平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(出雲市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 小学校1校、中学校1校を市内日本語指導の拠点校と位置付け、日本語指導員、巡回日本語指導員、通訳・翻訳支援員、日本語指導補助員を集中的に配置。
    • 拠点小学校…日本語指導員5名、巡回日本語指導員2名、通訳・翻訳支援員1名、日本語指導補助員2名を配置。
    • 拠点中学校…日本語指導員3名、巡回日本語指導員1名、通訳・翻訳支援員1名を配置。
  • 研修会等での実践事例、指導の成果の紹介
    • [小・中学校 日本語指導が必要な児童生徒教育研修](県教育委員会主催、市内全校悉皆)
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計63名
      • 内容 各校の現状、指導方針、指導体制、生活・学習支援の実際、保護者との連携、担当者間の情報共有や連携の方法 等
    • [出雲市日本語指導研修]
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計25名
      • 発表校 塩冶小学校(拠点小学校)、斐川西中学校
      • 内容 各校の現状、指導体制、指導教材や方法等
  • 拠点学校からの日本語指導資料や教材などの提供。
  • 拠点学校での文書などの集中的な翻訳。
  • 通訳支援員の定期的な巡回や必要に応じた派遣。
  • 拠点学校で複数年日本語指導を経験した指導員を他の在籍校に配置もしくは派遣。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

(在籍校)

  • DLA及び担当教員、担任等の観察による日本語能力の測定を実施。
  • 測定結果を反映させた個別の指導計画の作成。
  • 作成した個別の指導計画にもとづいた日本語指導及び教科指導の実施。

(市教委)

  • 対象児童生徒の必要指導時数の算出、指導員の配置・派遣計画の立案に活用。
  • 日本語能力測定法及び測定結果を活かした指導計画の作成に関する教職員研修会の実施。
    • [出雲市日本語指導教職員研修]
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員、市通訳・翻訳支援員 計36名
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 全在籍校による日本語指導における「特別の教育課程」の編成、「日本語の能力に応じた指導のための教育課程に関する届出書」(編成届)の提出。
  • 「特別の教育課程」に関する教職員研修【「特別の教育課程」等に関する説明、実践発表】
    • [小・中学校 日本語指導が必要な児童生徒教育研修](県教育委員会主催、市内全校悉皆)
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計63名
    • [出雲市日本語指導研修]
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計25名
  • 学期ごともしくは前期/後期で、各在籍校において指導計画の見直しを実施。
  • 個別の指導計画について評価及び次年度に向けた指導計画の立案を実施。
  • 「日本語の能力に応じた指導のための教育課程に関する届出書」(編成届 H30年4月末)
     「日本語の能力に応じた指導のための教育課程に関する届出書」(実施届 H31年3月末)の提出。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 日本語指導員(週 20~28時間×35週、小学校12名・中学校7名)の配置・派遣。
    • 個別の指導計画に基づいた日本語指導、学習支援。
  • 日本語指導補助員(ポルトガル語対応、週28時間×35週、小学校1校、2名)
    • 対象児童に対する生活場面(休憩時間、給食、掃除等の寄り添い支援)及び学習時の入り込み支援。
    • 対象児童の保護者支援。(電話連絡や来校時の通訳、連絡帳など簡単な内容の翻訳など)
  • 通訳・翻訳支援員(ポルトガル語対応、年間1581時間、小・中学校1校、各1名)
    • 対象生徒及び保護者との面談、学習場面等での通訳支援
    • 保護者宛て文書や各種書類、児童生徒への配布物や教材等の翻訳支援
(10)成果の普及
  • 研修会等での実践事例、指導の成果の紹介
    • [小・中学校 日本語指導が必要な児童生徒教育研修](県教育委員会主催、市内全校悉皆)
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計63名(県内他市町より47名参加)
      • 発表校 第二中学校
      • 内容 各校の現状、指導方針、指導体制、生活・学習支援の実際、保護者との連携、担当者間の情報共有や連携の方法 等
    • [出雲市日本語指導研修]
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計25名
      • 発表校 塩冶小学校、斐川西中学校
      • 内容 各校の現状、外国籍児童生徒の受入体制、指導体制、受入や指導における課題と、それ
        に対する取組 等
  • 出雲市教育委員会学校教育課ホームページで、今年度の取組状況と成果を公表。(3月末)
    • 帰国・外国籍児童生徒支援事業の取組(DLAの活用、「特別の教育課程」の編成、日本語指導員、巡回日本語指導員の配置・派遣、通訳・翻訳支援員、日本語指導補助員による母語支援、教職員研修)
(11)その他
  • 日本語能力測定法を活用した個別の指導計画の作成及び特別の教育課程による日本語指導に関する教職員研修会の実施。
    • [小・中学校 日本語指導が必要な児童生徒教育研修](県教育委員会主催、市内全校悉皆)
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計63名(県内他市町より47名参加)
      • 内容
        • 指導方針、指導体制、生活・学習支援の実際、保護者との連携、担当者間の情報共有や連携の方法 等
    • [出雲市日本語指導研修]
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計25名
      • 発表校 塩冶小学校、斐川西中学校
      • 内容
        • 各校の現状、指導体制、指導教材や方法等
    • [出雲市日本語指導教職員研修]
      • 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員、市通訳・翻訳支援員 計36名
      • 内容
        • 日本語能力測定法及び測定結果を活かした指導計画作成
  • 日本語指導が必要な転入生の急増に対応できる日本語指導体制の検討委員会の実施
    • 3回実施
    • 委員構成(3中学校区6拠点校校長6名、少数在籍校校長1名、教育委員会教育部長1名)

