もどる


○「教科書制度の改善について」
検討のまとめ(概要)(抄)
平成14年7月31日


第1部   教科書検定の改善について
1  教科書に「発展的な学習内容」等の記述を可能とすることについて
(1)    教科書は、すべての児童生徒が共通して使用する教材であり、学習指導要領に示された内容を確実に定着させるものとなっていることが必要。一方で、新学習指導要領では、児童生徒が共通に学ぶ内容を厳選し、一人一人の理解や習熟の程度に応じ、発展的な学習で力をより伸ばすことが求められている。
    このため、教科書の基本的性格等を踏まえて検討した結果、学習指導要領に示されていない「発展的な学習内容」等について、記述上の留意点等一定の条件を設けた上で、教科書に記述することを可能にすることが、多様な教科書を求めていく上で適当。
    なお、「発展的な学習内容」等については、各教科書に一律に記述することが求められるものではないこと。
(2)    教科書においては、以下のような考え方に基づき、「発展的な学習内容」等の記述を可能とすることが適当。
1    学習指導要領の目標、内容の趣旨を逸脱しないこと
2    児童生徒の心身の発達段階に適応し、負担過重とならないこと
3    主たる学習内容との適切な関連を有すること
(3) この考え方に基づき、以下の内容について記述を可能とすることが適当。
1    学習指導要領で、当該学年等の学習内容とされていない内容(「発展的な学習内容」等自体の詳細な理解や習熟を図る扱いとなっていないこと)
   学習指導要領上、隣接した後の学年等の学習内容とされている内容
   学習指導要領上、当該学年等では「扱わない」とされている内容
   学習指導要領上、どの学年等でも扱うこととされていない内容
2    学習指導要領で、「…程度にとどめる」「…深入りしない」など、扱い方を制限する規定が設けられているものについて、それらの制限を超えた内容
(4)    「発展的な学習内容」等の記述の際は、以下の点に留意することが必要。
1    本文以外での記述とし、他の記述と明確に区別
2    「発展的な学習内容」等であることを教科書上明示
3    記述の分量は各教科書全体の中の一定割合以下の適切な分量(義務・高校で分量には差異)
(5)    以上のような「発展的な学習内容」等の記述をすべての学校段階を通じて可能とし、記述上の留意点等を規定するため、検定基準の改正が必要。
    なお、学習指導要領において扱う事例数等を規定したものについては、扱いを変えるなどの配慮がなされていれば、「発展的な学習内容」等としてではなく、それらの制限を超えた記述を可能とすることが適当。
(6)    教科書に記述された「発展的な学習内容」等の内容のうち、当該学校段階の学習指導要領上扱うことができない内容については、入学者選抜における学力検査の出題対象としないよう十分留意する必要。


2  教科書記述をより公正でバランスのとれたものとすることについて
(1)    教科書は、正確かつ公正で、学習内容を理解する上で適切な配慮がなされていることが必要。現在の検定基準上も記述の公正さやバランスに関し規定が設けられ、これまでの検定でもこの点に関し留意。
    本審議会に対し関係団体から寄せられた意見においては、これまでの検定基準に基づいた公正さ等の確保の方向を支持するものに加え、特に、教科書が心身の発達過程にある児童生徒のための主たる教材であることを踏まえ、児童生徒の発達段階に応じ、その理解力や判断力に即した内容となっていることが必要であるとするものが多く見られたところ。
    このような指摘も踏まえ、現在の検定基準の基本的な在り方を踏まえつつ、必要に応じ、児童生徒が使用する上で公正さやバランスを更に求めることにより、教科書記述のより一層の改善を図ることが必要。
(2)    このため、現在の検定基準における、1話題や題材の選択・扱いの調和に関する規定、2事柄や見解の取扱いに配慮等を求めた規定について、児童生徒が学習内容を理解する上で支障が生ずるおそれがないよう、従来以上に調和やバランスのとれた記述を求めることも可能となるような観点から改正を行うことが必要。


3  教科書検定手続等の改善について
(1)    検定手続等については、審査手続の一層の簡素化・透明化を図るとともに、申請図書の完成度の一層の向上、静ひつな審査環境の確保等を図る観点から、遅くとも平成15年度の検定から適用できるよう、更に改善を図ることが必要。
(2)    具体的には、以下のような改善を図ることが必要。
1    審査手続の一層の簡素化・透明化のため、決定を留保せずに、直ちに不合格の決定を行うか否かの判定については、現在の「評点方式」から、より簡素で透明な、頁当たりの欠陥箇所数の多寡等によって判定を行う方式に改めることが必要。
2    申請図書の完成度を高めるため、申請者内部の編集チェック体制を一層強化するとともに、文部科学省において、誤り等の特に多い申請図書について申請者に対し改善方策について説明を求めたり、過去の検定における誤り等の記述例のデータベースを構築するなどの方策を講ずることが必要。
3    改めて申請図書の完成度を高めることを各申請者に促すとともに、見本提出前の訂正の審査が適切・円滑に行われるよう、申請手続等の改善を行うことが必要。
4    検定済図書の訂正要件に関して、色刷りやレイアウトの変更などの体裁の訂正についても要件を追加することが必要。
5    教科書への信頼性を更に高めるため、供給済教科書の誤記・誤植・誤った事実の記載の訂正について、各発行者のホームページ等で周知させることが必要。
6    静ひつな審査環境を確保するため、申請者に対し、検定決定までは申請図書等に関する情報を漏出しないよう改めて求めるとともに、本審議会としても、円滑な審査を行う環境が確保できない場合には、審査を一旦停止するなど適切な対応を講ずることが必要。



前のページ 次のページ

ページの先頭へ