平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(京都市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 本市では,昨年度の引き続き「日本語指導トータルサポートシステム」体制により,特別の教育課程による日本語指導をはじめとする,外国にルーツをもつ児童生徒への指導や支援を実施している。担当課は事務局学校指導課人権教育担当であり,日本語指導に精通した指導主事を配置している。

 日本語指導トータルサポートシステム

 ※ 図中の丸数字は,以下「2.具体の取組内容」の項目に対応

2.具体の取組内容

(2)拠点校の配置等による指導体制のモデル化「日本語指導トータルサポートシステム」

 京都市基本計画「はばたけ未来へ!京プラン実施計画第2ステージ」に「『多文化が息づくまち』の実現に向けた学校教育の充実」として位置づけられている。日本語指導が必要な児童生徒及びその保護者に対する適切な指導・支援が迅速に実施できることをめざした。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 来日直後の児童生徒だけではなく,日本生れや帰国子女等にたいしても,必要に応じてアセスメントを実施し,児童生徒の現状に応じた指導時数を確保している。日本語指導担当教員が,児童生徒が在籍する学校を巡回して指導する方式により,市内全域に対応している。

(6)日本語指導ができる,又は児童生徒の母語がわかる支援員の派遣
  • 日本語指導ボランティアの派遣
    • 【ボランティアの募集】(公財)京都市国際交流協会や大学と連携して募集
    • 【派遣対象】京都市立小・中・高等学校及び総合支援学校の指導生徒で,特別の教育課程による日本語指導を受けていない児童生徒が対象。※日本生れの児童生徒も対象となる。
    • 【派遣回数】児童生徒一人あたり,年間52回,放課後の時間に1時間程度指導
  • 母語支援員の派遣
     トータルサポート校・サブサポート校を拠点校として母語支援員を配置し,必要に応じて少数在籍校に派遣
    • 【勤務形態】京都市教育委員会非常勤嘱託職員
    • 【言語・人数】 英語・2名,中国語・4名,フィリピノ語・2名
    • 【派遣対象校種】 京都市立幼稚園,小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,総合支援学校
(7)小学校入学前の幼児や保護者を対象としたプレスクール
  • 日本語を母語としない保護者のための「小学校生活スタートガイド」の作成
     日本の小学校生活に係る基本的な事項や,ことばの力を育てる家庭での関わりなどを,「簡単な日本語,中国語,英語,フィリピノ語」で示した小冊子を作成した。平成30年度の半日入学で対象の保護者に配布できるよう,全市の小学校に配布すると共に,市内の幼稚園・保育園・子ども園にも配布した。
(9)高等学校における教育・支援
  • 母語支援員・通訳ボランティアの派遣
     京都市立高等学校(総合支援学校高等部含む)に在籍する外国にルーツをもつ生徒及びその保護者に対して,学校からの要請に応じて母語支援員や通訳ボランティア(本市独自の事業)を派遣した。高等学校の各種説明会にも対応している。
  • 日本語指導担当教員の配置・派遣
    • 京都市立高校の定時制(夜間)に,日本語指導担当教員(非常勤)を配置し,時間外の日本語指導や授業での入り込み指導などを実施した。
    • 今年度,総合支援学校高等部から,日本語指導実施について相談があり,サポート校から日本語指導担当教員を派遣し,放課後の時間帯に日本語指導を実施した。
(11)成果の普及
  • 全市校園長研修会の実施
     平成31年1月の全市校園長研修会で,外国にルーツをもつ子どもたちの教育について外部講師を招き講義を実施した。
  • 多文化共生社会実現に向けた研修会の実施
     子どものことばの発達に係る講義と,学校からの実践方向を実施した。

