平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(可児市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 特別の教育課程によるカリキュラムの実践を行う実践校に可児市立蘇南中学校を指定した。
  • 「外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進委員会」において作成したカリキュラムの実践と指導方法の工夫改善を行い、成果の検証を行った。
    • 実践校 可児市立蘇南中学校
       日本語指導が必要な外国人生徒が156人在籍(全校生徒976人)。「国際教室」を3教室設置し、在籍学年や日本語能力に応じて特別の教育課程による指導を実施した。日本語基礎の指導に加え、日本語と教科の統合学習の指導を行った。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 可児市が開催する「国際教室担当者会」において日本語能力測定方法及びその活用方法の研修を行った。
  • 実践校において対象生徒に日本語能力測定方法(DLA)を実施した。
  • DLAで得られた結果をもとに個別の指導計画の作成を行い、きめ細かな指導を行った。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 市の「国際教室担当者会」において「特別の教育課程」による日本語指導に係る協議を行った。
  • 実践校は、個別の指導計画に基づく授業実践を行い、国際教室担当者を対象に授業公開を行う。その際、公開授業に係る研究協議の場を設けた。
  • 県が開催する「外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議」において、推進委員を対象に授業公開を行った。
  • 実践校は、県の「外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議」及び市の「国際教室担当者会」の協議を踏まえて、日本語を活用する力が身に付き、学力の向上につながるカリキュラムの編成を行った。
  • 指導で活用する教材を作成し、検証した。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 実践校と「ばら教室KANI」に通訳支援員を1名ずつ派遣した。
  • 実践校においては対象生徒の母語での学習支援を行うとともに、保護者への配付物の翻訳等、学校と保護者との連絡調整を行った。
  • ばら教室KANIにおいては、日本語指導ができる支援員を派遣し、基本的な日本語や日本の学校生活の指導、保護者との連携をより充実させた。
(9)成果の普及
  • ばら教室KANIのカリキュラムと教材教具を整理し、国際教室担当者会等で広めた。
  • 蘇南中学校での実践の成果は、外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進委員会との連携で広めた。

