学校図書館

子どもの読書サポーターズ会議 (第4回) 会議の概要

第4回会議(平成19年12月6日)

配付資料

  • 資料1 座席表
  • 資料3 織茂委員の発表資料
  • 資料7 平成19年度全国学力調査・学習状況調査の結果について(抜粋)
  • 参考資料 「子どもたちの読書と学校図書館の現状」2007
  • 参考資料 「学校図書館図書整備費」に基づく各自治体での学校図書館図書費予算化の現状(社団法人全国学校図書館協議会より)

議事概要

日時

 平成19年12月6日(木曜日)14時30分~17時

場所

 神奈川県横浜市立日吉台西中学校図書室

参加者

  秋田 喜代美 氏 (東京大学大学院教育学研究科教授)
座長 片山 善博 氏 (慶應義塾大学教授(大学院法学研究科)、前鳥取県知事)
  小林 路子 氏 (元市川市教育センター指導主事)
  小林 実 氏 (山梨県甲斐市立双葉西小学校校長)
  小川 三和子 氏 (東京都新宿区立津久戸小学校司書教諭)
  庄司 一幸 氏 (読書コミュニティネットワーク代表、福島県あさか開成高等学校教諭)
  市川 久美子 氏 (財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)読書アドバイザー)
  齋藤 明彦 氏 (鳥取県自治研修所長、前鳥取県立図書館長)
  小峰 紀雄 氏 (小峰書店社長、読書推進運動協議会理事、日本書籍出版協会理事長)
  笠木 幸彦 氏 (社団法人全国学校図書館協議会理事長)
  木村 滋洸 氏 (社団法人日本PTA全国協議会専務理事)
  織茂 篤史 氏 (神奈川県横浜市立日吉台西中学校校長)
オブザーバー 都筑 和子 氏 (学校図書館支援事業協力員)
  堀部 尚久 氏 (横浜市教育委員会指導主事)
  笠原 陽子 氏 (神奈川県教育委員会子ども教育支援課課長代理)

議題

  1. 織茂委員からの発表
  2. 意見交換

配付資料

  • 資料1 座席表
  • 資料2 第3回「子どもの読書サポーターズ会議」概要
  • 資料3 織茂委員の発表資料
  • 資料4 論点例
  • 資料5 当面の進め方について(案)
  • 資料6 学校図書館広報リーフレットに盛り込む内容について(イメージ案)
  • 資料7 平成19年度全国学力調査・学習状況調査の結果について(抜粋)
  • 資料7‐2 PISA2006の結果について(抜粋)
  • 参考資料
    • 「子どもたちの読書と学校図書館の現状」2007年12月18日
    • 「学校図書館図書整備費」に基づく各自治体での学校図書館図書費予算化の現状(社団法人全国学校図書館協議会より)

1.秋田委員自己紹介

 自分の子育ての中で行った絵本の読み聞かせが博士論文になったことから読書と関わるようになり、大学で研究している。その関係で、NPOブックスタートの立ち上げや学校図書館の本の編集など、読書推進に関わらせて頂いている。

2.資料確認・説明

《全国学力学習状況調査の結果について》

 小学校6年生と中学校3年生を対象として実施し、国語と算数・数学の2科目の学力調査のほか、児童生徒や学校へのアンケートによる質問紙調査も行い、質問項目の中には読書の状況等についての質問も盛り込まれている。これにより生活習慣や学校の取組と学力との関係の分析が可能となり、その結果については、各地域・各学校ごとにおいて、今後ますます分析を深めて頂くこととなる。

■ 全国レベルでの概括的な分析の結果
  • 読書時間については増加傾向が見られる。
  • 読書が好きな子どもほど正答率が高い傾向が見られる。
  • 読書時間と正答率については、必ずしも正の相関とはならない。中学校では、小学校に比べて読書時間が短い方が正答率が高いという関係も見られる。
  • 学校図書館を活用した授業を計画的に行っている小学校は60パーセントだが、中学校では38.6パーセントに率が低下するという課題も見られる。

