平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(静岡県)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

  • 会議名:「帰国・外国人児童生徒等教育連絡協議会」
  • 構成員:外国人児童生徒が在籍する市町の教育委員会担当指導主事等
     政令市教育委員会担当指導主事等、外国人児童生徒スーパーバイザー・相談員等
     教育事務所地域支援課担当指導主事等、義務教育課指導監・担当指導主事等
     県多文化共生課担当、県国際交流協会担当
  • 運営体制:県多文化共生課、県国際交流協会との連携により、市町多文化共生担当も参加する終日の会議とする。
  • 内容:大学有識者等の講義、行政説明、事業報告、事例発表等

2.具体の取組内容

<1>運営協議会・連絡協議会の実施

(運営体制)県多文化共生課、県国際交流協会との連携により、市町多文化共生担当も参加する終日の会議とする。
(内容)事例紹介に対する助言(講師:文部科学省 プロジェクトオフィサー 近田由紀子氏)、行政説明、事業報告、事例発表等

<2>拠点校の設置等による指導体制のモデル化

 外国人児童生徒支援加配教員(基礎定数分含む、以下同じ)は、原則として教諭をあて、外国人児童生徒支援加配教員が配置された学校を「拠点校(小33校・中10校)」と位置付け、各教育事務所に配置している「日本語支援コーディネーター」が「拠点校」を訪問し、「特別の教育課程の編成・実施」について、実態把握をするともに、助言を行った。加配教員のほか、学び方非常勤講師(日本語指導)を24人配置し、学び方非常勤講師のいる学校には、日本語支援コーディネーターが出向き、「拠点校」での取組及び成果をもとに、指導体制構築のための助言を行った。

<4>「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 文部科学省の「外国人児童生徒等教育を担う教育の養成・研修プログラム」を活用し、県教育委員会が各市町に開催希望を募って「日本語指導が必要な児童生徒支援研修会」と題した研修会を7市町6会場で開催した。特別の教育課程に関する内容を中心とした研修会では、日本語支援コーディネーターが講師となり、加配教員や外国人児童生徒等担当教員、支援員等、57人が参加した。
 日本語支援コーディネーターを特別の教育課程の編成・実施等について指導助言をするために、市町教育委員会・学校の要請に応じて派遣した。

<6>日本語指導ができる、又は児童生徒の母語がわかる支援員の派遣

(外国人児童生徒相談員)
 ポルトガル語 4人、スペイン語 3人、中国語 6人、フィリピノ語 4人、
 ベトナム語 2人(うち4人は、教員免許状保持者)
 外国人及び日本国籍を有するが日本語指導が必要な児童生徒の学校生活への適応(外国人保護者の日本の学校生活への理解が児童生徒の適応にも深く関わるため、保護者への通訳支援も含む)や学習内容の理解を支援するために、上記の言語及び人数の相談員・SVを任用し、市町教育委員会・学校の要請に応じて派遣した。
 相談員及びSVの訪問回数:小学校687回 中学校348回 特別支援学校179回 合計1214回

(日本語支援コーディネーター)
 2教育事務所に各1人、合計2人(平成29年度からの任用)
 特別の教育課程の編成・実施等について指導助言をするために任用し、市町教育委員会・学校の
 要請に応じて派遣した。
 日本語支援コーディネーターの訪問回数:小学校76回 中学校98回 特別支援学校19回 合計193回

<8>ICTを活用した教育・支援

日本語支援コーディネーターが学校訪問の際、タブレット端末を持参し、無料アプリ(日本語学習、教科学習に活用可能)を活用し、日本語指導担当教員との打合せ時間にアプリ紹介したり、日本語指導コーディネーターや担当教員が実際に授業場面で活用したりした。

<9>高等学校における教育・支援

 連絡協議会は高校教育課の担当指導主事にも参加し、グループワークでは高校における外国人教育・支援の様子について意見交換をし、その後の全体協議でも広く情報を共有することができた。
 また、日本語支援コーディネーターによる高等学校視察を実施し、日本語指導が必要な生徒が在籍する学校の実態を知ることで、小・中学校での指導につなげていくことができた。

