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6.教科書採択の方法
  
1.採択の権限
  教科書の採択とは、学校で使用する教科書を決定することです。その権限は、公立学校で使用される教科書については、その学校を設置する市町村や都道府県の教育委員会にあります。また、国・私立学校で使用される教科書の決定の権限は校長にあります。

2.採択の方法
  採択の方法は義務教育である小学校、中学校、中等教育学校の前期課程及び盲・聾・養護学校の小・中学部の教科書については「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」によって定められています。
  高等学校の教科書の採択方法については法令上、具体的な定めはありませんが、各学校の実態に即して、公立の高等学校については、採択の権限を有する所管の教育委員会が採択を行っています。
義務教育諸学校の教科書の採択方法は次のとおりです(図3参照)。
(1)   発行者は、検定を経た教科書で次年度に発行しようとするものの科目・使用学年・書名・著作者名等(書目)を文部科学大臣に届け出ます((1))。文部科学大臣はこの届出のあった書目を一覧表にまとめて教科書目録を作成します。この教科書目録は都道府県教育委員会を通じ各学校や市町村教育委員会に送付されます((2))。教科書は、この目録に登載されなければ採択されません。
  また、文部科学省では、採択の際の調査・研究に資するため新規に編集された教科書について、各発行者が作成した教科書編集趣意書を集録し、採択関係者へ周知します。

(2)   発行者は、採択の参考に供すため、次年度に発行する教科書の見本を都道府県教育委員会や採択権者(市町村教育委員会、国・私立学校長)に送付します((3))。

(3)   採択の権限は、既に述べたように市町村教育委員会や学校長にありますが、適切な採択を確保するため、都道府県教育委員会は、採択の対象となる教科書について調査・研究し、採択権者に指導、助言、援助することになっています。
  この調査・研究を行うに当たり、都道府県教育委員会は専門的知識を有する学校の校長及び教員、教育委員会関係者、学識経験者から構成される教科用図書選定審議会を設置します。この審議会は専門的かつ膨大な調査・研究を行うため、通常、教科ごとに数人の教員を調査員として委嘱しています。
都道府県教育委員会は、この審議会の調査・研究結果をもとに選定資料を作成し、それを採択権者に送付することにより助言を行います((4)、(5))。
  また、都道府県教育委員会は、学校の校長及び教員、採択関係者の調査・研究のため毎年、6月から7月にかけて一定期間、教科書展示会を行っています。この展示会は、各都道府県が学校の教員や住民の教科書研究のために設置している教科書の常設展示場(教科書センター)等で行われています。なお、教科書センターは昭和31年以来設置されているもので現在、全国に775箇所あります((6)、表3)。

(4) 採択権者は、都道府県の選定資料を参考にするほか、独自に調査・研究した上で1種目につき1種類の教科書を採択します((7))。
  なお、義務教育諸学校用教科書については、通常、4年間同一の教科書を採択することとなっています(表1参照)。

3.共同採択
  市町村立の小・中学校で使用される教科書の採択の権限は市町村教育委員会にありますが、無償措置法により、採択に当たっては「市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域」を採択地区として設定し、地区内の市町村が共同して種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
  採択地区は、その地域内で同一の教科書を使用することが適当と考えられる地域であり、都道府県教育委員会が自然的、経済的、文化的条件を考慮して決定することとなっています。
採択地区は、現在全国で544地区あり、1県平均11地区となっています。また、1地区は平均してだいたい3つの市又は郡で構成されています(表3参照)。
  なお、採択地区内の市町村は、通常、共同採択を行うため採択地区協議会を設け、ここに学校の教員等からなる調査員を置くなどして共同調査・研究を行っています。

4.採択の時期
  採択の時期は、義務教育諸学校用教科書については、使用年度の前年度の8月31日までに行わなければならないこととなっています。高等学校用教科書については法令上定めはありませんが、需要数報告期限との関係で、ほぼ同じ時期に採択が行われます。

5.開かれた採択
  教科書採択に関しては、保護者や国民により開かれたものにしていくことが重要です。具体的には、教科用図書選定審議会や採択地区協議会等の委員に保護者代表等を加えていくなど、保護者等の意見がよりよく反映されるような工夫をするとともに、採択結果等の周知・公表などの方策を一層推進していくことが求められています。


