平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(岐阜県)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 「岐阜県外国人児童生徒学力向上総合支援事業」において、「外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議」を設置して実施した。
 構成:伊東祐郎副学長(東京外国語大学副学長)、実践校教員(1名)、実践教室教員(1名)、協力校教員(9名)、関係市教育委員会担当者(5名)、県教育委員会事務局(4名)

2.具体の取組内容

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 「特別の教育課程」による日本語指導カリキュラムの実践を行う実践校1校(可児市立蘇南中学校)と協力校8校(各務原市立緑苑小学校、瑞穂市立穂積小学校、大垣市立西中学校、関市立桜ヶ丘小学校、美濃加茂市立太田小学校、美濃加茂市立東中学校、可児市立今渡北小学校、土岐市立肥田小学校)を指定した。
  • 入学・編入学前後の日本語教育が必要な外国人児童生徒に対して、初期の日本語教育や小中学校への適応指導等を行う拠点として「ばら教室KANI」を指定し、支援体制の充実を図るとともに、カリキュラム及び教材の開発を行った。
  • 県が設置する「外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議」において作成した日本語の定着を目指したカリキュラムの実践を行った。また、指導方法の工夫改善に加え、初期指導の段階を終えた児童生徒への支援の充実を図り、成果の検証を行った。
  • 実践校及び協力校は、各地域の日本語指導担当者のための研修において成果の普及を行った。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 「外国人児童生徒カリキュラム開発推進会議」において、日本語能力測定方法及びその活用方法について研修を行った(講師:東京外国語大学 伊東祐郎教授)。
  • DLAについては、可児市立蘇南中学校(実践校)、可児市立今渡北小学校(協力校)、美濃加茂市立太田小学校(協力校)、美濃加茂市立東中学校(協力校)においてそれぞれ10名程度に対して行った。開発したカリキュラム及び指導の成果を検証するため、実践校については、2回実施して対象生徒の変容を見届けることとした。協力校については、各学校の実情に応じて開発カリキュラムの対象として想定できる児童生徒を抽出し、1回実施した。
  • DLAの実施講習を受けた協力校の担当者が、県で開催している教員対象の「DLA研修講座」の中で実践方法を紹介し、参加者の見識を高めた。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 日本語を活用する力が身に付き、学力の向上につながるカリキュラムの編成を行う「外国人児童生徒教育カリキュラム開発推進会議」を設置した。
  • 当該会議において、実践校及び協力校での指導内容の検討、活用する教材の作成等を行い、学識経験者の助言を得た。
  • 実践校における授業参観を通して、日本語指導等における指導改善について協議した。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 実践校及び初期指導教室に、対象児童生徒の母語が分かる支援員をそれぞれ1名ずつ派遣した。また、東濃高校に通訳支援員を2名派遣した。
  • 取り出し指導または通常学級への入り込み指導において、対象児童生徒の適応指導及び学習指導における母語支援を行った。
  • 実践校及び初期指導教室において、配付物の翻訳や懇談会での通訳等、保護者への対応を行った。

3.成果と課題、今後の取組み等

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 外国人児童生徒カリキュラム開発推進会議では、実践校のニーズや協力校の実態を踏まえたカリキュラムを開発することができた。作成した計画や教材の一部について実践校や協力校で実施することにより、その有用性を検証することができた。担当者同士の情報交換や意見交流が進み、連携協力して事業を推進することができた。
  • 県は、初期指導教室のモデルとなっているばら教室KANI(可児市)の経営や指導方法等のノウハウが、今後初期指導教室を起ち上げようと予定している各自治体に共有される場の提供を行っていく。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • DLA実施の目的を踏まえ、その意義について実践を通して理解を深めることができた。実施することによって、対象児童生徒への理解が深まり、指導内容の精選や個に応じた指導の充実を図ることができた。また、実践校では、DLAにおける対話的な診断の実施そのものが指導の一環であることが再認識され、DLA実施後の具体的な指導につなげることができた。
  • 「外国人児童生徒カリキュラム開発推進会議」(第3回)においては、DLAによる実態把握に基づく実践を参観し協議することで、DLAの効果的な活動について理解を深めることができた。
  • DLAの結果から、対象生徒の傾向として、「聴く」「話す」能力は概ね高く、「書く」「読む」能力が低いことが分かった。日常会話に困らない生徒も読解力が低いことが多く、授業における教科書やワークシート等を用いた学習や家庭学習においては、個の状況と学習する内容に応じた適切な支援が必要であることを再認識した。
  • 時間割にDLAの時間を位置付けて、複数の担当者で実施した実践校においては、個人差はあるものの、対象生徒の「能力の伸長」を確認することができた。
  • DLAの効果的な実施と活用方法をさらに検討し、対象生徒の指導や支援に役立てていく必要がある。
  • DLAを、編入学時や転入学時だけ実施するのではなく、日本語指導教室を卒業し、通常学級に戻す時の判断として実施できるようにしたい。明確な判断基準を持ちたい。
  • 外国人児童生徒教育連絡協議会等の機会を捉えて、研修の充実を図る。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 開発したカリキュラムに基づいた実践校の授業公開及び研究協議により、支援体制における役割分担や取り出し指導における留意点等、指導改善の方途を確認することができた。
  • 開発したカリキュラム及び教材については県のHPで公開をしている。外国人児童生徒連絡協議会等で引き続き周知することにより、「特別の教育課程」のモデルとして普及を図る。
  • 児童生徒の日本語の定着がより図られる、指導方法や指導体制を整備していく。
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 支援員は教科担任と外国人児童生徒とのよりよい関係を築く役として、一人一人の様子を観察し、教員とともに有効な支援を行うことができた。
  • 授業において、支援員の助けを借りて、臆せずに質問したり、発表したりすることができ、学習姿勢の改善及び学力の向上を図ることができた。
  • 高等学校段階においては、日本語や教科等の指導に加え、就労を見据えた進路指導の充実をより図ることが必要である。
  • 対象児童生徒が母語の支援を得られ、学習内容の理解や日本語の定着が図られるよう、継続して支援員の派遣を行っていく。

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