平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(姫路市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

 大学教員及び姫路市教育委員会指導主事・姫路市内各学校の日本語指導担当教員・支援員等で構成する連絡協議会を3回開催した。

  • <1>第1回姫路市帰国・外国人児童生徒等受入促進事業連絡協議会 平成30年5月29日開催
    • 【参加者】大学教員1名 各校担当者等88名 支援員6名 指導主事等8名
       観光交流局観光文化部文化国際課課長1名 姫路市文化国際交流財団国際交流担当3名
    • 【内容】
      • 事業説明
      • 演習 「DLA〈読む〉の演習とJSLカリキュラムの授業作りについて」
      • 講演「サポーターとの連携について」
  • <2>連絡協議会にかかる東小研修会 平成30年8月24日開催(姫路市立東小学校)
    • 【参加者】
      大学教員1名 東小職員20名 各校担当者等10名 指導主事等8名
    • 【内容】
       11月27日の研究授業2年JSL算数科「三角形と四角形」の指導案検討
  • <3>第2回姫路市帰国・外国人児童生徒等受入促進事業連絡協議会 平成30年11月27日開催
    • 【参加者】
       大学教員1名 各校担当者等47名 支援員6名 指導主事等6名
    • 【内容】
      • 授業公開 2年 JSL算数科 「三角形と四角形」
      • 事後研修会及び指導助言
  • <4>第3回姫路市帰国・外国人児童生徒等受入促進事業連絡協議会 平成31年2月8日開催
    • 【参加者】
       大学教員1名 各校担当者等42名 支援員3名 指導主事等7名
    • 【内容】
      • 授業公開 5年 JSL社会科 「森林とわたしたちのくらし」
      • 事後研修会及び指導助言
(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • <1>姫路市立東小学校で在籍学級による日本語指導の授業公開を2回、指導案検討の会を1回実施した。また、日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍する他6校とともに、7校による連絡会を実施し、東小学校の指導体制モデル(「特別の教育課程」による日本語指導体制のモデル・・・日本語指導におけるRPDCAサイクル)を共有した。
  • <2>中央研修で学んできた教員によるDLA〈読む〉の演習やJSLカリキュラムの授業作りについての研修を実施した。
  • <3>姫路市教育委員会事務局人権教育課発行の月刊通信『道』において、日本語指導の必要な児童生徒の実態や、推進校を中心とした日本語指導への取組を、全幼・小・中・義・特・高等学校に配布した。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • <1>「特別の教育課程」編成にかかる説明会の実施
  • <2>4月~6月「特別の教育課程編成・実施計画」の作成・提出(学校より)
  • <3>4月~3月「特別の教育課程」による日本語指導の実施(各校)
  • <4>5月、7月、12~2月 市教委による訪問指導時に対象児童生徒の状況や取り出し指導の実態等を把握
  • <5>2月今年度の「特別の教育課程編成・実施報告」及び来年度の「特別の教育課程編成・実施計画」の提出(学校より)
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • <1>バイリンガル支援員(スタディサポーター)29名(のべ52名)・通訳22名)の派遣
     市立幼・小・中・義・高・特別支援学校園在籍する日本語指導が必要な保護者及び園児児童生徒等に対し、母語と日本語が話せるバイリンガル支援員等を配置・派遣又は派遣し、日本語指導の補助や学校との連絡調整を行った。コミュニケーションの円滑化を図ることにより、児童生徒及び保護者の心の安定を図った。
  • <2>バイリンガル支援員(就学促進員)
     平成18年度以降実施している就学状況調査の手法を踏襲し、学校や関係機関等と連携し、外国人の子供の就学状況調査を行い、必要に応じて不就学の生徒及び保護者に対して就学をすすめるための活動を行う。本年度は該当者がいなかった。
(7)就学前の幼児や保護者への支援
  • <1>幼稚園と連携し、就学前の幼児の様子や保護者にとって必要な支援等を情報共有した。
(10)成果の普及
  • <1>人権教育課通信『道』にて連絡協議会等の取組を掲載した。
  • <2>3月:市のホームページに実践の概要と成果の発信を行った。

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

(成果)

  • <1>日本語指導の具体的な支援方法等、参加者にとって、自分の学校での実践につながる学びを深めることができた。
  • <2>連絡協議会にかかる研修として、夏休み中に第2回連絡協議会の公開授業の学習指導案の検討を行った。「指導案検討の段階で研修できたことは有意義であった。」という感想が多くあった。
  • <3>授業後の参加者の感想に「日本語指導の必要な児童が分かりやすい授業は、すべての児童が分かりやすい授業である。」や「重要となる語句が強調されており、児童の頭に残ると思う。持ち帰って授業に生かしていきたいと思う。」などがあり、これからの参観者の授業実践に役立つ公開授業となった。
  • <4>第3回連絡協議会では、在籍学級で小学5年生のJSL社会科「森林とわたしたちのくらし」の授業公開

