平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(泉大津市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

  • 名称:日本語指導が必要な児童生徒に係る連絡協議会
  • 構成員:各校管理職、特別支援コーディネーター、人権教育担当教員、通常学級担任、市教委担当者
  • 開催回数:2回(年度当初と年度末)
  • 内容:
    • 「個別の指導計画」作成、日本語指導が必要な児童生徒が転入した際の配慮や留意事項等
    • 日本語能力測定方法(DLA)について

2.具体の取組内容

(1)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 拠点校・・・泉大津市立旭小学校 
  • 実施内容・・・「日本語指導が必要な児童生徒に係る連絡協議会」を拠点校で開催し、現状を把握するとともに、課題について検討し、共有を図った。
  • 指導内容・・・担当教員、学級担任と語学指導者が連携し、渡日1年未満の児童生徒についてはサバイバル日本語を獲得できるよう支援するとともに、渡日2年以上の児童生徒については、生活言語について見守りを続けるとともに、学習言語も定着するよう、日本語指導を行った。
(2)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • JSL評価参照枠により「個別の指導計画」を作成し、日本語指導を実施した後、学習目標項目例(以下「JSL評価」)を活用し、日本語能力の測定を行った。
  • 日本語指導の必要な児童生徒9名中7名に実施した。
  • JSL評価について校長会で、その目的、評価方法を周知した。
  • 評価時期を11月と市内で統一し、経年比較がしやすいようにした。
(3)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 各児童生徒について「個別の指導計画」を作成し、計画に基づいて指導を実施した。
  • 「個別の指導計画」では、「特別の教育課程」による日本語指導の実施計画について記載し、年度末には校内体制を含め見直しを図り、JSL評価項目による評価に基づいて系統だった指導ができるようにした。
  • 各校で作成した「個別の指導計画」を市教委へ提出し、情報共有を図った。
(4)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 対象人数 9名
  • 対応言語 英語、日本語
  • 対象学校種 市内小・中学校
  • 勤務形態 原則、週に1~2回、2~3時間程度
  • 帰国渡日間もない児童生徒の支援については、日本語理解の状況に応じて配置時間を増やすなど対応した。
(5)成果の普及
  • 人権教育担当者会において、担当指導主事による府や市の現状についての研修を行った。
  • 各校の担当者が、校内研修等において周知を行った。
  • 内容は、外国籍児童生徒の推移や日本語指導が必要な児童生徒の市の状況、急な編入や転入があった際に、適切な対応や支援ができるよう、体制を整えるとともに、府の日本語指導支援資料「ようこそOSAKAへ」についても周知した。

3.成果と課題

(1)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 市内中心に位置する小学校を拠点校と定め、協議会を核とした指導体制を構築化できた。
  • 指導体制を構築することで、急な編入にも柔軟に対応ができた。
     例:全く日本語が理解できない状況で渡日し、1年4ヶ月でJSL評価項目が上昇した。
  • 今年度11月と1月に外国から急な編入があり、語学指導者の確保や時間の調整に苦慮した。
  • 協議会の構成メンバーを在籍校だけでなく、全校の管理職が参加する形に変える必要性を感じた。
  • 来年度小学1年生が4名入学予定であり、学校生活で困り感がないよう、指導体制や日本語教育について更なる整備や研修が必要である。
(2)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • JSL評価項目に照らし合わせて日本語能力を測定することで子どもや教員の負担が非常に軽くなった。
  • 経年ごとの見取りが行いやすいように、評価表を添付し、学校で保管する等、来年度以降の適切な支援につながるよう工夫が必要である。
  • 年度途中の編入時、全く日本語を理解しなかった児童生徒については、JSL評価は実施しなかったが、個々の上達の状況に応じて、評価時期を設定していく。
(3)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 年度途中で編入した生徒に「特別の教育課程」による指導計画をたて、語学指導者を派遣し、サバイバル日本語を獲得できるよう支援を行った。その結果、挨拶、自己紹介、天気や自分の身の回りの単語等は理解できるようになった。母国では、不登校であった生徒が、日本では1月末時点で欠席3日(11月転入)であった。仲の良い友だちも数名でき、明るい表情で登校している。
  • 日本語が上達しても、里帰りで母国で過ごすと、一からの学習に戻ることもあった。また、保護者の学校に対する考え方が違うこともあり、根気強く話し合う必要を感じた。
  • 渡日3年以上経過し、生活言語は身についたが、学習言語に課題のある子どもが中学校へ進学予定である。市では、支援の期間を原則3年と定めているが、個々の状況に応じて、中学校でも引き続き支援を継続していく。
  • 来年度入学予定の小学1年生については、就学前施設と密に連携し、必要に応じて家庭の情報を共有していく。また入学後の様子についても就学前施設と情報共有する等、広く支援の幅を広げていく。
(4)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 渡日間もない児童生徒については、サバイバル日本語を獲得するため、教職員及び語学指導者による取り出し指導を行い、きめ細かな支援に努めた。
  • 市の日本語指導に長年携わってきたので、現状をよく把握し、対応も迅速であった。
  • 経験豊かな語学指導者を配置できたので、学校や保護者との連携や児童生徒との関係もうまくとれて、充実した支援を行うことができた。
  • 保護者が外国人の場合は、日本の学校に疑問や不安を持つ場合が多いため、指導者が懇談に同席したり、プリントを分かりやすく翻訳する等今後とも支援を行っていく。特に小学1年生の保護者については、きめ細かな支援が必要である。
(5)成果の普及
  • 人権教育担当者会で、担当指導主事による市の日本語支援の必要な児童生徒の現状と課題について研修を行った。各校園所の担当者は、自校で校内人権研修にて伝達講習を実施した。
  • 日本語指導が必要な児童生徒の在籍のない学校の教員は、自分事として捉えることが難しいが、研修等を通して、日本語支援だけでなく子どもの学習や友だち、進路に対する不安や悩み等をより深く理解する必要があることが分かった。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 平成31年4月より、拠点校である旭小学校の日本語指導担当教員による市内各校への巡回指導を実施する。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035