平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(堺市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

人権教育課
  • (2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化(必須実施項目)
  • (3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • (4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施(※必須実施項目)
  • (6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • (8)ICTを活用した教育・支援【重点実施項目】
  • (10)成果の普及(必須実施項目)
教育センター研修グループ

 教職員への日本語指導研修会の実施

2.具体の取組内容

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化(必須実施項目)

 拠点校の配置にむけての推進体制を構築した。その中の一環として、市教委による先進市の拠点校整備の視察及び日本語指導等対応加配教員による大阪市の拠点校見学の機会を設けた。また、次年度の拠点校(堺区・南区の2区)設置に向けての準備を行った。拠点校配置教員の巡回指導及び巡回支援を通して、日本語指導教員の養成を進めるとともに、拠点校配置を進めていくため、拠点校配置教員の確保を行った。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

 平成30年4月に日本語指導等対応加配教員及び自立支援日本語指導員を対象に、日本語能力測定に係る研修会を行い、各学校で活用するよう周知を図った。
 日本語指導教員配置校において日本語能力測定法等を活用した対象児童生徒の実態把握を行い、年3回の日本語指導等対応加配教員連絡協議会において、実態に応じた指導方法や教材についての情報交換、研修を行った。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施(※必須実施項目)
  • 11校に配置している日本語指導教員を対象とした「日本語指導等対応加配教員連絡協議会」を3回開催し、特別の教育課程の実施及び日本語能力測定方法の活用についての研修や、日本語指導の教材についての情報交換を行った。また、教育委員会は、個別の指導計画の見直し、指導方法の改善を行うよう指示した。
  • 全市管理職を対象に、本市の日本語指導の現状と課題及び日本語指導が必要な児童生徒を対象とした特別の教育課程編成についての説明を実施することで、本市の課題を共有し、各学校が特別の教育課程に対する認識を深めることができた。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

 日本語指導が必要な幼児児童生徒が在籍する学校園に対し、自立支援日本語指導員を派遣する。

  • <1>指導員への事業内容の説明
  • <2>各学校園への日本語指導を必要とする幼児児童生徒の照会
  • <3>編入時の面接と指導員の派遣
  • <4>指導員派遣校園の決定
    • 従事時間は1回2時間
  • <5>報告確認
    • 幼児児童生徒の言語等習得状況について(報告者:自立支援日本語指導員)
(8)ICTを活用した教育・支援【重点実施項目】
  • 今年度、小学校に続き、全中学校においてもICT整備が完了した。この動きに伴い、日本語指導教員を中心に、ICTを活用した教育活動の研究・研修を行い、日本語指導でのICTの活用について認識を深めた。
(10)成果の普及(必須実施項目)
  • 堺市在日外国人教育研究会において、日本語指導等対応加配教員配置校が、「特別の教育課程」の実施状況や国際理解教育活動の報告を行った。
  • 日本語指導等対応加配教員によるサポートを受けて、学級担任等、日本語指導等担当加配教員以外の教員が日本語指導の観点を大切にした一斉授業を全市職員対象に公開することで、全市に散在する日本語指導を必要とする幼児児童生徒への指導方法や支援方法への理解を広めることができた。
  • 堺市ホームページへの日本語教材の掲載。

3.成果と課題

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化(必須実施項目)

(成果)
 拠点校の配置に向け体制づくりを進める中、全市において、各学校園への日本語指導が必要な子どもたちの状況の共通理解と特別の教育課程への認識及び国際理解教育の重要性について理解を深めることができた。

(課題)
 拠点校配置を進めるうえで、日本語指導ができる教員の養成が大きな課題であることが浮彫りとなった。次年度、2校の拠点校配置教員を軸として、日本語指導ができる教員を養成していく。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

(成果)

  • 児童生徒等一人ひとりの既習内容や理解状況・定着の様子等を把握することで、個に応じた指導を計画的に実施することができた。
  • 日本語能力測定方法は、読書を通してのアセスメントであるため、指導教材としても有効であった。
  • 個別の指導計画を作成する際に、活用することができた。
  • 日本語能力測定方法等の結果を教育委員会と日本語指導等対応加配教員配置校が共有することで、自立支援日本語指導員を適切に配置することができた。
  • 自立支援日本語指導員も日本語能力測定を活用することで、よりよい支援につながった。

(課題)
 日本語能力測定方法は、年度当初に実施し計画に反映させていくことが好ましいが、実施のための教員研修が必要であり、実施に時間がかかるなど、測定完了時期が適切ではないケースもみられた。今後は、日本語能力測定方法を定着させ、測定を速やかに行う体制が必要となってくる。
 また、日本語指導等対応加配教員や自立支援日本語指導員だけでなく、各学校の校務分掌で位置づけている日本語指導担当者にも、日本語能力測定方法の研修を行うなどして、各学校の自立した日本語指導運営を図っていく必要がある。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施(※必須実施項目)

