平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(伊賀市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

  • 伊賀市外国人児童生徒受入促進事業運営協議会・連絡協議会
     伊賀日本語の会、上野商工会議所、伊賀市国際交流協会、市民生活課
     上野東小学校・上野西小学校・緑ヶ丘中学校の学校長と日本語指導担当者
     伊賀市教育委員会学校教育課指導主事 計13名
     *就学支援委員会・学習支援委員会・指導研修委員会の3部会に、以上の13名が所属。

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

 「伊賀市外国人児童生徒受入促進事業運営協議会」を設置した。構成員は、NPO法人、ボランティア団体、企業関係者、国際交流協会、研究センター校、庁内関係部局、教育委員会で、外国人児童生徒の就学支援、学習支援及び受入支援等について協議した。

(2)拠点校等の設置や拠点的機能の整備

 日本語指導が必要な児童生徒在籍数の多い上野東小学校と緑ヶ丘中学校をセンター校に、次に在籍数の多い上野西小学校を準センター校に位置付け、教科指導型日本語指導によるわかりやすい授業作りのための教材開発を進め、生活言語だけでなく、学習言語としての日本語を教科学習指導の中で習得できるよう、実践研究と子どもたちへの支援を行った。
 上野東小学校に伊賀市初期適応指導教室を開設し、市内小中学校に編入してきた外国人児童生徒を対象に適応指導や初期日本語指導等を集中して行うとともに、各校からの相談に対応した。
 また、地域人材を活用した日本語指導コーディネーターを各校に派遣した。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施(必須実施項目)

 指導・支援体制の構築や、個別の指導計画の作成に向けて協議をした。一昨年度作成した伊賀市版個人票について、昨年度より、日本語指導を必要とする児童生徒が在籍するすべての学校での活用を開始した。伊賀市版の「特別の教育課程」による日本語指導に係る様式を整備し、センター校等での活用を開始した。また、日本語指導コーディネーターを各校に派遣し、「個別の指導計画」の作成や見直しにつながるアドバイスを行った。

(6)‐1 日本語指導ができる支援員の派遣

 小中学校に日本語指導コーディネーターを派遣し、日本語能力測定のサポートや日本語指導担当者等に対する指導助言、校内研修での指導等を行った。また、日本語指導担当者研修会において、受入体制や日本語指導等について指導した。

(6)‐2 児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 就学時や進路選択時、また生徒指導上の課題解決等のため、学校と児童生徒及び保護者が的確に意思疎通を図れるよう、市の多文化共生を担当する課や市内のNPO法人から通訳として支援員を派遣した。

(9)成果の普及(必須実施項目)

 教育委員会のホームページに実践の概要と成果を公表し、市内の小中学校、及び地域関係者にその旨を周知する。

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

 伊賀市の外国人児童生徒教育については、関係団体や学校、庁内関係部局が連携して取り組む体制が維持されている。それぞれの立場から意見を出し合うことにより、児童生徒の現状認識が進み、学校の課題等が明らかになり、情報の共有化及び次の事業推進につなげることができた。
 受入体制については、持続的な指導を可能にする人的配置や学習環境の整備が欠かせない。特に近年は、人数は少ないが、初めて外国人児童生徒を受け入れる学校も増えてきており、市としての体制づくりや予算確保が必要である。伊賀市外国人児童生徒教育推進計画(仮称)等の指針の作成や共有データの管理などが今後の課題である。

