平成31年度「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(堺市)

平成31年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

○人権教育課

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化(※必須実施項目)
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (※必須実施項目)
(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣
(12)成果の普及 (※必須実施項目)

○教育センター研修グループ

教職員への日本語指導研修会の実施
 

2.具体の取組内容 

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化(※必須実施項目)

文科省日本語指導アドバイザー派遣活用による拠点校整備の方向性・問題点の確認を行いながら、次年度の拠点校(通級・巡回指導)4校設置に向けての準備を進めた。また、拠点校配置教員の巡回指導及び巡回支援を通して、日本語指導ができる教員の養成を進めるとともに、計画的に拠点校配置を進めていくため、拠点校配置教員の確保を行った。昨年度に引き続き、管理職への日本語指導研修を行うことで、本市の現状と課題を共有した。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

平成31年4月に、日本語指導等対応教員を対象とした日本語能力測定に係る研修会を行い、各学校で活用するよう周知を図った。以後、日本語指導等加配教員配置校において日本語能力測定法等を活用した対象児童生徒の実態把握を行い、年3回の日本語指導等対応教員連絡協議会で、実態に応じた指導方法や教材についての情報交換、研修を行っている。また、同じく自立支援日本語指導員に対しても日本語能力測定に係る研修を行うことで、児童生徒等への支援において積極的な活用を促進した。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (※必須実施項目)

日本語指導等対応教員を対象とした「日本語指導等対応教員連絡協議会」を年間3回開催し、その中で、各学校の「特別の教育課程実施報告書」を基に、日本語能力測定方法等を活用した1年間の成果と課題報告と次年度の重点課題を検討した。また、個別の指導計画の様式の見直しにむけての協議もおこなった。全市学校管理職に対しては、「日本語指導が必要な児童生徒を対象とした特別の教育課程編成(個別の指導計画)について」説明を行った。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

日本語指導が必要な幼児児童生徒が在籍する学校園に対し、自立支援日本語指導員を派遣する。

1  指導員への事業内容の説明

2  各学校園への日本語指導を必要とする幼児児童生徒の照会

3  編入時の面接と指導員の派遣

4  指導員派遣校園の決定
  • 従事時間は1回2時間
5  報告確認
  • 幼児児童生徒の言語等習得状況について (報告者:自立支援日本語指導員)

(12)成果の普及 (※必須実施項目)

  • 堺市在日外国人教育研究会において、日本語指導等対応教員配置校が、「特別の教育課程」の実施状況や国際理解教育活動の報告を行い、全市に増加・散在化・多言語化する日本語指導を必要とする児童生徒等への指導方法や支援方法への理解を広めることができた。
  • 堺市ホームページへの日本語教材の掲載。
     

3.成果と課題

(2)拠点校の設置等による指導体制のモデル化(※必須実施項目)

(成果)

拠点校の設置に向け体制づくりを進める中、全市において、各学校園への日本語指導が必要
な子どもたちの状況の共通理解と特別の教育課程への認識及び国際理解教育の重要性について理解を深めることができた。また、拠点校配置教員による巡回指導及び巡回支援によって、はじめて日本語指導を行う教員の孤立化を防ぐとともに、指導力向上に大きく貢献した。

(課題)

巡回指導、巡回支援の実質的な運用の限界が見えてきた中、通級指導を取り入れる必要性が認められた。今後は、拠点校として、4校の拠点校となるセンター校により、通級及び巡回指導を取り入れることで、全ての児童生徒に正しい日本語指導を早期に行うことをめざす。また、センター校日本語指導教員の補助として、日本語指導員(自立支援日本語指導員)を派遣することで、年度途中の急激な対象児童生徒の増加に対応できるようにするなど、柔軟な組織体制の構築を行う。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

(成果)
  • 児童生徒等一人ひとりの既習内容や理解状況・定着の様子等を把握することで、個に応じた指導を計画的に実施することができた。
  • 日本語能力測定方法は、読書を通してのアセスメントであるため、指導教材としても有効であった。
  • 個別の指導計画を作成する際に、活用することができた。
  • 日本語能力測定方法等の結果を教育委員会と日本語指導等対応教員配置校が共有することで、自立支援日本語指導員を適切に配置することができた。
  • 自立支援日本語指導員も日本語能力測定を活用することで、よりよい支援につながった。
(課題)

