第6節 新しい時代に対応した著作権施策の展開

2.法制度の整備

(1)著作権法に関する今後の検討課題

 国際条約への対応に伴う著作権法の改正をおおむね完了した今日,文化審議会著作権分科会は,1著作権者・著作隣接権者が安心できる法制度,2著作物の流通・利用が円滑化する法制度,3国民が理解しやすい法制度という三つの観点の調和に留意しつつ,平成17年1月,今後優先して対応すべき著作権法上の課題を,大局的・体系的に抽出・整理しました。
 具体的には,主に下のような課題について,順次検討を行っています。

○著作権法に関する今後の検討課題(抄)

  1. 私的録音録画補償金の見直し
  2. 権利制限の見直し
  3. 私的使用目的の複製の見直し
  4. 共有著作権に係る制度の整備
  5. 著作物の「利用権」に係る制度の整備
  6. 保護期間の見直し
  7. 政令等への委任
  8. 表現・用語の整備等

(2)文化審議会著作権分科会における検討状況

 平成17年の文化審議会著作権分科会においては,「著作権法に関する今後の検討課題」(17年1月)として取りまとめられたもののうち,委員及び関係団体から数多くの改正の要望が出され,制度と実態の乖離が見られることから緊急に検討を要する課題として「権利制限の見直し」や「私的録音録画補償金の見直し」などについて検討が進められ,18年1月に「文化審議会著作権分科会報告書」が取りまとめられました。
 同報告書では,「権利制限の見直し」について,特許や薬事に関する審査手続等いくつかの論点に関しては権利制限をすることが適当であるとされたほか,「私的録音録画補償金の見直し」をはじめとしたその他の論点に関しては引き続き検討することが適当であるとされました。また,著作権分科会法制問題小委員会のもとに設置されている「デジタル対応ワーキングチーム」,「契約・利用ワーキングチーム」,「司法救済ワーキングチーム」における検討結果についても同小委員会で審議された上,報告・検討されています(詳細についてはhttps://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/06012705.htm(※文化審議会 諮問・答申へリンク)参照)。
 平成18年の文化審議会著作権分科会においては,緊急的に検討が必要な課題について審議が行われ,18年8月に「文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書」が取りまとめられました。同報告書においてまとめられている審議の内容は以下に挙げる3点です。
 第一に,IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等につき,「放送の同時再送信」については法改正をすることが適当とされました。第二に,罰則の強化について,著作権侵害罪の個人罰則及び法人罰則,秘密保持命令違反罪の法人罰則について産業財産権法とのバランスを踏まえ,引き上げを行うことが適当とされました。第三に,税関における水際取締に係る著作権法の在り方について,著作権等の侵害品の「輸出」及び「輸出を目的とする所持」を取締りの対象とすることが適当とされました(詳細についてはhttps://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/06083002.htm(※文化審議会 諮問・答申へリンク)参照)。
 なお,上記二つの報告書において法改正を行うことが適当とされたものについて,平成18年臨時国会で著作権法の改正が行われました。法改正の内容については,Topics 2をご覧ください。

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