第3節 文化財の保存と活用

5.記念物の保存と活用

(1)記念物とは

 記念物とは以下の文化財の総称です。

  • 1貝づか,古墳,都城跡,城跡,旧宅等の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いもの
  • 2庭園,橋梁,峡谷,海浜,山岳などの名勝地で我が国にとって芸術上又は観賞上価値の高いもの
  • 3動物,植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもの

 記念物のうち重要なものを,上記の種類に従って,「史跡」,「名勝」,「天然記念物」に指定し,これらの保護を図っています。そのうち特に重要なものについては,「特別史跡」,「特別名勝」,「特別天然記念物」に指定しています。

(2)史跡,名勝,天然記念物の指定

 平成18年1月及び7月に,全国5番目の規模の古墳時代前期中ごろの前方後円墳である「藤本観音山古墳」(栃木県)など18件を史跡名勝天然記念物に指定しました(図表2-9-11)。

図表●2-9-11 史跡名勝天然記念物 平成18年1月,7月指定(計33件)

 史跡については縄文時代の集落や古墳,古代の宮殿,中世の城館,近世の城跡などの遺跡が指定され,保護されてきましたが,近代の遺跡については,いくつかの遺跡は指定されているものの,体系的な保護の施策の立案とその実施が課題となっています。
 名勝については,近年,発掘調査により様相が明らかとなった庭園遺構,地域の風土的特色を有する庭園,各地方に所在して時代的・風土的特色を有し日本の文化における多様性を表す風景などにも重点を置き指定を進めていますが,公園など近代に特徴ある優れた名勝地について,その保護が課題となっています。
 天然記念物については,カモシカなどの野生動物,湿原などの原生的自然,火山でできた断層などの自然現象から,鎮守の森などの地域のシンボル,柴犬などの家禽など,人との結び付きが強いものまで多様なものを指定してきましたが,干潟や海浜などの我が国の自然の多様性を示す地形やそこに生息する動植物の保護が課題となっています。

(3)保存・活用のための取組

 史跡等の保存を担保するため,史跡等では現状変更行為などについては許可制をとっています。史跡等の土地所有関係や土地利用形態は多様であり,現状変更の目的も多岐にわたるため,その許可に際しては,関係者の所有権その他の財産権との調整を図りながら対応しています。
 史跡等を確実に次世代に伝えるためには,調査研究に基づき本質的価値を把握した上で,保存と管理の基本方針を定めることが必要です。保存管理計画はこの基本方針を具体化したもので,その主要な目的は,史跡等を構成する諸要素を分類して,重要度及び保存活用方法などの観点から地区を区分すること,個々の史跡等の特性に基づいた現状変更の許可に関する取扱い基準を定めることの二つです。特に土地所有関係が複雑で土地利用形態が複雑な史跡等では,保存管理計画の策定は不可欠であり,管理団体が実施するこのような史跡等の保存管理計画策定に対して,国庫補助事業を行っています。
 また,史跡等の整備は,「保存のための整備」と「活用のための整備」があり,前者は史跡等の本質的価値を構成する諸要素の保存のためのもので,具体的には境界標等の管理施設の設置,石垣や歴史的建造物などの修理,各種の防災工事・災害復旧などを内容としています。一方,後者は来訪者が史跡等への理解を深め快適に見学できる環境を提供するためのもので,具体的には遺構の表示や復元,園路,広場,休憩舎,ガイダンス施設等の各種施設整備などがその内容となります。所有者や管理団体が実施する史跡等の整備には国庫補助事業として対応するとともに,必要に応じて助言や指導を行っています。
 こうした史跡等の整備により,地域住民が史跡等の存在と意義を再認識し,積極的な活用が図られるようになった事例が多く見られるとともに,最近では史跡等の整備計画や工事の段階から住民が参加する事例も出始めるなど,「まちづくり」や地域らしさ創出の一つの核として史跡等が位置付けられることも少なくありません。

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