《2006年PISA調査結果について》
 PISA調査とは、各国15歳の子どもを対象として、持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用出来るのかを見ようとする学習到達度調査である。
 読解力については、OECD平均でおおむね前年と同レベルであるものの、上位層と下位層の子どもが少なくなっている分、中位層の子どもが多くなっている。隣国である韓国や注目されているフィンランドに比べると、上位層の数が少なく下位層の数が多いということで、そういう面からも今後の読解力の向上が我が国にとっての課題である。

3.織茂委員・都築協力員・堀部指導主事の発表

《織茂委員》

 本校は開校30年、普通学級12学級と個別支援学級3学級の中規模の学校で、中学校では珍しいノーチャイムを実施している。学びの環境づくりということで、図書館を学校の中枢部におくという発想のもとに改修された。扉がなく廊下と直結したオープン型の図書館であり、基本的には24時間365日開いている。
図書館ボランティアの必要性を感じ、募集したところ、保護者15名が協力してくれた。部活動や選択授業、書道などの教科や総合的な学習の時間のなかで、保護者を中心として学校運営にご協力頂き、図書館ボランティアには毎週月曜日に来て頂いている。熱心な方も中にはいて、夏休みなど、時間の許す限りということでご協力頂いており、小さなお子さんを連れてくることも許容していることで長続きしているのかと思う。保護者がいると、生徒が挨拶したり、感謝の言葉が出たり、自分たちの行動を見直したりと、防犯上も評価を得ている。今年度は、国の委託事業である学校図書館支援センター推進事業を横浜市が受託しており、本校も協力校として人的・財政的支援を受けている。協力員として都築先生を配置して頂き、子どもにとって学校図書館がいつも行きたくなる場所、いたくなる場所、癒しの場所となるよう取り組んでいる。
4月23日の子ども読書の日の取組として読み聞かせを行った。また、朗読しながら楽器演奏をする読書コンサートというものもボランティアさんと都築協力員にお願いして実施した。
自分がいなくなった後に取組が続かないのでは意味がないので、計画や段取りはするが、実際には職員や協力員に動いて頂いている。

《都築協力員》

 読書コンサートについては、初めて聴いたという生徒が多かったが、非常に楽しんで頂き、次回開催の希望や、自分たちでやりたいという生徒も出てきた。これを機会に本を読む生徒も増えたようで、このような機会を設けられて良かったと思う。
保護者ボランティアの方々にご協力頂き、まずは環境整備にとりかかった。公立図書館司書としての経験から、配架の方法について教え、なんとか書架の整理ができた。その図書館で茶髪の生徒が本を読んでいるのを見ると、環境整備の重要性について再認識させられた。今後は生徒達がもっと図書館を利用し、本を読む環境づくりをしていきたいと考えている。

《堀部指導主事》

 横浜市教育委員会学校教育部小中学校教育課で、主たる業務として学校図書館を担当している。横浜市では学校図書館の活性化として大きく3つの業務があり、1つ目は行政の方に出向いたり、学校に直接指導している。2つ目は公共図書館との連携というスタンスで、各区に1つある18館の公共図書館と500校の学校図書館のニーズの重なり合うところをつなぐ取組を行っている。3つ目は、地域の力が学校図書館活性化のキーであるとの認識から、ボランティア同士や、ボランティアと学校とのニーズをつなぐ取組を行っている。
横浜市の読書活動推進計画のキーワードは、学校図書館の活性化と関係機関との連携。小中学校教育課で行っている事業として「『まち』とともに歩む読書活動推進校」というものがあり、保護者・地域の力添えを頂きながら、積極的に学校図書館活動の活性化を図っている。読書活動年間指導計画の充実、児童生徒の読書意欲の喚起、保護者・地域関係機関との連携による読書活動の推進をテーマとし、アイデアあふれる取組を進めている。
横浜市が受託している学校図書館支援センター推進事業については、以前は教職員向けの資料室として利用していた授業改善センターに学校図書館支援センターを設置し、各教科の活動案や研究、教育関係の資料など物的環境の整備とともに、常にそこに人間がいて相談に応じられるというシステムをより一層進めている。5校の協力校を窓口として、実際の場面での学校図書館活動の活性化の姿を情報提供するというのも横浜市の取組である。500校あるので各学校に何度も行くというわけにはいかないが、なるべく各学校のニーズに合わせた活動を進めているところ。
また、読書習慣を形成するための副教材の作成ということで、横浜の子ども達に読ませたい本のリストや読書の記録などを記入出来る「はまっ子読書ノート」というものを作成し、小学校の児童に配ろうという取組を進めている。他にも、読書活動の啓発事業としての読書フェスティバルや、司書教諭の発令に際しての管理職も含めた研修などを行っている。

