令和6年12月11日児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

6初児生第15号
令和6年12月11日
 
 各都道府県教育委員会指導事務主管課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管課長
 各都道府県私立学校主管課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当課長
 附属学校を置く各公立大学法人担当課長   殿
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当課長
 
 
              文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
                        千々岩  良英
                            
 
 

児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

 
 
 平素より、文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り、誠にありがとうございます。
 標記については、これまでも自殺対策基本法(平成18年法律第85号)等に基づき、学校において、児童生徒の自殺予防の取組の充実に積極的に取り組んでいただいているところです。
 しかしながら、警察庁・厚生労働省の自殺統計によると、令和5年の児童生徒の自殺者数は513人と、過去2番目に多い件数となり、大変憂慮すべき状況にあります。また、令和6年の児童生徒の自殺者数は、1月から10月までの暫定値で420人(令和5年同期間:434人)という状況にあります。(別添1)
 18歳以下の自殺は、学校の長期休業明けにかけて増加する傾向があります。そのため、これらの時期にかけて、学校として、児童生徒の自殺予防について組織体制を整え、取組を強化することは、児童生徒の尊い命を救うことにつながります。
 これらのことを踏まえ、下記のとおり、学校として、保護者、地域住民、関係機関等と連携の上、長期休業の開始前から長期休業明けにおける児童生徒の自殺予防に向けた取組に全力で取り組んでいただくよう、何卒よろしくお願いいたします。
 また、別添2のとおり、令和5年の児童生徒の自殺の原因・動機として、学校問題のうち、約6割が学業不振や入試・進路に関する悩みであることが分かっており、今年10月31日に公表した「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」においても、自殺した児童生徒が置かれていた状況として、学校に係る問題のうち進路問題や、学業等不振に係るものが多くなっていることから、長期休業において進路等を検討する児童生徒もいると考えられることを踏まえ、進路指導の充実や見守り活動を丁寧に実施していただくようお願いします。
 さらに、児童生徒の自殺者数が依然として高い水準にある中、児童生徒の心や体調の変化を把握したり、個別の児童生徒の状況を多面的に把握するICTツールを適切に活用したりすることは、教職員がこれまで気付いていなかった児童生徒の心身状態に気付くことができ、教職員の児童生徒理解の幅が広がり、悩みや不安を抱えた児童生徒の早期把握や早期支援につながると考えられ、ひいては、児童生徒の自殺の未然予防にもつながるものと考えております。
 そこで、昨年度、文部科学省において、1人1台端末等を活用して、無償・有償で利用できる健康観察・教育相談システムを別添3のとおり整理するとともに、Google フォーム又はMicrosoft Formsを活用して同様のアンケートフォームを作成するためのマニュアルを別添4のとおり作成しております。
 これらの資料も活用しつつ、各学校及び学校設置者におかれましては、1人1台端末等の活用によるSOSの早期把握について取り組んでいただくようよろしくお願いいたします。
 また、厚生労働省からは「令和6年度「自殺対策強化月間」に向けた啓発活動等の推進について(依頼)」(令和6年12月11日付け参自発1211第2号厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)通知)が発出されていますので、併せて共有します。
 これらのことについて、都道府県・指定都市教育委員会担当課におかれては所管の学校等及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、都道府県私立学校主管課におかれては所轄の学校法人等を通じてその設置する学校に対して、国公立大学法人附属学校事務主管課におかれてはその設置する附属学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、周知を図るとともに、児童生徒の自殺予防について特段の御配慮をお願いします。

 