3.成果と課題

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 成果
    • 研修会での実践発表や指導員の配置の工夫により、指導方法や使用教材などの指導ノウハウの共有ができた。
    • 通訳や翻訳など、拠点校以外でも必要に応じて母語支援ができた。
    • 拠点校の指導体制の充実により、拠点校への転入生の日本語指導時間が確保され、連続性のある日本語指導が継続的に行われた。
  • 課題
    • 転入生(年間50名以上)が急増し、市内各校への在籍(20校)が増え、拠点校以外での日本語指導(特に初期指導)の必要性が高まったが、それに対応できる指導体制が整備できにくかった。特に在籍が1,2名の少数在籍校に対しての指導時間の確保が難しかった。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 成果
    • DLA実施において、ステージの向上が確認できた。
    • 測定結果をもとに、個別の指導計画を作成し、個々の日本語能力や学習状況を担当者間で共有することができた。
    • 日本語学習に対する困難さを、聞く・読む・話す・書く等の領域視点をもって探ることができ、重点的に指導が必要な領域を絞ることができた。
    • 日本語能力について判断する重要なものさしとなっており、在籍学級で教科学習を行えるかどうか判断する際にも活用している。
  • 課題
    • 日々の生活・学習指導に時間を割いており、日本語能力測定や測定結果の分析のための時間の確保が難しい。
    • 1年間に50名以上の転入があり、転入後の在籍日数が短い児童生徒が多く、DLAによる測定が困難な場合も多かった。
    • 校内にDLAを実施できる教員が少なく、日本語指導が必要な児童・生徒の在籍が多い学校では、全員に測定ができなかったり、測定や分析にかなりの期間を要したりした。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 成果
    • 「特別の教育課程」を編成(今年度は編成率100%)することで、来日間もない児童生徒の初期指導や教科や単元、生徒の状況に応じた取り出し指導を充実させることができた。
    • 個々のレベルや目標に合わせた細やかな指導ができ、学習言語の習得が進んだ。
    • 指導計画をもとに担任と日本語指導員が共通理解を図ったことで、課題としている部分の学習にしっかりと取り組むことができた。
    • 個別の目標に沿って日本語基礎を継続的に指導し、学級生活への適応が進んだ。また、個別の教科の補習ができた。
  • 課題
    • 「特別の教育課程」や個別の指導計画に関する担当者間(その学校の全教職員)の共通理解を図ることと、そのための時間の確保が必要。
    • 個別の指導と、集団で学ぶことの両方の良さをいかした指導計画を立てる必要がある。
    • 言語以外の困難(発達障がい、学習障がい等)がある児童の特性に応じた指導(計画の立案)が難しい。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 成果
    • 日本語指導員…
      • 対応した児童生徒数 193名(小学校135名、中学校58名)
      • 指導実施時数 15,599時間(担任等との連絡、研修会参加を含む)
    • 個別もしくは少人数グループでの指導を行い、日本語能力やコミュニケーション力の向上が見られた。また、苦手なところを重点的に指導することができた。
    • 複数配置校では、継続的な日本語指導が行われ、指導員同士の情報交換ができた。
    • 日本語指導員からの情報を担任に伝え、学級での指導に活かすことができた。