質疑応答

  • Q:協力員が活動する時間と内容は。
  • A:学校のニーズに応じて活動しておりまちまちだが、最大で週に3日ということで、半日を単位として3日間まで入っている学校もある。活動内容としては、管理職や司書教諭、図書館担当者との話を受けて、それをボランティアに下ろしていくというようなことをしている。
  • Q:横浜市の学校司書の配置状況は。
  • A:学校司書は配置しておらず、そのような動きもない。
     →
    • Q:学校司書の働きをボランティアで補っているという印象だが、学校司書については置きたいと思っているのか。それとも、協力員を増やしてボランティアの能力向上を図っていく方向なのか。
    • A:現実問題として、専門の司書の配置というのは非常に壁が高い。そうであるからこそ、現実に近い部分でのボランティア導入率の引き上げ、スキルアップ、ネットワーク化に取り組んでおり、それが横浜の持ち味にもなると考える。スキルアップの方策としては、生涯学習課の事業で、ネットワークづくりに関するデータベースを作ったり、横のつながりを図ったりするような研修事業を、指定管理者制度のもとに進めている。また、ボランティア同士の中継ぎをし、司書を招いた研修を実施したりもしている。
  • Q:ボランティアは市内全部の小中学校に呼びかけているのか、それとも協力校だけか。
  • A:各学校の実情に応じてということで、教育委員会ではなく、各学校から呼びかけている。
     →
    • Q:500校のうち、どれくらいの規模か。
    • A:前年度調査結果によると、350校ある小学校で88パーセント、150弱ある中学校では18パーセントがボランティアの導入を実際に進めている。
    • Q:人数は学校によってまちまちということか。
    • A:多いところでは家庭数400に対して70人のボランティアがいる。そのようなところでは、定例会議をもつということもある。小学校でボランティア経験のある保護者が中学校に進んでくるということもあり、経験の蓄積という面も含めて非常に助かっている。
  • Q:事業の評価に関して、読書というものは長期的なもので難しいわけだが、今後どのようにしていくのか。
  • A:子どもの姿や職員・保護者の意識の変容レベルでのデータでの説明が今の段階では限界だと考えている。推進校でのアンケート、学校評価の数字、さらには図書館の利用率の上昇などの数値も学校によっては示すことが出来るが、横浜市全体としてどうかといわれても、数値で示すようなことは出来ない。それゆえ、推進校には成果や課題について説明出来るような視点を持って頂けるようにお願いしている。
  • Q:「まち」という理念をどう捉え、どのように具体化しているのか。
  • A:「まち」とは広い地域という意味で捉えている。学校は、学校のある地域と一緒になってやっていくというのが横浜市の方針。学校運営協議会のような「まちとともに歩む学校づくり懇話会」というものも立ち上げ、開かれた学校、地域に発信していく学校としてやってきた。
     →
    • Q:コミュニティースクールのような学校と保護者以外の地域の人間が参加するような形ではなく、基本的には保護者がボランティアとして参加するという理念なのか。
    • A:市全体としては、保護者も含めた地域の方々も対象としている。横浜市には市民図書室というものが設置されている学校もあり、外から直接入れるような構造になっていて、予算も市民局という別のところから来ていて、それを地域の方々に開放しているという方式。
  • Q:横浜市での学校図書館の授業での活用方法は。
  • A:図書館を使った年間指導計画を作っている。計画的、継続的にということで、今後ますます充実させていきたい。
  • Q:選書については誰がするのか。
  • A:選書は図書委員と職員とでやっていて、今年からはボランティアの意見も取り入れている。
<意見交換>
  • 方向として学校司書をおくという考えは必要。司書教諭と学校司書が両輪として動けるような構想が多少なりともないと、ボランティアで満足してしまっては逆効果になるのでは。
  • ボランティアを上手く動かせるような、学校図書館において中核的な動きの出来る人が必要。ボランティアの受入態勢がしっかりとしていなければ、効果が半減する。また、教育委員会の中にも学校図書館を主たる業務とする人間が必要。