(1)学校における早期発見に向けた取組
 各学校において、長期休業の開始前から、ICTツールも活用しつつ、アンケート調査、教育相談等を実施するとともに、一人一人に対して面談を行うなど、悩みや困難を抱える児童生徒の早期発見に努めること
 また、学校が把握した悩みや困難を抱える児童生徒や、いじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等に対しては、長期休業期間中においても、全校(学年)登校日、部活動等の機会を捉えて児童生徒との面談の実施や、保護者への連絡、家庭訪問等により継続的に児童生徒の様子を確認し、児童生徒に自殺を企図する兆候がみられた場合(※)には、教職員が抱え込まず、速やかに学校の管理職、学校設置者と情報共有を図り、保護者、医療機関等とも連携しつつ、命の危機を防ぐため万全の体制で対応に当たること
 また、児童生徒の自殺の背景の一つとして精神疾患が挙げられていることを踏まえ、学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細やかな健康観察や教育相談の実施等により、児童生徒の状況を的確に把握し、スクールカウンセラー等による支援を行ったり、スクールソーシャルワーカー等を活用して医療等の関係機関に繋いだりするなど、心の健康問題への対応を徹底すること。その際、「スクールカウンセラー等活用事業」や「スクールソーシャルワーカー活用事業」を利用して、スクールカウンセラーが児童生徒へのカウンセリングを行ったり、スクールソーシャルワーカーによるスクリーニングを行ったりするなど新たな取組を行った場合は、追加配置が可能な場合もあるので御相談いただきたいこと。
 加えて、「SOSの出し方に関する教育」を含めた自殺予防教育を実施するなどにより、児童生徒自身が心の危機に気付き、身近な信頼できる大人に相談できる力を培うとともに、児童生徒が安心してSOSを出すことのできる環境の整備に努めること。
 さらに、「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする電話相談窓口や、SNS等を活用した相談窓口の周知を長期休業の開始前において積極的に行うこと。相談窓口の周知にあたっては、教室など児童生徒の目につきやすい場所への掲示や1人1台端末を活用する際のポータルサイト、ブラウザのお気に入り機能等を活用して、各種相談窓口を周知するなどの方法も考えられること
(※)自殺予防教育については、「子供に伝えたい自殺予防-学校における自殺予防教育導入の手引-」を参照。特に、自殺を企図する兆候については、「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」第2章を参照
 
「子供に伝えたい自殺予防-学校における自殺予防教育導入の手引-」

○「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」


(2)保護者に対する家庭における見守りの促進
 保護者に対して、長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すこと。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については、積極的に学校に相談するよう、学校の相談窓口を周知しておくこと。その際、文部科学省のHP上の子供のSOSの相談窓口(※)や「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする相談窓口も保護者に対して周知しておくこと。複数の相談窓口を周知する場合は、悩みや不安を抱える児童生徒がどこに相談すべきか混乱してしまわないよう、必要に応じて相談窓口を整理し、周知すること。なお、これらの各家庭における保護者による見守りについては、長期休業の開始前又は長期休業期間中における保護者会等の機会や学校(学級)通信を通じて、保護者に促すことが考えられること。学校は、保護者から相談を受けた時には、必要に応じて関係機関と連携しながら、適切に対応すること。
(※)子供のSOSの相談窓口
 
(3)学校内外における集中的な見守り活動
 長期休業明けの前後において、学校として、保護者、地域住民の参画や、関係機関等と連携の上、学校における児童生徒への見守り活動を強化すること。また、学校外における見守り活動については、教育委員会等において、学校、警察等関係機関、地域の連携を一層強化する体制を構築し、取組を実施すること。その際、警察との連携においては、「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(令和5年2月7日付け4文科初第2121号)において指定を求めている「学校・警察連絡員」が情報共有を図り、緊急を要する事案を含め緊密に連携して対応に当たること。特に、児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については、これらの時期に見守り活動を集中的に実施することが有効であること。
 
(4)ネットパトロールの強化
 児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは、自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つである。このため、教育委員会等が実施するネットパトロールについて、長期休業明けの前後において、平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。自殺をほのめかす等の書き込みを発見した場合は、即時に警察に連絡・相談するなどして当該書き込みを行った児童生徒を特定し、当該児童生徒の生命又は身体の安全を確保すること。また、警察等関係機関においてネットパトロールが実施されている場合には、当該関係機関との積極的な連携に努めること。 
 
 

【添付資料】

【参考資料】
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
 
生徒指導提要(改訂版)
 
「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」
 
小学生用啓発教材「わたしの健康」、中学生用啓発教材「かけがえのない自分 かけがえのない健康」、高校生用啓発教材「健康な生活を送るために」

 

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。