2.就学校の指定変更[いじめ、不登校等に関連した指定校変更]

(11)不登校解消のための指定学校変更(静岡県静岡市)

1   指定校変更の許可理由等
 
(1)   内容
   小学校時代に転学事由(転居により学区が変更となったが、通学に支障がないため、今まで通学していた学校へ通学したい。)により指定学校を変更していたが、中学校は居住地の学校が指定されるため、馴染みのないA中学校に入学した。しかし、入学間もなく不登校に陥ったため、本人と保護者が強く希望する、小学校時代の友達が通うB中学校への指定学校変更を認めたものである。

(2)   理由
   小学校時代に指定学校変更の手続きをとった際、保護者は、中学校の入学にあっては教育委員会が指定する学校へ入学することを誓約し、本人も納得していた。しかし、今まで通いなれた小学校から一人だけの入学であり、当初から学校に溶け込めず、友達とうまく関わることができずに不安な日々を過ごすことになった。入学3日目から学校に来なくなり、カウンセラーを交え、学校、家庭、教育委員会で協議をした結果、前の小学校時代の友達が通学しているB中学校へ行くことができるのなら、休まずに学校へ行くという本人の思いを最優先し、不登校状態を長引かせないために指定学校の変更を許可した。

2   事情等
 
(1)   不登校の背景
   小学校低学年の時に家庭の事情で母親の実家に転居したが、指定学校変更により、卒業まで今までの学校に通った。登下校は、祖父が車で送り迎えをした。中学校は、居住地の学校に入学することを承知していたが、入学直後、家に帰るなり「もう学校へは行かない。」とその日を境に学校に行かなくなった。「誰かに足を掛けられた。」「弁当を食べる時一人ぼっちだった。」「誰かに石を投げられた。」等を理由にあげた。小学校時代の友達が一人もいなく、顔見知りのいない集団にうまく適応できなかったことによるものと思われる。

(2)   学校の対応
   家から連絡を受けすぐに家庭訪問をし、本人と話をした。事情を確認し励ましたが、翌日は欠席。担任が家庭訪問をすると、明日は登校すると約束したが、結局休みが続いた。生徒たちも心配し、交代で自宅を訪問したが、迷惑がられてしまった。
 家での対応に困った祖母の相談を受け、学校は、校内の教育相談部会において対策を検討し、市学校教育課相談担当のカウンセラーにも協力をいただき、本人と家庭の意向を最優先に尊重し、指定学校変更による転校を決めた。校長から教育委員会に転校手続きの相談が寄せられた。

(3)   教育委員会の対応
   まずは、学校に不登校の経緯を時系列でまとめてもらい、詳しい説明を受けた。事情を踏まえた上で、保護者及び本人と直接面談を行い、今後の方向について意思の確認をした。転校にはかなりのリスク(「通学時間の延長」、「時間的な空白(勉強・人間関係)」、「経済的な負担等」)を負うこと、もし失敗したら戻るところがなくなってしまうことなどを説明したが、B中学校への転校の希望は強かった。
 保護者及び本人の意向を学校に伝えた。校長も転校が最善の方策であると判断したため、B中学校校長へ事情を説明し、転校受入れの内諾を得て、手続きが開始された。

(4)   手続の流れ
 

(5)   審査基準
   静岡市立の小学校及び中学校に係る指定学校変更事務取扱要綱の第2条第6号の「不登校の状態が続いている場合において、転入学することにより不登校が解消されると見込まれる場合は、学校長の副申書を添付する。」に定めている。
 教育委員会は、保護者の申立と学校長の副申を基に、実情を調査して、可否を決定する。

3   実績と傾向
   いじめ・不登校による指定学校変更の申し出は年々増加している。
 今回の事例は、新学期早々の出来事であり、学校の早期対応(教育相談部会、スクールカウンセラーの活用、教育委員会への相談、受入校の理解・協力)が功を奏し、不登校の解消に繋がった。
 小学校卒業まで指定学校を変更している者の中には、中学校進学時に居住地の学校が指定になるため、その適応に苦しむ子が出てくる。じっくり本人の思いを汲み取り、関係機関が相互に協力して、事態を長引かせないように早期対応が肝要である。

  【いじめ・不登校を理由にした指定学校変更件数実績】
 
  15年度 16年度 17年度
いじめ 小学校 0 0 0
中学校 3 6 5
不登校 小学校 0 1 0
中学校 2 3 8

本事例の問い合わせ先
静岡市教育委員会 学事課
電話 0543-54-2377


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