平成30年度「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(厚木市)

平成30年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

  • 外国籍児童・生徒等指導推進部会(運営協議会)
    • 国際教室担当者(小学校 11校 中学校 5校)、教育委員会担当者、日本語指導協力者派遣校担当者(第2回)
  • 日本語指導協力者連絡会
    • 日本語指導協力者(11言語 26人)、教育委員会担当者

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施
  • 外国籍児童・生徒等推進部会(国際教室担当者、日本語指導協力者派遣校担当者(第2回)、教育委員会担当者)
    • 【目的】
       日本語指導を要する外国籍の児童・生徒や帰国児童・生徒が学校生活に適応できるよう、指導内容や指導方法等について研究し、情報交換及び情報共有を通して指導の充実を図る。
    • 【内容】
      • 国際教室の円滑な運営、指導についての研究協議
      • 特別の教育課程編成に係る情報共有
      • 日本語能力測定に関する研修(講義・演習等)
  • 日本語指導協力者連絡会(日本語指導協力者、教育委員会担当者)
    • 【目的】
       日本語指導上の諸問題への対応と望ましい指導の在り方について情報交換及び情報共有を図る。
    • 【内容】
      • 対象児童・生徒についての状況報告
      • 指導の成果と課題、今後の指導等についての研究協議
      • 今後の指導方針・指導体制についての情報共有
(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化
  • 国際教室設置校等に「拠点的機能」を備えた体制づくりについての調査・研究
    • 国際教室設置校教員同士の情報交換、国際教室設置校教員と国際教室非設置校教員による情報交換を行い、取組状況や課題についての把握をする。
    • 次年度以降に向けて、計画の見直しを行う。
(3)日本語能力測定(対話型アセスメントDLA)を活用した実践研究
  • 対話型アセスメントDLAの活用に向けた講義・演習
    • 日本語能力測定の基礎を学び、それに基づいた日本語能力の把握と学習支援の在り方を検討し、今後のアセスメントの実践及びその後の指導に生かす。
  • 日本語能力測定による評価・報告
    • 対話型アセスメントDLA実施状況及び評価の報告
    • 日本語指導協力者による個別指導状況報告
    • 次年度へ向けた日本語指導支援の方向性検討
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 「特別の教育課程」による日本語指導に向けた協議
    • 特別の教育課程編成に係る情報共有
    • 指導事例等による指導や運営についての研究協議
  • 特別の教育課程編成の実施及び報告
    • 実施計画書の作成・提出
    • 国際教室担当者及び日本語指導協力者による計画的な指導
    • 特別の教育課程による指導対象:小学校 219人 中学校 62人
    • 実施報告書の作成・提出
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
  • 日本語指導教室支援員の派遣
    • 日本語指導教室設置校への支援員派遣
    • 日本語の基礎的な読み書き、会話の指導、教科指導の補習、生活適応指導、教育相談等
       ※小学校 5校 週1回 2時間 各校 2~3人派遣
  • 日本語指導協力者の派遣
    • 教育課程内の時間に、日本語指導を必要とする児童・生徒への個別指導を実施
    • 日本語の基礎的な読み書き及び日本語の会話の指導、生活適応指導、家庭との連絡指導等
       ※11言語 26人 小学校 15校 中学校 8校 計23校へ派遣
       (英・中国・タガログ・ベトナム・韓国・ポルトガル・スペイン・ウルドゥ・シンハラ・タミル・ヒンディー)
  • 日本語指導協力者連絡会の実施
    • 対象児童・生徒についての状況報告
    • 指導の成果と課題、今後の指導等についての研究協議
    • 今後の指導方針・指導体制についての情報共有
(8)ICTを活用した教育・支援
  • タブレット端末を活用した指導の実践
    • 翻訳ソフトを活用したコミュニケーションの確保
    • 算数・数学の計算や国語のひらがなや漢字、言葉に関する学習支援ソフトによる個別学習
(10)成果の普及
  • 小中学校長会における実践報告
    • 1年間の取組の内容、成果、課題等の報告
    • 来年度へ向けた方向性の伝達、協力要請
  • 日本語指導協力者派遣校への情報提供
    • 特別の教育課程編成について
    • DLAの活用について
    • 国際教室における実践の共有

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

<成果>
 運営協議会を実施することで、国際教室の運営や学習指導について情報の交換及び共有を図り、課題改善に向けた取組につなげることができた。国際教室を設置していない学校への情報提供の場にもなり、日本語指導に対する意識の向上へと結びつけることができた。
 日本語指導協力者連絡会では、日本語指導協力者の作成する指導個人カードを基に協議を行い、児童・生徒の習状況をより詳しく把握することができ、次年度の日本語指導協力者の派遣を含めた支援の見通しをもつことができた。
 特別の教育課程編成についての情報も共有することができ、個別指導計画による指導を進め、個に応じた適切な支援を進めることができた。また、日本語能力測定に係る研修では、講義・演習を通してその必要性を広めるとともに、測定を実施した教員からの実践事例の報告を受け情報提供により、他校での測定実施へとつなげることができた。