    • 指導員の勤務時間を増加し、授業の準備や残務処理、研修の時間を確保することができた。
    • 日本語指導補助員…
      • 対応した児童数(ステージ下位の児童を中心に)29名
      • 支援実施時数 2,024時間
    • 母語支援のおかげで、児童が安心して生活している。特に初期指導対象児童へのサポートが効果的だった。
    • 対象児童にとって母語で会話をする時間ができ、精神的な安定につながっている。
    • 保護者の急な来校や子ども同士のトラブルにも、その場で対応することができた。
    • 通訳・翻訳支援員…支援実施時数 3,495時間
    • 学習場面での通訳、翻訳により、内容の理解が深まった。
    • 就学援助、進路等に関する申請書類や調査物等の翻訳ができ、保護者支援が充実してきている。
    • 特に進路に関する面談での正確な通訳により、学校と保護者の意思の疎通が図れた。
  • 課題
    • 年間50人以上の転入生があり、初期指導に対応するための指導員が確保できなかった。
    • よりきめ細かな個に応じた指導を行うためには、指導時間の確保が望まれる。
    • 他の指導員、校内の教職員との情報交換の時間の確保が難しい。
    • よりニーズに応じた支援を行うには、増員と支援実施時間の増加が望まれる。
    • 配置のない学校では、緊急の対応が難しい。
(10)成果の普及
  • 成果
    • 【研修会参加者の感想より】
      • 発表校の取組内容を、自校の指導に活かすことができた。
      • 実際にDLAの測定について詳しく知ることができた。
      • 具体的な指導方法や教材についての紹介があり、現任校で活用することができた。
      • 初期指導でのテキストなど、転入時の対応について、他校の取組が参考になった。
  • 課題
    • 日本語指導が必要な児童生徒の在籍数が様々で、指導員の配置も分散しているので、共通していく支援・指導について、さらに情報提供が必要である。
    • 担当教員がすべき研修であるという認識がある。 
    • 家庭との連携や支援についての情報が不足している。
    • 成果や課題に対する対応を、校内でどう共通理解を図るかが課題となっている。
(11)その他(日本語指導教職員研修及び管理職研修の実施)
  • 成果
    • 在籍が1年以上の児童生徒の69%がステージ向上した。
    • 特別な教育課程の編成の見直しを年度途中(10月)に行ったことで、実態の応じた個別指導を行うことができた。
    • 急増する転入生に対応するための持続可能な日本語指導体制の見通しを持つことができた。
  • 課題
    • 日本語能力測定法を行うことができない転入間もない児童生徒の急増により、転入が集中した学校では、一人一人の実態に応じた指導計画の作成・変更ができにくかった。

4.その他(今後の取組予定等)

  • どの学校に年度途中で転入してきても、初期指導をきめ細やかに行うために、日本語初期集中指導教室を開設して、初期指導を専門に行う。また、在籍2年間を初期・中期日本語指導重点期間と位置付け、指導員の配置により日本語指導を行う。
  • 拠点校を2校から、加配教員が配置されていて日本語指導を必要とする児童生徒の在籍が多い学校6校(3中学校区小学校3校、中学校3校)を、日本語指導拠点校として、重点的に指導員を配置し、継続的できめ細かい日本語指導を実践する。
  • 拠点校以外の学校には、対象児童生徒の日本語習得状況や必要な指導時数等の実態把握に努め、適切に派遣する。
  • 担任や教科担当等を対象とした日本語指導(在籍学級での学習支援)研修を実施し、より多くの教職員が日本語指導に携われるようにする。

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