平成31年度「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(出雲市)

平成31年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

事業の実施体制

2.具体の取組内容 

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

○市日本語指導検討委員会(3回開催)
・内容 日本語初期集中指導教室の成果と課題、日本語指導拠点校方式の成果と課題等の協議

○市日本語指導検討委員会専門部会(4回開催)
・内容 初期指導Ⅰ・Ⅱのカリキュラムの目標、授業内容、活用教材等の協議

(2)拠点校の設置等による指導体制の構築 (必須実施項目)

○今年度から、日本語指導が必要な児童生徒が多く在籍する小学校3校と中学校3校を日本語指導拠点校(以下「拠点校」という。)と位置付け、市日本語指導員(教員免許状所有者)、通訳翻訳支援員(ポルトガル語)、市日本語指導補助員(日本語・ポルトガル語が話せる、教員免許状は無)を集中的に配置した。

○来日または帰国後間もない児童生徒で初期からの日本語指導を必要とする者については、在籍校での学校生活をスタートさせるにあたり、20日間、初期集中指導教室へ通級させ、サバイバル日本語の習得及び学校生活に必要なルールやマナーについて指導した。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (必須実施項目)

○個別の指導計画を作成し、「特別の教育課程」による日本語指導を実施。(PDCAサイクル)
1 「特別の教育課程」の編成、指導実践(4月~9月)
2 個別の指導計画の見直し、必要に応じた修正(9月~2月)
3 達成目標の評価、次年度に向けた指導計画の見直し(2~3月)

○研修会の実施。
・出雲市日本語指導研修(年2回)

参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員等 計86名
内容 令和元年度外国人児童生徒等に対する日本語指導 指導者養成研修の伝達講習
  受け入れ体制、個別の指導計画の評価、コースデザインの作成等

 

(6) 日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

○日本語指導員(週 20~28時間×35週、小学校14名・中学校7名・初期教室2名)の配置・派遣。
・個別の指導計画に基づき取り出しの日本語指導、学習支援

○日本語指導補助員(ポルトガル語対応、週28時間×35週、小学校1校2名、初期教室1名)
・対象児童に対する生活場面(休憩時間、給食、掃除等の寄り添い支援)及び学習時の入り込み支援
・対象児童の保護者支援(電話連絡や来校時の通訳、連絡帳など簡単な内容の翻訳など)

○通訳・翻訳支援員(ポルトガル語対応、年間1581時間、拠点小・中学校に3名)
・対象児童生徒及び保護者との面談、学習場面等での通訳支援
・保護者宛て文書や各種書類、児童生徒への配布物や教材等の翻訳支援

(12)成果の普及 (必須実施項目)

○研修会等での実践事例、指導の成果の紹介
1 第1回 出雲市日本語指導研修

・参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員等 計41名
・発表校 日本語初期集中指導教室、塩冶小学校(拠点校)
・内容 各校の現状、指導体制、指導教材や方法等


2 島根県主催 小・中学校日本語指導が必要な児童生徒教育研修]

・参加者 日本語指導が必要な児童生徒在籍の小・中学校教職員1名必ず
  その他市日本語指導員等希望者 計47名
・発表校 斐川西中学校(拠点校)
・内容 中学校での日本語指導の実践について


○出雲市教育委員会学校教育課ホームページで、今年度の取組状況と成果を公表。(3月末)
1 帰国・外国籍児童生徒支援事業の取組

  • 日本語初期集中指導教室での初期指導
  • 拠点校での日本語指導体制の充実(日本語指導員の配置・派遣、通訳・翻訳支援員や日本語指導補助員による母語支援等)
  • 「特別の教育課程」の編成・実施
  • 教職員研修
  • キャリア教育

2 取組の成果と課題

(13)その他(キャリア教育の実施)

○拠点中学校でのキャリア教育の実施
1 ロールモデルに学ぶ(拠点中学校での実施)
内容 中学生で日本の学校に転入してから(夢を持って学ぶ)

2 シエンシア体験教室の実施
内容    冬の星座について~ストラップづくり~
参加者    日本語指導を受けている中学2年生の生徒17名(5校)
 

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

○成果

  • 日本語初期集中指導教室と拠点校との連携が図られた。
  • 毎年増えている転入外国籍児童生徒への初期指導のカリキュラムについて、具体的に作成することができた。

○課題

  • 近年、特に中学生年齢での転入生徒が増えており、中学生の進路保障が大きな課題である。

(2)拠点校の設置等による指導体制の構築 (必須実施項目)

