学校教育においては,子どもたちが環境について正しい理解を深め,環境を大切にし,環境の保全に配慮した行動が取れるようにするため,小・中・高等学校を通じ,児童生徒の発達段階に応じて,社会科,理科,家庭科などの教科や道徳,特別活動,「総合的な学習の時間」など,学校の教育活動全体を通じて環境教育が行われています。
平成14年度から順次実施されている学習指導要領においても,各教科などにおける環境に関わる内容を一層充実させるとともに,体験的・問題解決的な学習を重視するなど,環境教育について改善・充実を図っています。また,身近な地域の環境問題の学習や,豊かな自然環境の中での体験活動を通じて自然の大切さを学ぶ学習など,様々な取組が進められています。
文部科学省では,これらの取組を支援し,環境教育を一層推進するための施策を実施しています。まず,米国の提唱による「環境のための地球規模の学習及び観測(GLOBE)計画」(注1)に参加するモデル校や,学校・家庭・地域社会が一体となって環境教育を推進するモデル地域の指定を行っています。また,環境教育の優れた実践発表や研究協議を行う全国環境学習フェアの開催,総合的な学習の時間におけるNPOなどの効果的な活用の在り方や方策などを研究しています。
NPOなどの外部人材の活用推進事業の実施,小・中・高等学校における環境教育推進のためのプログラム開発,さらには環境教育に関し各都道府県で指導的立場に立つ教員を対象とした講習会などを行っています。
体験活動については,「豊かな体験活動推進事業」を実施し,「体験活動推進地域・推進校」,「地域間交流推進校」,「長期宿泊体験推進校」などを指定して他校のモデルとなる自然体験活動などの様々な体験活動を行っています(参照:第2部第2章第1節3)。
また,環境省と連携・協力して行う取組として,児童生徒や教員がインターネットなどを通じて環境教育に活用できる総合的な情報提供体制の整備を計画的に進めるとともに,環境教育支援教材の開発を進めています。また,環境保全活動に取り組む地域の方々や教員を対象に,基本的知識の習得と体験学習を重視した環境教育の基礎講座を開催しています。
さらには,子どもたちの豊かな人間性をはぐくむため,関係省庁と連携して,地域の身近な環境をテーマに,継続的な体験学習によるモデル事業の実施を通して,子どもたちが自ら企画する体験型環境学習を推進しています(参照:第2部第8章第7節1)。
近年,学校施設の整備において,環境を考慮した施設整備が求められています。文部科学省では,環境への負荷の低減を図るとともに,学校ビオトープ(注2)での自然観察や太陽光を利用した設備の原理・仕組みなど環境教育にも活用される,エコスクール(環境を考慮した学校施設)の整備を推進しています(参照:第2部第11章第1節3)。
社会教育における環境教育について,社会教育施設が中核となり,環境保全など地域における課題を総合的に把握した上で,課題解決のためのモデル事業を実施し,その成果を全国に普及し啓発しています。
さらに,国立青少年教育施設における青少年の自然体験活動を支援する指導者の養成や青少年教育振興機構に設置されている「子どもゆめ基金」により民間団体が実施する様々な子どもの体験活動等への支援を行うなど,子どもの体験活動を推進しています(参照:第2部第8章第7節1)。