第10節 科学技術の活用を通じた文化芸術の振興

2.科学技術を活用した文化芸術の保存・継承

(1)文化遺産オンライン

 文化財はその場に行かないと実物を見ることができません。また,現場に行っても公開されていないものもあり,そのような場合は写真などで見るよりほかありません。そこで,文化庁では,情報通信技術を活用して文化遺産に関する情報を発信する「文化遺産オンライン」の実現に取り組んでいます。
 文化遺産オンラインは,我が国が誇る文化遺産情報に関するポータルサイトを確立し,インターネット上で総覧できることを目指したものです。
 文化遺産オンラインでは,希望の情報を容易に,かつ,正確に検索でき,画像情報を直接閲覧できる仕組みを備えることにより,文化遺産情報が検索しやすくなっています。これにより,日本全国の様々な文化遺産に触れる機会が多くなることが期待されています。
 現在は,システム実証のため,平成16年4月から国内向けに日本語による「文化遺産オンライン試験公開版」(参照:http://bunka.nii.ac.jp/(※文化遺産オンラインホームページへリンク))をインターネット上で公開しています。この試験公開版は,国立情報学研究所の技術協力の下,国立博物館・国立美術館・文化財研究所をはじめ,全国の博物館・美術館,さらに関係各団体からデジタル画像の使用協力を得て,一般公開しているものです。
 今後は,より使いやすい環境の提供を目指し,引き続き参加館の増加や検索可能な文化遺産情報の充実などを図っていきます。

▲文化遺産オンライントップページ

(2)国立西洋美術館「ウェル.COM美術館」プロジェクト

 デジタル情報技術を,美術館の運営や活動に積極的に活用していこうというプロジェクトが,国立西洋美術館の「ウェル.COM美術館」です。これまでも情報技術は多くの美術館で収蔵作品の管理のためのデータベースなどに利用されてきましたが,それを来館者サービスと結び付ける試みは,あまりなされてきませんでした。

▲携帯端末を利用して作品を鑑賞している様子

▲コレクション・マネジメント・システムの画像資料管理ページ

 「ウェル.COM美術館」の最大の特徴は,館内のコレクション・マネジメント・システム(美術館の収蔵作品を総合的に管理するシステム)と来館者サービスを結び付けることに重点を置いている点にあります。現在,携帯映像端末を用いた作品ガイド,注文対応による複製画像の提供(オン・デマンド印刷),所蔵作品データのネットワークを利用した双方向的な公開,の三つの来館者サービスが構想されています。
 来館者の方々には,携帯端末などによってこれらのサービスが提供されます。また,利用者の履歴を館内サーバに蓄積することによって,自宅等のパソコンと美術館サーバとをネットワークでつなぎ,利用者一人一人のために構成された情報を提供することができるようになります。

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