<10>成果の普及

 静岡県教育委員会教育広報紙 Eジャーナルへの記事掲載
 静岡県教育委員会義務教育課Webページへの事業成果等の記事を掲載

3.成果と課題

<1>運営協議会・連絡協議会の実施
  • 成果
     県多文化共生課や国際交流協会と連携し、市町首長部局の多文化共生担当課等の担当職員との「合同ネットワーク会議」とした。市町教育委員会担当と市町多文化共生担当が一堂に会する会議となり、一層の連携推進を図ることができた。
  • 課題
     会議への参加数は、合計48人という成果であったが、日程調整が難しいとのことで担当が参加できない市町もあったため、会議日については、年度当初に連絡し、できるだけ多くの担当が集まることができるようにする。また、今後の状況を見据え、現時点で外国人児童生徒等が在籍していない学校を所管する各市町教育委員会の担当指導主事にも参加を促す。
<2>拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 成果
     「日本語支援コーディネーターの支援が役に立った」というアンケート結果が100%だったことから、日本語支援コーディネーターの支援は学校にとって有効であったことがわかる。加配教員がいない中でも一歩進んだ取り組みができるようになった学校が増え、特別の教育課程で指導を受けた児童生徒数も増加した。
  • 課題
     少数在籍学校への訪問だけでなく、加配教員のいる拠点校にも訪問している。これは、新任の加配教員が多く、日本語指導についてのノウハウや知識・経験がほとんどないためである。次年度以降はさらに日本語支援コーディネーターを2人増員し、4人体制で日本語支援コーディネーターの派遣を充実させていく。
<4>「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 成果
     研修会等への参加により理解が深まり、特別の教育課程編成に着手する学校も徐々にあらわれてきているが、やはり学校へ訪問し、直接アドバイスを実施する日本語支援コーディネーターの存在は大きかった。
  • 課題
     県内33市町のうち6市町での開催であったため、まだまだ十分でないと考えており、今後も継続して実施していく予定である。
<6>日本語指導ができる、又は児童生徒の母語がわかる支援員の派遣
  • 成果
     「相談員及びSV、日本語支援コーディネーターの等の支援が役に立った」というアンケート結果が97%以上だったことから、相談員及びスーパーバイザー、日本語支援コーディネーターの支援は学校や子供たちにとって有効であったことがわかる。
  • 課題
     日本語指導が必要な児童生徒が「学校が楽しい」と感じるためには、相談員等の支援だけでなく、クラスの友達との関係、学級担任や外国人児童生徒担当教員との連携、保護者の理解等、様々な要因がバランスよくかみ合うことが大切である。
     今後も、日本語支援コーディネーターが日本語による指導方法等を広めることにより、バイリンガル支援員を発掘することが難しい市町教育委員会等において、日本人支援員等の任用につながっていくことが考えられる。
<8>ICTを活用した教育・支援
  • 成果
    • ICTを活用したいが、どんな活用方法があるかわからない教員が多かったため、日本語支援コーディネーターのICT(タブレット)を活用したアプリの紹介はとても有効だった。
    • アプリの視覚教材を活用することで、児童生徒が意欲的に学習に取り組み、理解も進む。
    • 教材や写真等、その場で画面を見せながら紹介できるので、教員も理解しやすい。
  • 課題
    • 学校によってもICT環境や設備が異なるため、各学校の状況に合わせたICT活用の支援が必要となる。
    • 今後、研修会や学校訪問時にますます使用頻度が増すと思われるため、さらに効果的で有効な活用方法を模索し、今後も支援、助言に生かしていきたい。
<9>高等学校における教育・支援
  • 成果
     日本語指導が必要な生徒が在籍する高等学校の実態を知ることで、中学校卒業までに日本語の力をいかにつけるか、また、小・中学校でのキャリア教育についてなど、小中高の連携の必要性を改めて実感し、小・中学校での指導に生かしていく視点を得ることができた。
  • 課題
     高等学校の視察は、今年度初めて取り組んだことであり、4校のみの視察であったため、引き続き、高等学校の視察を続け、小・中学校の指導に生かしていくとともに、高校教育課とも連携し、高等学校の外国人教育の充実に向けてもつなげていきたい。
<10>成果の普及
  • 成果
     本県の状況及び事業について、広く取組が周知された。
  • 課題
     今後も継続的に記事の掲載を行い、本県の外国人児童生徒等の状況や事業について周知していく。

4.その他(今後の取組予定等)

 日本語教育学会が受託している文部科学省事業との連携を進めながら、来年度は、日本語支援コーディネーターが講師となり、教員等の資質向上を図る研修会を実施する。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035