第3節 各分野の研究開発の推進方策

9.人文・社会科学の振興方策

 人文・社会科学は,人々の思索や行動,あるいは社会的な諸現象の分析・考察を通して,人間の精神生活の基盤を築き,日々の営みに希望や行動の手がかりを与えるとともに,社会的合意形成や社会的諸問題の解決に寄与する重要な役割を担っています。
 グローバル化・情報化が進む中で,特に民族,宗教,精神生活,社会規範や制度をめぐる問題など,現代社会において人類が直面している著しく複雑性を帯びた様々な問題の解明と対処のためには,1人文・社会科学の各分野の研究者が協働して,また,2人文・社会科学と自然科学間において,学際的・学融合的に取り組む研究を進め,その成果を社会への提言として発信する必要があり,その際には,人文・社会科学の側からの積極的イニシアティブも求められています(「人文・社会科学の振興について―21世紀に期待される役割に応えるための当面の振興方策―(報告)」(平成14年6月11日科学技術・学術審議会学術分科会))。
 このような考え方に立って,基礎的な分野も含めた人文・社会科学の各分野に携わる人々が協働して取り組む新しい研究の枠組みとして,平成15年度より,人文・社会科学の振興のための「課題設定型のプロジェクト研究」が日本学術振興会を通じて実施され,新たな学問分野・領域の開拓を通じて,我が国の人文・社会科学の活性化に貢献することが期待されています。
 また,諸学が協働する総合的研究の中でも人文・社会科学の積極的なイニシアティブが求められる領域である,「地域」を対象とする研究について,社会的・政策的なニーズに直接こたえるタイプの研究を特に推進していくための新しい仕組みとして,平成18年度より,「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」が実施されています(参照:第2部第5章Topics)。

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