(2)拠点校等の設置や拠点的機能の整備

 センター校では、すべての児童生徒にとってわかりやすい授業づくりを意識して指導のあり方を見直す実践を行うとともに、伊賀市版の「特別の教育課程」による日本語指導の様式の活用を開始し、「個別の指導計画」の実施・見直しのサイクル確立の取り組みを進めることができた。初期適応指導教室では、指導員が日本語指導をはじめ算数の教科指導等、その子の能力に応じた学習目標を設定し、ていねいに指導を行っているため、子どもたちへの初期日本語指導・学校への適応指導に一定の成果をあげている。また、日本語指導コーディネーターの派遣により、初めて外国人児童生徒を受け入れる学校など、散在地域においても日本語指導が必要な児童生徒が的確な指導を受けられるよう学校を支援することができた。
 今後、センター校における取組を核として、そこで蓄積された実践を、研修会や日本語指導コーディネーターの派遣等を通じて他校に発信・共有し、「特別の教育課程」による日本語指導の拡充につなげていくことが必要である。初期適応指導教室での指導については、指導員のさらなる指導力向上を図るとともに、児童生徒数が多数在籍するような状況になった場合の指導・支援のあり方について今後検討していく必要がある。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施(必須実施項目)

 個人票の導入により、引継ぎをスムーズにする体制を整えることができた。また、伊賀市版の様式を整備し、センター校での活用を開始したことで、今後、日本語指導を必要とする児童生徒が在籍するすべての学校に「特別の教育課程」による日本語指導を拡充していく土台を築くことができた。また、日本語指導コーディネーターの指導・助言により、各校の日本語指導の質を向上させることができた。
 今後、日本語指導を必要とする児童生徒が在籍するすべての学校に「特別の教育課程」による日本語指導を拡充し、「個別の指導計画」の実施・見直しのサイクルを構築していくために、日本語指導コーディネーターの派遣や研修を通して、各校の日本語指導の質の更なる向上を図るとともに、センター校での取組のノウハウを市内に広げていくことが必要である。

(6)‐1 日本語指導ができる支援員の派遣

 日本語指導コーディネーターの派遣により、受入や指導体制について、訪問校毎の課題に適切に応えることができた。また、子どもたちの日本語能力に合わせて、適当な教材の紹介やその活用等、必要な情報を提供することができた。
 日本語指導者研修会では、外国人児童生徒への学習支援や多文化共生の視点にたった教育等について認識を深めることができた。
 伊賀市では、日本語指導を必要とする児童生徒が増加傾向にあり、現在外国人児童生徒が在籍していない学校にも、突然日本語指導を必要とする児童生徒が編入してくることも十分考えられる。今後も、日本語指導ができる支援員の派遣を通して各校をサポートするとともに、研修会等を通して、各校の日本語指導担当者の力量を高めていく必要がある。

(6)‐2 児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 通訳者の派遣により、生徒や保護者に適切な情報の提供ができた。また、保護者の疑問や悩みに応えることができた。通訳者がいることで、保護者の不安を和らげ負担を軽減することにつながっている。
 外国人児童生徒が在籍している学校に対して母語話者の配置が難しいなか、今後も通訳や翻訳の支援を継続していく必要がある。

(9)成果の普及(必須実施項目)

 ここ数年、人数は少ないが、初めて外国人児童生徒を受け入れる学校も増えてきており、市内全域で最新の情報を共有することは、日本語指導が必要な児童生徒に対して必要な支援が行き渡る体制作りにつながった。また、地域の関係者と成果を共有することで、取組に対して多角的なアドバイスを得ることができた。
 今後、センター校で積み重ねられてきた実践の具体的な中身や実践から得られた成果物等に対して、それぞれの教員が必要なときにアクセス、活用できるよう、ホームページを中心に成果の普及体制をさらに整備していく必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 運営協議会の継続、日本語指導コーディネーターの派遣、初期適応指導教室の充実(指導力の向上、運営上の課題の改善)、センター校による実践研究と情報発信、日本語能力の把握、「特別の教育課程」による日本語指導の拡充と「個別の指導計画」の実施・見直しのサイクル構築、日本語指導担当者の資質向上とネットワークづくり、通訳・翻訳予算の確保。
  • 受入体制、初期対応、在籍学級での教科指導型日本語指導と日本語指導教室での個別授業の系統性、学力保障、進路保障等の流れの確立。

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