3.成果と課題

(2)拠点校の配置等による指導体制のモデル化
  • 成果
     京都市の東西南北に拠点となる学校を配置したことにより,市内のどの学校に編入等があっても迅速に日本語指導の開始・母語で支援可能な人材の派遣ができている。
  • 課題
     新規編入や,既に在籍している児童生徒に対する日本語指導の開始が年々増加,散在化しているため,基礎定数や加配による教員だけでは巡回指導が不可能であり,市独自予算での非常勤講師を任用し,全面実施が可能となっているのが現状である。児童生徒の負担が少ない「拠点校からの巡回指導方式」を維持していくために,財源及び人材確保が課題である。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 成果
     日本語が全くできない状況で編入した場合,全ての児童生徒に半年間は週4時間,その後の半年間は週3時間,教育課程内で日本語指導を実施したことにより,対象児童生徒の学校生活への適応や学力保障につながっただけではなく,学校に1人の在籍といった,「少数在籍校」においても,学校全体で受け入れる体制がつくられるようになった。
  • 課題
     本市では,編入した学校の場所や,保護者の送迎の可否などによる,指導や支援の差がでないよう,教員が少数在籍校を巡回している。一人の教員が1日に巡回できる学校数は最大でも3校である。週4時間の指導時数を確保するため,巡回の仕方については工夫しているところであるが,限界があり,現在の基礎定数化の基本である対象児童生徒18人に教員が1名という配置では,散在化に対応することが困難である。
(6)日本語指導ができる,又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 成果
    • 日本語指導ボランティアの派遣
      • 今年度,高等学校についても派遣対象としたことから,学力保障をめざした,更に長期的な指導や支援が可能となった。
      • 日本語指導担当教員指導力向上セミナーについて,日本語指導ボランティアの受講も可としたところ,毎回積極的に参加するボランティアが複数名見られた。グループ交流で,違った立場からの意見を聞くことが可能となり,互いの理解が深まった。
    • 母語支援員等の派遣
       ※ 本市では独自事業として「通訳ボランティア派遣事業」も実施し,多様な言語に対応している来日直後に母語がわかる支援員を派遣することにより,日本語指導が必要な児童生徒が安心して日本での学校生活をスタートすることができている。また,受入れ経験がない学級担任や学年担当教員の不安も解消されるとともに,教員や周りの児童生徒が,対象児童生徒の母国の文化や生活習慣等にふれる機会ともなっており,互いに理解し合える受入れ環境づくりにつながっている。
  • 課題
    • 日本語指導ボランティアの派遣
      • 特別の教育課程による日本語指導の実施により,放課後の時間帯まで学習が必要な児童生徒数が減少しているが,ボランティアへの登録数は増加の傾向にあり,ボランティアの活用方法を再考する必要がある。
    • 母語支援員等の派遣
      • 人材の確保(特にフィリピノ語,ベトナム語,ネパール語など)
(7)小学校入学前の幼児や保護者を対象としたプレスクール
  • 成果
    • 小冊子の作成により,日本語を母語としない保護者が,日本の小学校生活について理解する一助となっただけではなく,新規に編入した児童の保護者に対する面談時にも活用が可能となった。
    • 在籍予定の小学校の教員が,日本語を母語としない保護者の困りを知るきっかけとなり,入学後の適切な支援に結びついている。
  • 課題
    • 今年度は,小冊子を作成・配布することでとどまっているが,本冊子を活用したプレスクールを実施するところまで取組を進めることが課題である。
(9)高等学校における教育・支援
  • 成果
    • 中学校から継続して日本語指導を受けられることにより,生徒が安心して在籍校で学ぶことができているとともに,卒業後の進路実現の一助ともなっている。
  • 課題
    • 京都市立高等学校に在籍する生徒やその保護者に対してのみの指導や支援であり,府立高等学校や私立高等学校に進学した生徒やその保護者については対象外となっていること
(10)成果の普及
  • 成果
    • 全市校園長研修会をはじめ,市内の研修会等で日本語指導が必要な児童生徒の教育について取り上げたことにより,全市のどの学校においても急な編入対応が可能であることが認識された。
  • 課題
    • 日本語指導が必要な児童生徒を受け入れた際に各学校で活用できる資料等について,わかりやすく整理し,活用しやすいよう,内部のネットワーク上に掲載していくことが必要。

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総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035