第3節 文化財の保存と活用

4.民俗文化財の保存と継承

(1)民俗文化財とは

 我が国には,それぞれの地域に根差した衣食住・生業・信仰・年中行事等に関する風俗慣習,民俗芸能,民俗技術及びこれらに用いられる衣服,器具,家屋,その他の物件など,人々が日常生活の中で創造し,継承してきた有形・無形の民俗文化財があります。これらは国民の生活の推移を理解する上で欠くことのできないものです。
 なお,民俗技術は,生活や生産に関する用具・用品などの製作技術など地域において伝承されてきた技術を保護するため,平成17年4月に施行された文化財保護法の一部を改正する法律により新たに民俗文化財の定義に追加されたものです。

(2)重要有形・無形民俗文化財の指定等

 国は,有形,無形の民俗文化財のうち,特に重要なものを「重要有形民俗文化財」,「重要無形民俗文化財」に指定し,その保存と継承を図っています。また,重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうち,特に記録作成などを行う必要があるものを「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択しています。
 平成18年3月には,「糸魚川木地屋の製作用具と製品コレクション 附 木地屋関係文書」(新潟県)の1件を重要有形民俗文化財に指定し,「津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術」(青森県)など9件を重要無形民俗文化財に指定しました(図表2-9-10)。
 民俗文化財は,日常生活に基盤を置くものであり,近年,急激に消滅変貌する傾向にあります。このため,文化庁では,重要有形民俗文化財に指定された山鉾などの修理事業や民俗芸能などの用具の製作・修理事業,伝承者養成事業など重要有形民俗文化財や重要無形民俗文化財の保護のために必要な事業に対する補助を行っています。このような施策を通じてそれぞれの地域に根差す民俗文化財の保存・継承を図っています。

図表●2-9-10 重要無形民俗文化財 18年3月指定(計9件)

▲重要無形民俗文化財(上総堀りの技術)

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