<課題>
 国際教室が設置されていない学校における外国籍児童・生徒等への日本語指導について、情報の共有や支援が行き届かない部分も見られるため、国際教室設置校教員との交流がさらに必要である。
 日本語指導協力者同士の協議においては全体会形式で行っているが、協力者の意識の高まりも見られるため、具体的な事例を用いたグループ協議の実施を検討する。

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化

<成果>
 他校の国際教室設置校教員と情報交換の場を設けることにより、共通の課題やそれに対する解決に向けた指導計画づくりに向けた取組ができた。
 取組状況や課題の把握ができることにより、次年度以降の計画の見直しができた。

<課題>
 研修や情報交換によって指導についての知識量は増えたが、実際の指導力の向上については課題として残る。今後、担当教員同士が実際の指導場面を見合い、振り返り、協議することによって指導力の向上へとつながると考える。

(3)日本語能力測定(対話型アセスメントDLA)を活用した実践研究

<成果>
 対話型アセスメントDLAの必要性や実施方法、支援への活用方法など、基本的な理解を深め、日本語能力測定の実施につなげることができた。また、資料等についても各校に配布することができ、ハード面の充実を図ることができた。
 さらに、測定・評価を実施する学校が増え、一人一人の児童・生徒に対する適切な支援につなげることができた。

<課題>
 実施に当たっては、準備や実施時間の管理、評価方法等、さらに情報交換及び研究を進め、どこの学校でも実施していくことができるような環境を整備していく必要がある。
 特に、DLA実施後の評価に時間がかかるため実施へとつながらない、サバイバル段階にある児童・生徒に対する実施場難しいなどのことから実施につながらないケースがある。実践事例を用いたグループ協議等を行うことにより実践につなげていきたい。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

<成果>
 協議会の中で情報共有を図ることで、国際教室設置校全校で特別の教育課程編成による日本語指導の実施につなげることができた。また、7月に1学期の振り返りを実施することにより、取組状況とその後の指導について確認することができた。
 さらに、個別の学習計画の作成に加え、日本語指導協力者の派遣により、個に応じた効果的な指導を行うことができ、日本語能力や学力の向上につなげることができた。

<課題>
 多くの国際教室設置校において担当教員は1人であり、校内において指導・支援の相談体制が十分でないため、指導計画の作成や見直しの際に苦労する場合が見られた。担当教員同士の連携を深めるためにも、中学校区における連携体制づくりに取り組みたいと考えている。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

<成果>
 日本語指導教室支援員を派遣し、週1回、1時間程の学習時間ではあるが、5校の小学校で87人の児童に対し、複数の支援員による指導により、個に応じた細かな日本語指導や教科指導の補習を行うことができた。また、言葉や教科の学習だけではなく、日本の文化等に触れた学習や生活適応についての相談等も見られ、児童・生徒にとっては有意義な時間になっている。
 日本語指導協力者を小学校 15校 中学校 8校で185人の児童・生徒に派遣し、個に応じた日本語指導及び教科指導を行うことで、児童・生徒の基礎・基本の定着を図ることができた。特に、母国語の分かる協力者の指導により、初期の日本語指導対象者の学校生活への適応を速やかに行うことができた。また、母語で話すことができる支援員は、学習のみならず、学校生活や家庭での不安や悩みを話すことができるため、日本語が分からない児童・生徒にとって大切な存在となっている。

<課題>
 日本語指導教室については原則として外国籍児童・生徒の多い学校5校での開室となっているため、その他の学校に在籍している児童・生徒に支援することができていない。
 日本語指導協力者については対応できない言語を母語とする児童・生徒への支援が行き届かなかったため、新たな言語の協力者の確保が必要である。また、協力者は他の仕事や活動を兼務していることが多く、派遣できる時間が限られているため、必要な児童・生徒に十分な時間の派遣ができているとは言えない状況である。新規の協力者の確保に努め、十分な時間の支援をできるようにしていきたい。 

(8)ICTを活用した教育・支援

<成果>
 学習支援ソフトを活用した個別学習では、興味・関心の高まりがみられ、一定の効果を上げることができた。

<課題>
 翻訳ソフトの翻訳が意図した内容として伝わらず、逆に混乱する場面も見られた。教育現場に対応したソフトを探し、活用したい。
 担当教員のICTに対する理解度によって、ICTの活用に開きが見られた。次年度については、研修内容にICTを入れるよう検討したい。

(10)成果の普及

<成果>
 外国籍児童・生徒が増加している中で、管理職の方に改めて支援についての現状を理解していただき、今後の取組への協力をお願いすることができた。また、国際教室を設置していない学校に対して日本語指導を行う際の情報を提供し、指導・支援につなげることができた。

<課題>
 校内での支援が、国際教室担当教員や日本語指導担当教員だけに任されている様子も見られる。国際教室や日本語指導協力者の指導・支援について校内で共通理解し、通常の学級内においても実施可能な支援を行うよう、教育相談コーディネーターを中心とした支援体制の充実の必要性を発信していく必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 効果的な指導を実施するための日本語指導協力者の確保及び配置の継続
  • 国際教室間の連携及び国際教室が設置されていない学校における支援の在り方の研究
  • 共生社会における共に学び成長する取組に関する研究

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035