平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(静岡市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

指導員連絡協議会
  • 構成員:
    • 学校教育課長、指導主事1人、学校経営支援員3人、
    • 通級指導員11人、訪問指導員6人
日本語指導担当者会
  • 構成員:学校教育課長、指導主事1人、学校経営支援員3人
  • 日本語指導担当者124人(各校1名)

具体的な活動内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

<1>指導員連絡協議会(年1回開催)
 本年度の事業について、現状と課題の整理、本年度の重点や支援体制の改善についての協議を行った。

<2>日本語指導担当者会:(年1回開催)
 指導主事、加配教員の講義を中心に、当該児童生徒に関する背景についての理解や諸問題への対応、受入れ体制の整備や具体的な支援の方法等についての理解を図った。

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化

 教員2名(基礎定数)を日本語指導教室に通級が困難な児童生徒の多い地区に配置し、訪問形式での日本語指導を実施した。28名の児童生徒に対して特別の教育課程を編成。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

<1>DLAの実施と活用
 指導主事や加配教員によるDLAを実施した。測定の記録と評価シートの作成を作成し、担任や関係職員と今後の指導について協議した。

<2>DLAの周知
 指導主事による説明や加配教員による実践紹介を行った。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 「日本語指導担当者会」「教育課程説明会」などにおいて「特別の教育課程」の周知を図った。また、外国人児童生徒支援加配教員により「特別の教育課程」を実践した。

(5)学力保障・進路指導

 日本語指導教室での学習指導では、連絡カードや電話連絡等で学校と学習面や生活面に関する情報共有を行い、指導に生かした。国際交流協会が共催の高校進学ガイダンスでは、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語の通訳を交えて、日本の受験システムや受験までの日程、心構え、受験料や入学料等の具体的な説明をした。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語がわかる支援員の派遣

 要請のあった学校に訪問指導員を派遣し、日本語初期、初級の当該児童生徒に対し、10~15時間程度の取り出し指導を行った。児童58名、生徒17名が指導を受けた。
 また、要請のあった学校に学生ボランティアを派遣し、学習や学校生活の支援を行った。静岡大学のNPO法人「ONES」、静岡県立大学の「にょっき☆」と連携をしている。

(10)成果の普及

 日本語指導担当者会、指導員連絡協議会における成果と課題の報告、日本語指導教室の月末ミーティングにおける報告、通級実施報告書、連絡カード(別紙資料)における個別支援の成果を報告、担任参観会での日本語指導員と担任の連絡協議を行った。

(11)その他

 要請のあった学校に適応相談員を派遣し、日本語が話せない児童生徒とその保護者に対し、日本の生活に適応するために児童生徒やその保護者の母語で相談を行う。
 ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、中国語、ロシア語において実施した。(小学校3件、中学校17件)

成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

<成果>
 訪問指導員、教室指導員がそれぞれに集まり、児童生徒に関する情報交換を行ったり、指導法について協議したりすることで、意識の向上や今後の指導の重点確認を行うことができた。
 また、今年度初めて日本語指導担当者会を各校悉皆とすることで、日本語指導が必要な子どもについて一定の周知を図ることができた。

<課題>
 学校は、日本語指導が必要な子に対して組織的に対応する必要がある。また、本市は散在型の地域であり、外国にルーツを持つ児童生徒を受け持ったことのある教員が少ないため、実践が積み重ねられていないことも課題である。

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化

<成果>
 今まで、特別の教育課程について学校が十分理解できていなかったところもあったが、実際に実施してみて、その有効性や必要性について具体で理解する先生が増えた。訪問指導員による指導では予算上年間最大で15時間程度しか指導には入れないが、教員による指導は年間を通じて実施することができたので、児童生徒の日本語能力が向上した。

<課題>
 日本語指導を必要としている児童生徒に十分対応できていない現状にある。指導員と外国人児童生徒等加配教員の指導体制について明確な棲み分けができなかった。また、特別支援が必要な子で尚且つ日本語指導が必要な子の場合、見極めが重要である。指導の充実に向けては、外国人児童生徒等加配教員の研修をいかに深めていくかが課題である。

(1)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

<成果>
 DLAを行い、その結果をもとに担任や担当者と今後の指導について協議では、児童の日本語の力が数値で表されたこと、どの力が弱いのか明確になったことで、今後の指導の方向性について考えることができ、中学進学に向け必要な指導が見えてきた。また、保護者に対する説明資料としても使用することができ、現状を伝えることに役立てることができた。

<課題>
 DLAについて知らない教員も多く、実際に活用している学校は少ない。また、担任が実施する場合は時間の確保が難しい。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

<成果>
 外国人児童生徒支援加配教員がDLAを実施し、担任と加配教員の間で「特別の教育課程」の進捗状況について頻繁に連絡を取り合い、目標実現に向けて充実した指導ができた。

<課題>
 一番の課題は加配教員が少ないということである。現状では、実際に多くの学校で取り組むことは難しい。それゆえ教員間に理解が進んでいないことも課題である。本市は少数散在型であるため、日本語指導に関わってない学校、教員も多い。さらなる周知を図らなければならない。

(5)学力保障・進路指導

<成果>
 担任と日本語指導員が連絡を取り合うことで、同じ方向を向いて指導を行い、当該児童生徒の日本語力や学力の向上を図ることができた。高校進学ガイダンスでは、保護者の母語の通訳をできる限り同席させたことで日本の受験体制に対する理解を深めることができた。

<課題>
 日本語指導教室では、日本語に課題が見られるだけでなく、落ち着いて取り組めず周囲とトラブルになる子も増えてきている。手厚い支援体制を整えていく必要がある。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語がわかる支援員の派遣

<成果>
 本市では日本語指導教室を開設しているが、家庭環境等で通えない子も多いため、この取組によって日本語の力が伸びた児童生徒も多い。また、学校に出向いての指導となるため、担任や教頭と密に連絡をとることができ、指導内容の改善や連携した個別指導に結び付けることもできた。

<課題>
 訪問指導の要望は多いが、予算の関係から、一人に対し、10~15時間しか行うことができていない。学校からの継続依頼もあるため、訪問指導の充実は大きな課題である。

(10)成果の普及 

<成果>
 指導者間(指導員と教員)、教育委員会と指導員とがの頻繁に連絡を取り合い、連携を図ることで、子どもたちの実態を把握し、支援を充実させたりできた。

<課題>
 少数散在型の地域であるため、先生方の日本語指導に対する知識等がまだまだ十分周知されているとは言えない。そのため、教員と指導員が子どもの表れを報告し合い連携を図る中で、指導員が主導権を握ることが多く、受け身の教員が多い。

(11)その他

<成果>
 日本の教育や学校制度について、外国人の保護者が理解していないことが多くあり、言語の問題だけでなく違いを説明することが難しいが、ベテランの相談員により保護者側と学校側の双方の考えを上手に伝えることができた。

<課題>
 今年度は順調に本事業を進めることができた。相談の業務に関しては次年度以降も継続的に行いたい。

4.その他(今後の取組予定等)

 来年度は加配教員の研修体制の整備と児童生徒への支援体制の見直しを図っていく。

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総合教育政策局国際教育課

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