図3  義務教育諸学校用教科書の採択の仕組み

図3義務教育諸学校用教科書の採択の仕組み





表3  都道府県別採択地区数及び教科書センター数  (平成15年4月)
都道府県名    採択地区数    教  科  書
センター数
都道府県名    採択地区数    教  科  書
センター数
北海道 24   63   滋賀県
6  
10  
青森県 9   15   京都府
10  
11  
岩手県 10   17   大阪府
45  
46  
宮城県 8   16   兵庫県
18  
28  
秋田県 9   12   奈良県
7  
16  
山形県 9   10   和歌山県
8  
16  
福島県 10   17   鳥取県
3  
5  
茨城県 7   8   島根県
5  
7  
栃木県 10   12   岡山県
7  
13  
群馬県 9   12   広島県
29  
13  
埼玉県 10   13   山口県
10  
22  
千葉県 12   17   徳島県
4  
8  
東京都 54   36   香川県
3  
7  
神奈川県 35   19   愛媛県
5  
24  
新潟県 14   15   高知県
8  
11  
富山県 10   10   福岡県
8  
33  
石川県 9   10   佐賀県
5  
13  
福井県 5   19   長崎県
11  
18  
山梨県 6   8   熊本県
11  
18  
長野県 15   16   大分県
6  
20  
岐阜県 6   12   宮崎県
7  
9  
静岡県 10   13   鹿児島県
12  
17  
愛知県 9   21   沖縄県
6  
7  
三重県 10   12   544 775



6.採択の改善
   より良い教科書を児童生徒に提供するため、平成14年7月、教科用図書検定調査審議会は、「教科書制度の改善について(検討のまとめ)」を取りまとめました。
   教育委員会など各採択権者は、この「検討のまとめ」を踏まえ、採択のより一層の改善を図ることが求められています。
   なお、文部科学省では、「検討のまとめ」を踏まえ、調査研究の充実に向けた条件整備として、現在8月15日までとされている採択期限を9月16日までにするとともに、教科書見本の送付部数制限の見直しを行いました(平成15年度採択から適用)。

○「教科書制度の改善について」
検討のまとめ(概要)(抄)
平成14年7月31日

第2部 教科書採択の改善について

1   調査研究の充実に向けた条件整備について
(1)    教科書採択は、児童生徒により良い教科書を提供する観点から、各採択権者の権限と責任のもと、教科書の内容についての十分かつ綿密な調査研究によって公正かつ適正に行われるべきものであり、調査研究の充実に向けた条件整備を図っていくことが必要。
(2)    教科書内容についての十分な調査研究期間を確保するため、多くの市町村教育委員会が都道府県教育委員会の指導を待って調査研究を開始している現状を改め、今後は、教科書見本が送付され次第速やかに調査研究に着手することが必要。
    また、需要数集計事務の電算化等によって事務の効率化を図ることにより、採択期限を2週間程度延長することが必要。
(3)    調査研究のための資料の充実を図る観点から、各採択権者の調査研究に支障の生じないよう、送付する教科書見本の送付部数制限の見直しが必要。
    また、都道府県教育委員会等が作成する調査研究資料の充実が必要。
    将来的には、電子媒体を活用した教科書内容の展示(電子展示会)に関する検討の推進が必要。
(4)    保護者等の意見を踏まえた調査研究の充実を図る観点から、教科用図書選定審議会等への保護者の参画の促進や高等学校における学校評議員の活用などが必要。

2   採択手続の改善について
(1)    教科書採択は、各採択権者の権限と責任のもと、適切な手続により行われるべきものであり、市町村教育委員会と採択地区との関係の明確化など採択手続を改善していくことが必要。
(2)    市町村教育委員会と採択地区との関係の明確化を図る観点から、採択事務に関するルールを定め、予め公表するなどの取組を行うとともに、市町村教育委員会間の協議が整わない場合には都道府県教育委員会が適切な指導・助言を行うことが必要。
(3)    都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の意向を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努めることが必要。
(4)    静ひつな採択環境を確保していくため、都道府県教育委員会及び各採択権者は、それぞれの地域において、広く関係者の理解を求めるとともに、仮に様々な働きかけにより円滑な採択事務に支障をきたすような事態が生じた場合などには、採択権者は関係機関と連携を図り、毅然とした対応を取ることが必要。
    また、文部科学省や都道府県教育委員会は、静ひつな採択環境の確保に向けた各採択権者の取組を支援していくことが必要。
(5)    開かれた採択の一層の推進を図るため、採択結果や理由などの採択に関する情報のより積極的な公表に努めるとともに、採択への保護者の参画をより一層進めていくことが必要。

3   その他
   保護者や地域住民の教科書に対する関心に応えるとともに、教員による教材研究や児童生徒による学習の深化・発展に資する観点から、各教育委員会は、各学校の図書館や公立図書館に教科書を整備していくことが必要。

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