第6節 新しい時代に対応した著作権施策の展開

1.著作権施策の推進

(1)著作権制度の意義

 著作権法は,「著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利(注)を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もつて文化の発展に寄与すること」(第1条)を目的としています。
 人々の創作意欲や努力によって創り出される創作物について,その無断利用が蔓延すると,創作者の創作意欲を損ない,文化的な創作活動全体を阻害してしまうことになります。著作権制度は,このような事態を防ぐため,創作者に対して無断利用の防止等を行う権利を付与し,創作活動に対して正当な報酬や評価が与えられることを保障することによって,より優れた創作活動への意欲(インセンティブ)を高め,文化の振興を促すためのものです。また,創作物を公に伝達する上で重要な役割を担っている実演家,レコード製作者,放送事業者及び有線放送事業者についても一定の保護を与えています。
 近年,企業等の経済活動による著作物の創作・流通・利用等が活発に行われるようになっており,著作権制度が産業経済に与える影響についても,大きな注目を集めるようになっています。

  • (注)これに隣接する権利
     著作隣接権という。著作隣接権とは著作物を「伝達する者」(実演家,レコード製作者,放送事業者,有線放送事業者)に付与される権利。著作権と同様に,実演等を行った時点で自動的に付与される。

(2)「知的財産立国」の実現を目指した著作権施策

 我が国は,平成14年2月の小泉総理大臣の施政方針演説を契機として,知的財産基本法の成立や知的財産推進計画の策定など,「知的財産立国」の実現に向けた施策を推進しています。このような中,著作権についても,急速に進む技術革新や新たなビジネスの登場,グローバリゼーションの進行等に対応するため,1法制度の整備,2円滑な流通の促進,3著作権教育の充実,4国際的課題への対応の四つの施策を総合的に展開しています。

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