第11節 男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興

 男女共同参画社会とは,男女が互いにその人権を尊重し,喜びも責任も分かち合える対等なパートナーとして様々な分野に参画し,その個性と能力を十分に発揮できる社会のことです。このような社会の実現のためには,国民一人一人が男女共同参画や自立の意識を持つことが不可欠です。
 平成17年12月に閣議決定された「男女共同参画基本計画(第2次)」においては,「第1次基本計画」に引き続き,「男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実」が重点目標の一つに挙げられました。人権尊重を基盤にした男女平等観の形成を促進するため,男女平等の理念に基づく教育が,学校,家庭,地域など社会のあらゆる分野において行われることの重要性が指摘されています。
 このような観点から,文部科学省では,学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じて,男女の平等や相互の理解・協力について適切に指導するとともに,男女が共に各人の生き方,能力,適性を考え,主体的に進路を選択する能力・態度を身に付けられるよう,進路指導や就職指導の充実に努めているところです。
 社会教育においては,男女が各人の個性と能力を十分に発揮し,社会のあらゆる分野に参画していくための学習機会の充実を図っています。
 「第2次基本計画」では,新たに取組を必要とする分野として,科学技術分野における女性の参画の推進が追加され,女子高校生などの理工系分野への進路選択の支援など積極的な取組を始めています。
 また,「第2次基本計画」では,男女共同参画の理念や「社会的性別」(ジェンダー)の視点の定義について,誤解の解消に努め,また,恣意的運用・解釈が行われないよう,わかりやすい広報・啓発活動を進めることなどが「第2次基本計画」に記載されました。これを受け,文部科学省では,内閣府と連携して,平成18年2月に各都道府県・政令指定都市教育委員会などに対し,「社会的性別」(ジェンダー)の視点の定義及び今後は「ジェンダーフリー」という用語を使用しないことが適切である旨の事務連絡を発出するなど,その周知に努めています。

1.男女共同参画社会の形成に向けた学習機会の提供

(1)男女共同参画社会の形成に関する教育・学習の取組

 文部科学省では,これまで,主に多様化・高度化した女性の学習需要に対応した生涯にわたる学習機会の整備を行ってきました。
 平成16年度から,女性の多様なキャリア(注)形成に関する調査研究を3年計画で実施したほか,17年度からは,地域社会における方針決定過程への参画に必要な資質の向上を図るための実践的な研修などを行っています。さらに,18年度からは女子生徒の科学技術分野への進路選択を支援するため,社会教育関係者などに向けた取組のモデルプログラム事例集を作成するなどの事業を開始しました。

  • (注)キャリア
     ここでは,職業,経歴ばかりでなく,社会的な活動歴も含む(平成11年6月9日生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす」より)。

(2)女性の再チャレンジ支援

 少子高齢化が進む我が国が活力ある経済・社会を維持していくためには,男性だけでなく,女性が個性と能力を十分に発揮する社会環境を整えることが重要です。
 そこで,政府においては,仕事と子育てなどをバランスよく両立できる環境を整えるとともに,子育てのためにいったん女性が家庭に入っても,希望すれば再チャレンジできる環境の整備を図るため,関係閣僚による「女性の再チャレンジ支援策検討会議」を設置し(平成17年7月25日),女性の再就職・起業などに関する総合的な支援策である,「女性の再チャレンジ支援プラン」(17年12月26日)を取りまとめました。さらに,18年12月25日には本プランを改定し,更なる支援策の強化を図りました。
 このプランに基づき,文部科学省では,キャリアの中断により不安を感じている女性に対する支援として,専修学校における学習・能力開発の機会の提供,優れた研究者の出産・育児などによる研究中断からの円滑な復帰の支援などを行っています。
 さらに,「多様な機会のある社会」推進会議(「再チャレンジ推進会議」)において,「再チャレンジ支援総合プランが策定され,女性の再チャレンジ支援についても盛り込まれたことなどから,更なる取組の充実を図ることとしています。

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