3.成果と課題

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 蘇南中学校の実態を多くの人に知ってもらい、カリキュラム作成に知恵をもらうことができ、より有効な指導が出来るようになった。
  • 拠点校として通訳サポーターを重点的に配置することで、きめ細かい支援が可能になるとともに、通訳サポーター同士が連携して生徒対応のスキルを上げることにつながった。
  • ばら教室KANIと同じように、学年に関係なく、理解度に応じて指導を進めることができた。
  • 県で開発を進めてきたカリキュラムの継続的な実践の積み重ねにより、本年度は21名の修了者を教室復帰させることができた。今後も積極的に活用し、より効果的な日本語の獲得と学習内容の理解が図れるよう改善していく必要がある。
  • 教科の専門性からの検討をしてきたが、「日本語の語彙力を高める」という国際教室での授業の目的が達成されているかを継続して検討していく必要がある。
  • 本市が1月から導入した「国際通級教室」を有効活用し、今後ますます進むであろう外国人居住地域広域化による学習支援の強化を図る必要がある。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 実践校の教員によるDLA研修を行うとともに、積極的にDLAの実施を進めることができた。
  • DLAの活用は、全国共通の基準をもって個人の能力を測定し、一人一人の実態に応じて特別の教育課程を編成していくうえで大変有効であった。
  • 教師間で、個々の能力の実態を共通理解するためにとても有効であった。
  • 1回の調査にとても時間がかかるために、蘇南中学校のように在籍生徒が多い学校では、DLAを実施できる教員を増やさないと対応できない。そのため、DLA研修会を行ったが全員実施までは間に合わず、一部の生徒については、指導者の見立てによる実態把握とそれに基づく特別の教育課程の編成を余儀なくされた。DLAが実施できる人材を育てる必要がある。
  • DLAを実施して、実態調査をしたので、結果の生かし方と指導結果の検証をする必要がある。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 学習用語・内容の理解に困難のある生徒に対し、その実態をきちんと把握し、一人一人の困り感と特性に応じた指導が進められた。
  • 「可茂地区研修校公表会において、蘇南中学校の国際教室でも公開授業を行った。生徒の実態を踏まえた授業づくりや国際教室のカリキュラム等について考える良い機会となった。
  • 県で開発を進めてきたカリキュラムの有効性を検証する重要な場となった。
  • 本年度は新たに校内初期指導教室を設置し、週15時間程度日本語、教科の取り出し指導を行った。これにより基本的な日本語や教科の力を付けることができた。また、国際教室での授業では、教室での学習に日本語で参加することを考え、特に「読む」「書く」に重点を置いたカリキュラムへと見直しを行った。
  • 蘇南中学校の実践は充実していくことに結び付いたが、それを他の学校の実践にまで広げることができたかは課題である。
  • 実践校でカリキュラムを活用した特別の教育課程が有効に機能していることは生徒の姿から検証できた。国際教室が設置されていない一般校においても有効かどうかを検証する必要がある。
  • 蘇南中学校と他校の実態の違い(外国人生徒数、通訳の人数、外国人児童生徒教育に関わる教員の人数や経験など)もふまえ、一般化していく必要がある。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 授業は日本語で進行するため、通訳支援員の存在はとても大きい。日本語の指示や学習用語の意味が分からなくて困っている生徒に、それだけを通訳することで、落ち着いて学習に取り組めたり、自力での日本語理解や学習内容の理解を深めたりすることにつなげられた。
  • 仕事のある保護者にとっては、昼休みが学校と連絡を取り合う重要な時間になり、その時間帯にも待機してもらえたのが非常にありがたかった。
  • 学校から発信する通信についても、常に出すわけではなく、緊急的な対応が必要なことが多い。その点においても常時在籍していることは非常にありがたかった。
  • 日本人に配付するもの全てをそのまま翻訳するのではなく、必要なことを精選して伝えていくことで、分かりやすく伝えることができるようになった。
  • 勤務が終了する時刻が早いために、放課後時間の保護者への対応ができないことがあった。(昼休みと放課後は保護者からの電話が多い。)勤務時間をずらすなどの対策だけでは対応しきれず、時間外をお願いすることが多々あった。
  • 通訳支援員は解き方や学習内容を教えるのではなく、指導教員の補助的な立場であるが、学習用語を説明したり、ヒントを出したりする関係で、授業内容を把握していなければならない。ほぼ毎時間授業に入るため、その教材研究の時間が十分ではない。
(9)成果の普及
  • ばら教室KANIのカリキュラム整理が随分進み、資料提供できる形が整ってきた。
  • 外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議で開発した。カリキュラムに基づいた指導案とワークシートにより、専門教科ではない指導教員が自信をもって本時のねらいに迫る授業を展開することができた。
  • 外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議で、実践に基づく資料作りに貢献することができた。
  • 国際教室と通常学級との連携を一層強め、通常学級に復帰した生徒への支援のポイントを担任と共通理解することができた。
  • ばら教室KANIが大きな役割を果たしていることで、日本語初期指導はばら教室KANIに全面的に依存してしまう傾向がある。しかし、ばら教室を修了した児童生徒が、周辺校に復帰した後、学習意欲が低下する事例もみられる。開発したカリキュラムを使うだけでなく、その要素を汲んだ指導をイメージしていく機会を設ける必要がある。
  • 実践校として蘇南中学校の成果は上がってきている。しかし、これだけのスタッフと環境を他校がそのまま導入することは困難であると考えられる。「国際教室担当者」が孤立せず、学校体制で取り組めるよう、市教委とも連携して、各校の学習部会や研究部会に働きかけていきたい。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 「外国人児童生徒教育連絡協議会」と連携を密にし、「JSLカリキュラム」や「DLA」の実施に係る研修」等に参加し教員の質をあげていく。
  • カリキュラムを実践してより汎用性のあるものにしていく。
  • ばら教室KANIの授業の進め方を広めていく。

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