平成31年度「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(静岡市)

平成31年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

○ 指導員連絡協議会

  • 構成員:

      学校教育課長、指導主事1人、学校経営支援員3人、
      通級指導員11人、訪問指導員5人

○ 日本語指導担当者会

  • 構成員:

      学校教育課長、主幹兼教育課程係長、指導主事4人、学校経営支援員3人
      日本語指導担当者125(各校1名)
 

2.具体の取組内容 

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

1 指導員連絡協議会(年1回開催)

本年度の事業について、現状と課題の整理、本年度の重点や支援体制の改善についての協議を行った。

2 日本語指導担当者会:(年1回開催)

指導主事、中央研修の参加報告を中心に、当該児童生徒に関する背景についての理解や諸問題への対応、受入れ体制の整備や具体的な支援の方法等についての理解を図った。

(2)拠点校の設置等による指導体制の構築

加配教員2名(基礎定数)を日本語指導教室に通級が困難な児童生徒の多い地区に配置し、訪問形式での日本語指導を実施した。40名の児童生徒に対して特別の教育課程を編成。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

1 DLAの実施と活用

日本語指導の申請をした児童生徒に対し、指導主事や加配教員によるDLAを実施した。測定の記録と担任との面接で日本語力を把握し、担任や関係職員と今後の指導について協議した。

2 DLAの周知

DLA実施校について、内容の説明や活用の仕方について説明をした。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

「日本語指導担当者会」「教育課程説明会」などにおいて「特別の教育課程」の周知を図った。また、外国人児童生徒支援加配教員により「特別の教育課程」を実践した。

(5)学力保障・進路指導

日本語指導教室での学習指導では、連絡カードや電話連絡等で学校と学習面や生活面に関する情報共有を行い、指導に生かした。国際交流協会との共催で行った高校進学ガイダンスでは、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語の通訳を交えて、日本の受験システムや受験までの日程、心構え、受験料や入学料等の具体的な説明をした。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語がわかる支援員の派遣

要請のあった学校に訪問指導員を派遣し、日本語初期、初級の当該児童生徒に対し、10~15時間程度の取り出し指導を行った。児童45名、生徒15名が指導を受けた。
また、要請のあった学校に学生ボランティアを派遣し、学習や学校生活の支援を行った。静岡大学のNPO法人「ONES」と連携をしている。

(12)成果の普及

日本語指導担当者会、指導員連絡協議会における成果と課題の報告、日本語指導教室の月末ミーティングにおける報告、通級実施報告書、連絡カードにおける個別支援の成果を報告、担任参観会での日本語指導員と担任の連絡協議を行った。

(13)その他

要請のあった学校に適応相談員を派遣し、日本語が話せない児童生徒とその保護者に対し、日本の生活に適応するために児童生徒やその保護者の母語で相談を行う。
ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、中国語、ベトナム語、ウルドゥー語において実施した。
(小学校9件、中学校17件)
 

3.成果と課題

(1) 運営協議会・連絡協議会の実施

<成果>

訪問指導員、教室指導員が集まり、児童生徒に関する情報交換を行ったり、指導法について協議したりすることで、意識の向上や今後の指導の重点確認を行うことができた。
また、日本語指導担当者会を悉皆とすることで、日本語指導が必要な子どもについて一定の周知を図ることができた。

<課題>

学校は、日本語指導が必要な子に対して組織的に対応する必要がある。また、本市は散在型の地域であり、外国にルーツを持つ児童生徒を受け持ったことのある教員が少ないため、実践が積み重ねられていないことと教員の意識が低いことが課題である。

(2) 拠点校の設置等による指導体制の構築

<成果>

今まで、特別の教育課程について学校が十分理解できていなかったところもあったが、実際に実施して、加配教員の支援を受けている学校では、その有効性や必要性について理解する教員が増えた。訪問指導員による指導では予算上年間最大で15時間程度しか指導できないが、加配教員による指導は年間を通じて実施することができたので、児童生徒の日本語能力が向上した。

<課題>

教員と指導員の数から日本語指導を必要としている児童生徒に十分対応できていない現状にある。指導員と外国人児童生徒支援加配教員の指導体制について明確な棲み分けができなかった。また、特別支援が必要な子で尚且つ日本語指導が必要な子の場合、見極めが重要である。指導の充実に向けては、学校教育課を中心として、外国人児童生徒支援加配教員と連携して研修をいかに深めていくかが課題である。

(3) 日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

<成果>

次年度には、日本語指導を希望している子どもにDLAを行い、その結果をもとに担任や担当者と今後の指導について協議では、児童の日本語の力が数値で表されたこと、どこに課題があるかが明確になったことで、今後の指導の方向性について考えることができた。また、進級・進学に対する資料としても使用することができ、どのような指導が必要か見えてきた。

<課題>

本年度からDLAを始めたため、DLAについて知らない教員も多く、実際に活用までには至っていない。今後活用方法について周知していく必要がある。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

<成果>

外国人児童生徒支援加配教員がDLAを実施し、担任と加配教員の間で「特別の教育課程」の進捗状況について頻繁に連絡を取り合い、目標実現に向けて充実した指導ができた。

<課題>

一番の課題は加配教員が少ないということである。現状では、実際に多くの学校で取り組むことは難しい。それゆえ教員間に理解が進んでいないことも課題である。本市は少数散在型であり、日本語指導に関わってない学校、教員も多いため、当事者意識が不足している状況が見られる。

(5)学力保障・進路指導

<成果>

担任と日本語指導員が連絡を取り合うことで、同じ方向を向いて指導を行い、当該児童生徒の日本語力や学力の向上を図ることができた。高校進学ガイダンスでは、保護者の母語の通訳をできる限り同席させたことで日本の入試制度に対する理解を深めることができた。

<課題>

日本語指導教室では、日本語に課題が見られるだけでなく、落ち着いて学習に取り組ない子も増えてきている。より多くの目で見られるような手厚い支援体制を整えていく必要がある。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語がわかる支援員の派遣

<成果>

訪問指導員を派遣することにより、特に初期段階での日本語の力が伸びた児童生徒が多い。また、学校に出向いての指導となるため、担任や教頭と密に連絡をとることができ、指導内容の改善や連携した個別指導に結び付けることもできた。

<課題>

訪問指導の要望は多いが、予算の関係から、一人に対し、10~15時間しか行うことができていない。学校からの継続依頼もあるため、訪問指導の充実は大きな課題である。

(12)成果の普及

<成果>

指導者間(指導員と教員)、教育委員会と指導員とがの頻繁に連絡を取り合い、連携を図ることで、子どもたちの実態を把握し、支援が充実した。

<課題>

少数散在型の地域であるため、教員の日本語指導に対する意識が高まっているとは言えない。そのため、教員と指導員が子どもの表れを報告し合い連携を図る中で、指導員が主導で支援が行われることが多い。

(13)その他

<成果>

日本の教育や学校制度について、外国人の保護者が理解していないことが多くあり、言語の問題だけでなく違いを説明することが難しいが、ベテランの相談員により保護者側と学校側の双方の考えを上手に伝えることができた。

<課題>

今年度は順調に本事業を進めることができた。相談の業務に関しては次年度以降も継続的に行いたい。

表

4.その他(今後の取組予定等)

来年度は加配教員を1名増員し、静岡市の各区で同水準の教育が行われるような体制作りを行う。また、日本語の初期指導に力を入れ、実態を把握しながら指導をしていく。さらに、教員、指導員に対する研修を行い、日本語指導に対する周知を図っていく。

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