  • ボランティアの募集にあたっては、学校からの呼びかけだけでなくPTA会長などの連名で出すなどして、家庭においても読書の重要性というものを感じてもらうことが必要。そこからはPTAの連絡協議会など、段々と声が大きくなるのではないか。ボランティアに入ってもらった成果のフィードバックについても工夫が必要。
  • 財政的な問題については、予算の使い切りの慣習をやめれば簡単に捻出できる。鳥取県の例でも200億円の余剰金が出た。要はどういう方向性でお金を使うかの問題。
  • 司書教諭の発令にあわせて学校司書がいなくなるのではと心配されたが、実際は司書教諭の発令とともに学校司書の配置も進んでいる。都道府県別の配置状況を見ると、自治体にお金があるないの問題ではなく、トップの意識の問題であるということがわかる。
  • 事業を成功させるには、モデルを提示し、アイデアを出し合って組み立てていくことが必要。
  • 選書の際、子どもが読みたい本や子どもに読ませたい本を選んでいくと本が偏り、学習情報センターの機能が不十分になる。
  • 教科室にそれぞれの教科の本を置くと、子どもは横断的に本を使うということに慣れない。
  • 学力低下、読解力低下と言われている今こそが学校図書館を充実するチャンス。教育課程の中にきちんと学校図書館が位置づけられるような働きかけを。
  • 司書教諭と非司書教諭ではなく、司書教諭を中心として、教職員全員が司書教諭的な働きをし、学校図書館に関わることが重要。教員になるための必修科目として図書館学を入れるべき。
  • 今できる範囲の中の工夫で何が出来るのかを考えることが重要。意識改革により出来ることは今でも多くある。そういうところからの拡がりにも期待。
  • 公共図書館での経験のある人材を学校図書館に送り出すというのも一つの方法。その代わりに学校に入るべき人材を公共図書館に配置し、違う分野の経験をすることによって、新しい方向性が見えてくるのではないか。
  • 体育のような異分野の人間に助言者として校長会などに出席して頂き、一人ずつでも意識改革をしていくことも有効。管理職に意識を高めてもらうことが必要。
  • 小中学校は市町村が経営してるのに、教員は都道府県が負担している。図書館の運営は市でやるべき事なのに、人手不足から顔が向くのは都道府県の方といういびつな状況。全てを加配のように教職員でカバーしようとするから無理が生じる。困ったことがあれば都道府県や国にお願いするというのではなく、自らの問題として認識し、解決方法を模索することが必要。
  • 大学では図書館長は副学長クラス。小中学校でも校長や教頭が学校図書館のマネジメントをやれば、学校図書館が中核的な位置づけになるのでは。
  • 司書教諭の授業軽減をするのであれば、それ相応の成果を期待される。軽減したから学校図書館は司書教諭にお任せしていいという風潮ができないような環境づくりが必要。
  • 学校での問題は全て教員が対応するというのはおかしい。もっと専門の支援を受けるべき。そしてそれらを文部科学省ではなく、、現場の責任でしっかり取り組むべき。

4.寄贈による学校図書館の整備について

  • 欲しい本と送られてくる本とのギャップについて
     → 矢祭町の「もったいない図書館」のケースでは、スペースに余裕があったからこそ捨てないでやっているが、蔵書には必ず偏りが出てくる。全部開架出来るわけではないが、全国の好意を最大限に生かすことが自分たちの使命だとしてやっているとのこと。
  • 図書標準を達成せんがために古い本が並べられているという現実もあり、本があればいいというものではない。バリエーションや質についても充実させていく必要はある。
  • 受け付けるにあたっては、寄贈された本についての処分は一任するなど、約束事をしっかりとする必要がある。必要な本をホームページなどを使って発信し、収集するのも一つの方法。
  • 寄付金に対して税制優遇するという方策も有効。

5.リーフレットの作成について → 次回以降に議論

 

6.閉会


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