 を行う予定である。

(課題)
 学校内での受入及び研修体制をより充実させ、日本語指導担当や担任のみならず、管理職を中心とした学校全体で日本語指導が必要な児童生徒に関わり、情報を共有する体制づくりが必要である。また協議会等で各校担当者等の定期的な意見交換が不可欠であり、日本語指導が必要な児童生徒を長年受け入れている学校の取組を聞いたり、各校における悩みや課題を共有したりする機会を継続的に設定していきたい。

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化

(成果)

  • <1>今年度は在籍学級での日本語指導を2回実施した。参加者が各学校で研修内容を周知したことで日本語指導が必要な児童生徒の担任が普段の授業で日本語指導のポイントを取り入れることができた。
     日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍する7校(拠点校の東小学校を含む)において、東小学校の進める「特別の教育課程」による日本語指導の指導体制モデル(日本語指導におけるRPDCAサイクル)を共有することができた。
  • <2>どの研修でも映像や指導案、普段の授業への生かし方など、具体的なものを使って研修を進めたことで、参加者にとってはイメージしやすい研修となった。また東小学校での支援体制や、支援教員としての動きなどを紹介したことは、初めての担当者となる教員にとっては大変参考になるものだった。
  • <3>人権教育課通信『道』に掲載した記事によって、東小学校の取組は日本語指導の担当者からだけではなく、日本語指導へ興味のある先生方へも伝えることができた。

(課題)

  • 東小学校での日本語指導の体制作りや、外国人児童生徒等への支援は研修を重ね、東小スタイルとして定着してきた。今後の課題は、各学校において実践できる内容であること、実践することが大きな支援につながることを周知していかなければならない。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

(成果)

  • 少人数での説明会を行うことで、『個別の指導計画を作成しているため、担当者や学級担任がかわっても、支援方法等について引き継ぎをしやすい。中学校への進学、または他校へ転入する場合に、学習歴や支援状況を把握することができる』など、「特別の教育課程」を編成する意義を共通理解することができた。

(課題)

  • 別室指導を行っている日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍する学校では、個別の指導計画を対象の児童生徒数分作成しなければならないため、教師の負担が大きい。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

(成果)

  • 新しい環境に対して当初は困り感をもっている児童生徒等に対し、慣れ親しんだ支援員が継続して支援することで安心感を持たせることができた。
  • 保護者へ連絡しなければならない内容を、支援員が的確に保護者に伝え、保護者との連携を円滑にすすめることができた。
  • 理科や社会においても専門的な学習言語について母語で説明をするなど、児童の理解を促すことができた。
  • 児童の家庭環境について保護者から母語で聞くことができ、指導につなげることができた。

(課題)

  • サポーターがどのような事をしているのか漠然と理解はしているものの、具体的には知らない教職員もいるので、組織として支援していくために、担当者が活動内容を積極的に発信していくことが大切である。
  • 日常会話ができるようになり、学習も理解していると思っていた児童でも学習言語が習得できていない実態があり、さらなる支援が必要である。
  • 高学年の児童については、学習言語も複雑になってくるために、きめ細やかな支援が必要である。しかしながら、支援を必要とする児童が多い学校に対しては、十分に支援できていないのが現状である。
  • サポートが必要な外国からの編入児童が複数いた場合、それぞれの児童にサポーターが必要である。また勤務する日が少ないことも課題である。
  • 今後、外国籍児童が増えていくことが考えられるが、その際の支援員の数や質をどのように確保していくのかが課題である。
(7)小学校入学前の幼児や保護者を対象としたプレスクール

(成果)

  • 昨年度は、幼稚園からの要請があり保護者に対し、通訳派遣を行ったが、今年度は幼稚園からの要請はなかった。

(課題)

  • 保護者の支援だけでなく、幼児を対象に年齢相応の認知発達の支援を行いたい。
(10)成果の普及

(成果)

  • 人権教育課通信『道』への掲載によって、拠点校での取組を多くの教員へ広めることができた。
  • ホームページに実践の概要と成果を公表することで、地域のみでなく全国へ成果を発信できた。

(課題)

  • よりよい発信の方法を考える必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

 日本語指導コーディネーターを派遣し、日本語指導のノウハウがない学校での組織体制づくりや、急な外国人児童生徒等の編入時の支援などを行う。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035