第3節 文化財の保存と活用

8.文化財登録制度の推進

(1)文化財登録制度とは

 近年の国土開発,都市計画の進展,生活様式の変化などにより,社会的評価を受ける間もなく消滅の危機にさらされている文化財が,近代のものを中心として多種多様かつ大量にあります。文化財登録制度は,これらの文化財を後世に幅広く継承していくため,保存と活用の措置を特に必要とするものにつき,国が文化財登録原簿に登録するものです。これは届出制と指導・助言・勧告を基本とする緩やかな保護措置を講じる制度であり,従来の指定制度(重要なものを厳選し許可制などの強い規制など手厚い保護を行うもの)を補完するものです。
 従来,文化財登録制度は,建造物に限定して実施してきました。しかし,建造物以外にも開発などに伴い保存や活用のための措置が特に必要とされる文化財が存在することから,平成17年4月に施行された文化財保護法の一部を改正する法律により,建造物以外の有形文化財(美術工芸品),有形の民俗文化財や記念物も対象となりました。

(2)文化財の登録

 平成17年12月以降では,「日光金谷ホテル本館」(栃木県),「同志社アーモスト館」(京都府),「おかやま旧日銀ホール(旧日本銀行岡山支店本館)」(岡山県)などが登録され,18年11月現在,多種多様な建造物5,578件が文化財登録原簿に登録されています。また,建造物以外の有形文化財である美術工芸品や有形民俗文化財,史跡・名勝・天然記念物にも登録制度が拡充されたことに伴い,各分野においても登録がなされています。

(3)保存・活用のための取組

 登録された文化財については,修理の際の設計監理費の国庫補助(建造物,記念物),日本政策投資銀行の低利融資などの支援(建造物),展覧会などに登録有形文化財を借用展示する際の支援(美術工芸品),また,有形の民俗文化財については,登録に向けた現状調査などの支援措置があります。

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