語学などの研修や国際交流などを目的として,外国の高等学校などに3か月未満の旅行に出た者)は3万4,782人となっています。
 主な留学先は,米国,オーストラリア,ニュージーランドなど,また,主な海外学習旅行先は,オーストラリア,米国,英国などとなっています。いずれも,前回調査した平成14年度と比べ,人数は増加しています。
 文部科学省では,高校生留学の教育上の意義を考慮し,関係機関に対し,安全で有意義な留学ができるよう指導・助言しています。平成15年度からは,年間1万人の高校生が海外留学することを目指し,「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」に所属する団体が実施する海外留学プログラムに参加する者に対して支援を行っています。そのほか,全国の都道府県・指定都市教育委員会の指導主事,高等学校等の教員を対象とした「高校生留学等関係団体関係者研究協議会」の開催や,関係団体が行う留学に関する情報提供活動事業への支援など,国として高校生の留学促進に向けた施策を積極的に進めています。
 さらに,ノーベル賞受賞者らによる講義や他国からの参加高校生との交流を深めることなどを目的とする「内閣総理大臣オーストラリア科学奨学生事業」(主催:オーストラリア・シドニー大学)に10人の高校生を派遣するための募集・選考なども行っています。

2高校生の海外への修学旅行

 平成16年度において海外修学旅行を行った高等学校は延べ1,235校(公立468校,私立767校)で参加生徒数は16万2,299人となっています。主な行き先は,参加生徒数が多い順から,オーストラリア,韓国,米国などとなっています。海外への修学旅行は,近年増加傾向にありましたが,社会情勢不安などの影響から,前回調査した14年度と比べ人数は減少しています。海外への修学旅行は,外国人との交流の機会や外国の歴史・文化などに接する機会を得ることにより,国際理解を深めるなどの意義がありますが,実施に当たっては,安全確保などに万全を期する必要があります。このため,「海外修学旅行の安全確保について」(初等中等教育局長通知)を全国の都道府県・指定都市教育長,知事,附属学校を置く国立大学法人学長あてに発出し,計画段階における準備の万全を求めています。また,万一事故が発生した場合,大使館等関係在外公館において迅速かつ適切な対応を図れるよう,外務省と連携し,安全確保と情報提供体制の整備に努めています。

3「フレンドシップ・ジャパン・プラン」の策定

 文部科学省では,初等中等教育段階の青少年交流を促進するため,外国人青少年受入倍増計画「フレンドシップ・ジャパン・プラン」を平成17年度から実施しています。現在,約4万人の外国人青少年が我が国の学校を訪れ交流していますが,22年度までに,倍増の8万人の交流を目指しています。文部科学省では計画の着実な目標達成を図るため,国土交通省をはじめとする他の関係省庁等とも緊密に連携し,日本と外国の学校を結ぶコーディネート機能を有する官民一体の組織の整備や,受入れのためのノウハウ・優良事例の紹介など,情報提供の充実に努めています。

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