日本語能力測定方法は、年度当初に実施し計画に反映させていくことが好ましいが、実施のための教員研修が必要であり、実施に時間がかかるなど、測定完了時期が適切ではないケースもみられた。今後は、日本語能力測定方法を定着させ、測定を速やかに行う体制が必要となってくる。また、日本語指導等対応教員や自立支援日本語指導員だけでなく、各学校の校務分掌で位置付けている日本語指導担当者にも、日本語能力測定方法の研修を行うなどして、各学校の自立した日本語指導運営を図っていく必要がある。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (※必須実施項目)

(成果)

個別の指導計画の児童生徒一人ひとりの家庭環境や人間関係、日本語の習得状況などをふまえて今後の指導方針を考えることもできるため、作成した指導計画を管理職や学級担任等の関係者で共有することで、児童生徒に関わるための重要なツールとして活用した。また、協議会を通して、個別の指導計画のモデル様式をより実態に応じた形に改善することで、進路の観点を入れた指導を小学校から意識付けすることができた。

(課題)

個別の指導計画の様式等の見直しを行う中で、小中間の高校受験での配慮事項などへの認識の格差が浮き彫りとなった。日本社会でキャリア形成をめざす外国人児童生徒等にとって、高校受験は一つの選択肢でもあるため、小学校での高校受験システムの理解も今後の課題であると感じる。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

(成果)

海外から帰国して間もない幼児児童生徒及び外国から来日して間もない幼児児童生徒が、学校園生
活において十分に能力を発揮できるように、日本語指導をはじめとする自立のための指導を行うことができた。また、母語がわかる自立支援日本語指導員の派遣を基本とすることで、幼児児童生徒の心のサポートを行うことができた。

(課題)

多言語化にともない自立支援日本語指導員の派遣の需要や日本語指導を必要とする児童生徒数は増加しており、特定の地域へ集中する傾向がある。その反面、学校から要請のある言語で対応できる指導員は不足しており、一人の指導員に配置回数が偏ってしまい、学校の希望に対応できない状況がある。今後も、母語で対応できる指導員の派遣も必要だが、日本語指導という観点から児童生徒の母語が話せることに拘らず指導員を派遣することを積極的に検討していく。
また、各校に校務分掌上に位置づけのある日本語指導担当者が、日本語指導の中心的役割を担う教員として意識を高めていくことで、自立支援日本語指導員と学校園のより綿密な連携をすすめる必要がある。連携を密にし、幼児児童生徒の個に応じた日本語指導及び心に寄り添う指導をさらに進めていく。日本語指導のスキルは全教職員に必要なスキルとして、今後も教職員研修を進めていく必要がある。

(12)成果の普及 (※必須実施項目)

(成果)

堺市在日外国人教育研究会において報告の場を持ったことで、全市で、日本語指導を必要とする児童生徒等について認識を深める機会を設けることができた。また、日本語指導の取組の成果を発信・普及させることで、指導のスキルを共有することができ、堺市日本語指導教材「ともだちといっしょに」の活用の推進にもつながった。共通教材の活用や指導方法の共有により、散在する日本語指導を必要とする児童生徒等への支援に効果のある取組となった。

(課題)

成果を発信・普及させることは、今抱えている課題を改善していくうえでも重要である。
また、各々の日本語指導等対応教員が、個に応じた日本語指導教材を工夫し作成しているが、教材を共有する体制が十分でないため、今後は、オリジナル教材などを容易に共有できるよう、ネットワークを活用した取り組みができるよう整備をすすめていく必要がある。

表

4.その他(今後の取組予定等)

  • 複数年かけて、拠点校となる学校を増設し、対象児童生徒が日本の学校生活で自立し、その能力を発揮できるよう、通級及び巡回指導による早期の適切な日本語指導を行うよう構築を進めていく。また、各学校の日本語指導力の育成及び日本語指導ができる教員の育成を図っていくことも引き続き大きな課題である。
  • 次年度より、多言語化にも対応すべく、携帯型翻訳機の導入を行う。このことに対する効果検証も進めていく必要がある。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035