○成果

  • 日本語初期集中指導教室を設置し、指導を行ったことで、日本での学校生活について児童生徒・保護者の不安を軽減させることができた。また、転入を受け入れる在籍校においても、転入までの期間に余裕があり、受け入れ準備に余裕をもつことができた。
  • 拠点校の指導体制を充実させたことで、転入後2年以内の初期・中期の日本語指導が必要な児童生徒への取り出し指導の充実が図れた。
  • 母語支援(通訳・翻訳支援員、日本語指導補助員の配置及び巡回)を、全ての拠点校で行うことができ、児童生徒への学習・生活支援や保護者との面談や説明など、意思の疎通を図ることができた。

○課題

  • 拠点校での初期・中期の日本語指導を充実させるために、市共通の指導カリキュラムが必要となる。
  • 拠点校以外校の日本語指導が必要な児童生徒の拠点校での通級指導。(保護者の送迎が課題)

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (必須実施項目)

○成果

  • 来日間もない児童生徒の初期指導や教科や単元、生徒の状況に応じた取り出し指導を充実させることができた。
  • 個々のレベルや目標に合わせた細やかな指導ができ、学習言語の習得が進んだ。
  • 指導計画をもとに担任と日本語指導員が共通理解を図ったことで、個別の目標の達成に向けて在籍学級と日本語教室が連携して指導に取り組むことができた。

○課題

  • 特別な教育課程の編成による取り出し授業が、各教科の学習の理解を深める素地となるためにも、日本語指導担当者と担任や教科指導教員との、個別の指導目標や課題、支援の方法などについて、一層の情報共有が必要である。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒等の母語が分かる支援員の派遣

○成果

  • 個別もしくは少人数グループでの指導を行い、日本語能力やコミュニケーション力の向上が見られた。また、児童生徒の苦手なところを重点的に指導することができた。
  • 日本語初期集中指導教室からの継続した指導により、在籍校での学校生活への不安が大幅に解消された。
  • 母語支援のおかげで、児童が安心して生活できている。特に初期指導対象児童へのサポートが効果的だった。

○課題

  • よりきめ細かな個に応じた指導を行うためには、校内指導体制の定期的な見直しが必要になる。
  • 教科の学習と日本語指導をつなぐ教育活動(母語支援あり)の重要性が指摘されているが、実践できる時間が限られている。
  • 現在対応できるのは、ポルトガル語のみ。人数は少ないが他言語のニーズもある。

(12)成果の普及 (必須実施項目)

○成果

  • 研修を通して、初期日本語指導のポイントをつかむことができ、日本語指導と教科学習の統合の重要性についても学ぶことができた。
  • 日本語初期集中指導教室や拠点校の実践の実践発表を通して、多くの参加者が具体的な指導方法についてイメージを持つことができた。また、実際に使用している教材等についても情報交換することができた。
  • 日本語ステージについて、日本語指導を受けている児童生徒の約44%が向上した。また、日本語指導歴2年以内の初期、中期指導対象児童生徒の約50%が向上した。

○課題

  • 小学校高学年や中学校では学習内容が難しくなることで、日本語ステージの向上が難しくなる傾向にある。

(13)その他(キャリア教育の実施)

○成果

  • キャリア教育を通して、「日本語を積極的に使うことが大切」「目標に向かって今の勉強を一生懸命する」「他校の日本語指導を受けている人と話ができ、うれしかった」等、今後の学校生活や日本語習得に対して意欲が向上した生徒が見られた。

○課題

  • 夢や希望を抱いて日本で生活していくために、中学生からではなく小学生段階からのキャリア教育も必要だと感じた。

表

4.その他(今後の取組予定等)

  • 今年度作成した初期日本語指導カリキュラムの周知と実施。
  • 日本語指導検討委員会専門部会での中期日本語指導カリキュラムの作成。
  • 保護者・関連会社への拠点校指導の周知の徹底や就学に向けての幼児の状況把握を保育所・幼稚園と連携して行う。
  • 拠点校における日本語指導コーディネーターの役割の明確化を図り、市教育委員会との連携や校内での組織的指導をさらに進める。
  • 日本語ステージの低い児童生徒への母語支援だけでなく、ステージ中・上位にある児童生徒に対して、教科学習と日本語指導をつなぐ母語支援のある学習を計画的に行う。
  • 教科と関連した日本語指導の在り方や中学生への日本語指導の工夫等について、日本語指導研修を通じて指導力の向上を図る。
  • 進学や就職など将来の夢や希望をイメージしやすくするためにも、中学生だけでなく小学校高学年でのキャリア教育を実施する。

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