第6節 新しい時代に対応した著作権施策の展開

3.円滑な流通の促進

 インターネットの普及は,著作物のデジタル化とあいまって,著作物の流通の形態を劇的に変化させています。このような状況の中,文化庁では,著作物の流通促進の観点から,次の施策を行っています。

(1)新たな著作権ビジネスの創出支援

 我が国のコンテンツ関連産業は,今後の成長が見込まれる分野として大きな期待が寄せられています。このため,文化庁では,平成15年度から著作権ビジネスの創出を支援するための調査研究を実施しています。18年度は,「次世代ネットワーク社会における著作権制度の在り方についての調査研究」として,新しい時代に即した著作権制度の在り方について,既存の著作権制度や契約システム,商慣行等にとらわれず,長期的な視野に立った検討を行っています。
 また,調査研究成果を一般に還元するためシンポジウムを開催しており,平成18年7月には,第4回コンテンツ流通促進シンポジウム「進化する音楽著作権ビジネス」を開催しました。

▲第4回コンテンツ流通促進シンポジウム
「進化する音楽著作権ビジネス」

(2)文書による著作権契約の促進

 デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,著作物の創作や利用が多様化し,広く一般の方々も,著作物の利用に際して契約が必要となる場面に直面することが多くなっています。これを踏まえ,文化庁では,平成16年に,著作物の創作又は利用を職業としない人々が簡単に契約書案を作成できるよう,契約のひな形を半自動作成する「著作権契約書作成支援システム」を作成しました。さらに,17年には著作権契約の基本的な考え方や具体的な条項例を分かりやすく解説する「誰でもできる著作権契約マニュアル」を作成し,文化庁ホームページで公表しました(参照:https://www.bunka.go.jp/chosakuken/(※文化庁ホームページへリンク))。
 平成18年度は,これらを利用するための導入編として,著作権法や法律実務について知識がない人々に対して,契約の必要性を理解し,また,契約の考え方に慣れてもらうことを目的としたマニュアルを策定しています。

(3)著作権等管理事業法の運用の見直し

 権利の集中化を通じて著作物等の利用の円滑化を図るため,著作者等から権利の委託を受け,著作権等の管理の業務を行う著作権等管理事業について,その業務の適正な運営を確保するため,平成13年より,著作権等管理事業法が施行されています(図表2-9-21)。

図表●2-9-21 著作権等管理事業者の登録事業者数の推移

 著作権等管理事業法は施行後3年を経過した時点で見直すこととされており,平成16年度から,文化審議会著作権分科会において同法の見直しについて検討が行われました。その結果,同法の見直しの必要はないものの,著作権等管理事業者への指導監督の強化の必要性や,同法の規制対象外の管理業務の実態把握に努めることなどの課題が挙げられました。
 これらの課題に対応するため,文化庁では,ガイドラインの策定を通じた著作権等管理事業者に対する指導監督の強化,文化庁への各種手続に関する事務の簡素化,同法の規制対象外の事業者の実態調査を行うことにしています。

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