(成果)
 「特別の教育課程」を編成するとともに、個別の指導計画を作成することで、対象児童生徒一人ひとりの日本語指導の確実な実施及び適切な学習評価を行うことができた。児童生徒一人ひとりの家庭環境や人間関係、日本語の習得状況などをふまえて今後の指導方針を考えることもできるため、作成した指導計画を管理職や学級担任等の関係者で共有することで、児童生徒に関わるための重要なツールとして活用した。
 また、全市管理職を対象に、本市の日本語指導の現状と課題及び日本語指導が必要な児童生徒を対象とした特別の教育課程編成についての説明を実施することで、本市の課題を共有し、各学校が特別の教育課程に対する認識を深めることができた。

(課題)
 日本語指導等対応加配教員配置校以外での、特別の教育課程の編成を確実に行うことで、市教委において、日本語指導が必要な児童生徒の実態を把握したうえで、個に応じた発展的かつきめ細かな指導を進めていくことが課題である。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

(成果)
 海外から帰国して間もない幼児児童生徒及び外国から来日して間もない幼児児童生徒が、学校園生活において十分に能力を発揮できるように、日本語指導をはじめとする自立のための指導を行うことができた。また、母語がわかる自立支援日本語指導員の派遣を基本とすることで、幼児児童生徒の心のサポートを行うことができた。

(課題)
 多言語化にともない自立支援日本語指導員の派遣の需要や日本語指導を必要とする児童生徒数は増加しており、特定の地域へ集中する傾向がある。その反面、学校から要請のある言語で対応できる日本語指導員は不足しており、一人の指導員に配置回数が偏ってしまい、学校の希望に対応できない状況がある。今後は、母語で対応できる指導員の派遣も必要だが、日本語指導という観点から児童生徒の母語が話せることに拘らず指導員を派遣することを積極的に検討していく。
 また、各校に校務分掌上に位置づけのある日本語指導担当者が、日本語指導の中心的役割を担う教員として意識を高めていくことで、自立支援日本語指導員と学校園のより綿密な連携をすすめる必要がある。連携を密にし、幼児児童生徒の個に応じた日本語指導及び心に寄り添う指導をさらに進めていく。

(8)ICTを活用した教育・支援【重点実施項目】

(成果)
 日本語指導対応加配教員を中心にICTを活用した研究を進めていくことで、通常学級における授業のUD化、日本語支援方法の広がりにつなげ、より充実した支援方法を考えることができた。また、ICT(ポケトーク)の実験的導入を行うことで、学校園での利用状況や必要性を調査した。

(課題)
 日本語指導等における視覚支援は非常に大きな役割を果たす。この認識を、授業のUD化として、日本語指導等対応加配教員配置校以外でも認識を広めていく必要がある。また、保護者対応や進路指導の場面でも、ICTの役割が大きいことから、今後、携帯型翻訳機の導入に向けて、積極的に対応を検討していく必要がある。

(10)成果の普及(必須実施項目)

(成果)
 堺市在日外国人教育研究会において報告の場を持ったことで、全市で、日本語指導を必要とする児童生徒等について認識を深める機会を設けることができた。
 また、日本語指導の取組の成果を発信・普及させることで、指導のスキルを共有することができ、堺市日本語指導教材「ともだちといっしょに」の活用の推進にもつながった。共通教材の活用や指導方法の共有により、散在する日本語指導を必要とする児童生徒等への支援に効果のある取組となった。

(課題)
 成果を発信・普及させることは、今抱えている課題を改善していく上でも重要である。また、各々の日本語指導等対応加配教員が、個に応じた日本語指導教材を工夫し作成しているが、教材を共有する体制が十分でないため、今後は、オリジナル教材などを容易に共有できるよう、ネットワークを活用した取り組みができるよう整備をすすめていく必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 複数年かけて、拠点校となる学校を設置し、拠点校の日本語指導員が児童生徒への巡回指導を行いながら、学校に対する巡回支援・巡回指導も行うことで、各学校の日本語指導力の育成及び日本語指導ができる教員の育成を図っていく。次年度、拠点校は堺区・南区に1校ずつ設置し、日本語指導ができる教員の育成を中心に活動を行い、巡回支援・巡回指導体制の構築を進める。
  • ICTの積極的な導入に向けて、試験的運用を行い必要性などの分析を進めていく。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035