平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(久留米市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施
  • 第1回日本語指導担当教員連絡協議会(平成30年7月6日)
    • <1>授業参観、協議会
    • <2>今後の協議会・研修会の方向性について…コーディネーターより 
  • 第2回日本語指導担当教員連絡協議会(平成30年12月14日)
    • <1>2学期までの実践についての交流
    • <2>講演…講師招聘 講演内容「多文化共生と日本語支援」
  • 第3回日本語指導担当教員連絡協議会(平成31年3月1日)
    • <1>1年間の総括及び今後の課題についての交流(児童生徒の実態や課題、実践報告等)
    • <2>今後の課題について
(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化について

 平成32年度までの3ヵ年で、各学校にコーディネーターを段階的に配置し、次のような取組を校内外で提案・実践している。現在、小学校と中学校に2名ずつ配置し、その成果を市立学校に普及する仕組みをつくっている。

  • (主な取組):
    • □支援体制の構築
    • □授業介助員と連携した保護者支援
    • □市立小中高等学校における校内研修等での講師 等
       平成30年度コーディネーター配置校…小学校2名、中学校2名

年度

平成30

平成31

平成32

配置人数

2

4

6

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施について
  • 第3回日本語指導連絡協議会(平成31年3月1日)
     日本語指導教員配置校N小学校の実際の指導計画を例示して協議を行った。
    • 「特別の教育課程」を編成や個別の指導計画の作成について
    • 実態の把握から指導計画の作成、指導・学習評価・指導計画の見直しのPDCAサイクル
    • 「日本語力に応じた指導プログラム例」等を参照した指導目標の設定について等
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣について

 日本語の理解が困難な外国人児童生徒等が在籍している学校に対して、外国人児童等授業介助員を派遣し、学校が作成した指導計画に沿って、学習支援及び日本語指導支援、学校生活適応支援、保護者との教育相談及び連絡の支援を行った。

  • 平成30年度の配置校数
    • 小学校21校、中学校3校
(8)ICTを活用した教育・支援について

 個別に行う日本語指導において、電子黒板やPC等のICTを活用し、視覚的に学習ができるようにしている。また、教室で行う一斉授業においても日本語指導を必要とする児童生徒の理解を促せるようにICTを活用した授業を行っている。 

(10)成果の普及について
  • 連絡協議会において(別紙、平成30年度帰国・外国人児童生徒支援事業総括参照)
  • 成果と課題の取りまとめ
    • 各学校での取組の成果や課題を取りまとめ、各学校へ情報発信する。

3.成果と課題

(1)運営委員会・連絡協議会の実施について
  • 学校と行政のそれぞれの立場から、今後の方針や具体的な支援策について協議することができた。電子通訳機などの具体的な支援策に関するアイディアを共有することができた。
  • 中学校においては、多様な母語に応じた生徒及び保護者に対して、高校進学や就職に関する情報を提供するシステムが必要である。
  • 保護者同士のつながりを深める取組が必要である。
(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化について
  • コーディネーターの位置付けにより、各学校との連絡調整等の連携をスムーズに図ることができるようになった。また、連絡協議会において、資料作成や進行等の役割を分担し、内容の充実を図った。
  • 現在、連絡協議会を拠点校で行っているが、負担軽減を図るために会場を輪番制にするなどの対策が必要である。学期に1度の協議会では、協議をする十分な時間を確保するのが難しい。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施(必須実施項目)
  • 研修会における児童生徒の受入から実態把握、「特別の教育課程」の編成、「特別の教育課程」による指導の終了判断に至るまでの流れが全体で確認できた。
  • 日本語指導教員が変更になる学校もあるため、児童生徒の日本語の習得状況や各学校での支援体制(日本語指導担当教員の有無、介助員の配置状況、支援言語の数等)に関して、「特別の教育課程」に沿って引継ぎがスムーズに行われるようにする。日本語指導の取組に学校間格差が出ないように、情報共有の日常化を図る必要がある。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣について
  • 対象の児童生徒が在籍する学校に、母国語を話すことができる外国人児童等授業介助員を派遣することで、日本語の初期指導や学習用語の説明などの支援を個別に行い、日本語の習得、学習に必要な日本語の理解を支援することができた。
  • 家庭の課題や人間関係、学力面等の様々な問題から、スムーズに学校生活に馴染めない児童生徒もおり、生徒指導面での支援も少なくないため、児童生徒との良好な関係を築くことができる介助員の確保が不可欠である。
(8)ICTを活用した教育・支援について
  • ICTを活用することで、生活に必要な日本語を中心にイラストを使って理解を促すことができた。また、翻訳サイトを使い、日本語学習や生活支援に活用した。
  • 国際理解教育の一環として、当該児童生徒の母国へ帰国した際の写真を日本語でプレゼンする取組を行った。
  • ICTの活用は有効であるが、個人の日本語能力に応じた教材や資料等を作成することが困難である。
(10)成果の普及(必須実施項目)
  • 日本語指導担当教員の取り組みについて校内研修等を行い周知することができた。また、当該児童生徒に対してどのような支援が必要かを共通理解することができた。
  • 日本語が全く話せない児童生徒が年度途中に転入してくることがあり、その場合、多くの保護者は、日本語指導担当教員がいる学校への通学を希望してくる。そのため、特定の学校に偏ってしまい、学校の負担が大きくなっている。成果の普及を活用し、市内全ての学校において日本語指導や支援をいつでもできる体制づくりが必要である。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 多様な母語に対する授業介助員は、教育委員会としても新たな人材を発掘、確保する必要があるため登録制度を実施している。今後も多様な母語に対応できるように、関係機関等への協力要請を図ったり、電子翻訳機を活用したりする支援方法を検討する。
  • 当該児童生徒の進路保障に関する課題がある。特に、中学校の校規段階で転入する生徒については、日本語能力を十分に高めることができないまま受験期を迎える現状がある。また、保護者は、受験制度等の日本の教育文化になれないままの対応になっている。そこで、いくつかの言語における進路指導の手引等の作成を検討する必要がある。

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