平成31年度「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(松阪市)

平成31年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

(1)運営協議会(年2回)

(大学、松阪国際交流協会、松阪市観光交流課、センター校、県教委、市教委)

(2)連絡協議会

  • 外国人児童生徒教育プロジェクト会議(年3回)

      (大学、センター校担当者、母語スタッフ、「いっぽ」教室担当者、市教委)

  • 外国人児童生徒教育ネットワーク会議(年3回)

      (市内小中学校外国人児童生徒教育担当者、市教委)

  • 外国人児童生徒教育担当者会議(年7回)

      (センター校担当者、母語スタッフ、市教委)
 

2.具体の取組内容 

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

○運営協議会

事業説明、各校の実情を交流し、本年度重点的に取り組みたいことを明確にした。総括では、事業の経過報告、本年度の成果と課題を検討し、次年度の方向性について協議した。

○プロジェクト会議

センター校の「国際教室経営方針」「外国人児童生徒教育推進のための学校行動計画」についての交流を通して、多文化共生の教育の取組、「特別な教育課程」による「個別の指導計画」を立てての日本語指導、教科指導の取組について協議した。

○ネットワーク会議

全小中学校の外国人児童生徒教育担当者を対象に、日本語指導法講座、大学の教授を講師に迎えての研修会、外国人児童生徒の受入についてのグループワークを行った。

○担当者会議

「国際教室と在籍学級の連携について」「入り込み授業での効果的な支援」などテーマを設定して、各校の実践交流を行った。国際教室、教科学習においての教材、教具の交流を行った。アイデンティティの確立の取組について交流した。

(2)拠点校の配置等による指導体制の構築

初期適応支援教室「いっぽ」を設置し、初期的な日本語指導、文字学習を集中して行う。 「いっぽ」教室指導員、学校、母語スタッフ(通訳)が連携し、適応支援を行う。
センター校8校を設置し、JSLカリキュラムに基づく公開授業、研究協議、多文化共生の教育を実施し、外国人児童生徒受入体制の充実を図る。また、外国人児童生徒教育推進のための学校行動計画、国際教室経営方針を作成し、指導体制の構築を図る。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の充実

日本語指導が必要な児童生徒について、個票の作成、個別の指導計画を立て、実践に取り組んだ。担当者会議、プロジェクト会議で、特別な教育課程による日本語指導の各校の実践、国際教室と在籍学級との連携の仕方など交流し合った。

(5)学力保障・進路保障

「JSLカリキュラムに基づく分かりやすい授業づくり」の公開授業(2校)を行った。外国人の子どもの就学状況調査を行い不就学であった児童生徒を小中学校につなげた。進路保障の取組として日本語指導が必要な生徒に関する松阪地区中高関係者情報交流会を実施した。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

「いっぽ」教室、就学前支援教室「ふたば」(以下、「ふたば」教室とする)に日本語指導員を配置し、日本語指導の充実を図った。「いっぽ」教室、「ふたば」教室、日本語指導が必要な外国人児童生徒が在籍する小中学校に母語スタッフを派遣し、児童生徒の学習支援や適応支援、翻訳、保護者との連絡等において支援を行った。進路ガイダンス、各高等学校が主催する高校生活入門講座等に母語スタッフを派遣し、進路指導面での支援を行った。

(7)小学校入学前の幼児や保護者を対象としたプレスクール

来年度小学校へ入学する外国人幼児を対象に、日本語の学習支援、小学校生活の規律等の適応支援
を行った。また、保護者には、日本で小学校生活を送るために必要な情報を提供した。

(12)成果の普及

ネットワーク会議で、センター校8校の担当者が中心となり、日本語の読み書きが全くできない児童生徒が転入してきた時、担任、外国人児童生徒教育担当、学校全体としてどのような支援ができるかを話し合った。グループワーク形態にし、それぞれのグループでセンター校の取組を紹介し、その後全体交流を行った。

(13)その他

「ぼくとわたしのフォトストーリーづくり」(愛知淑徳大学准教授、大学生との連携)、多文化理解の授業(三重大学国際交流チーム、留学生と連携)、日本語指導法連続講座(いっぽ教室ボランティア、各小中学校教職員対象)を実施した。
 

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

<成果>

ネットワーク会議では、外国からの転入生受入の際に担任として、担当として、学校全体としてできることを様々な角度から話し合い、全小中学校で共通理解を図ることができた。プロジェクト会議では、「フォトストーリー等の取組を全校の多文化共生教育にどのようにつなげていくのか」というテーマで各校の取組を話し合った。その後、大学准教授より、指導・助言をいただき、多文化共生教育を進めていくうえで大切なポイントを確認し合うことができた。

<課題>

若手教員の増加、担当者の異動による入れ替わり等で、外国人児童生徒教育において豊富な経験をもった教員が増えていかない現状がある。今まで蓄積された外国人児童生徒教育の取組を継続し、さらに各校での取組を充実させていけるような教員の育成、各校の外国人受入体制の充実を目指し、会議の内容を考える必要がある。

(2)拠点校の配置等による指導体制の構築 (必須実施項目)

<成果>

「いっぽ」教室コーディネーターを中心に日本語指導員が連携し、教材、教具の工夫等、環境整備を進めることができた。一人ひとりの学習進度にあわせて教材を選び、個に応じた指導を行うことができた。母語スタッフを充実させることで、日本語指導や教科学習等の学習面での支援、不登校や児童生徒どうしのトラブル等生徒指導面での支援、けが等の健康安全面での支援、さらに高校進学や進路相談における保護者への通訳での支援等、様々な支援を充実させることができた。また、家庭訪問、懇談、学校からの通訳等を通して、学校と家庭の連携を図ることができた。多文化共生の教育を推進していくことで、外国籍、日本国籍の児童生徒、ともに学校生活を送る仲間として、自然な関わりが持てている。

<課題>

今年度は、後期に、外国人児童生徒の市内小中学校への転入が多かったため、「いっぽ」教室において個別指導の体制が維持できなくなっている。また、後期に転学してくる中学3年生への進路 保障などが課題である。「いっぽ」教室の指導体制、「いっぽ」教室、学校との連携について検討していく必要がある。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の充実

<成果>

個票を作成することで、日本語指導が必要な児童生徒一人ひとりの家庭環境、日本語の習得状況をふまえた指導計画をたてることができ、効果的な指導を行うことができた。日本語の習得状況によって取り出し授業を行い、在籍学級の授業と並行して、教科の先行学習や補充学習を行うことで、学習内容の定着や学習意欲の向上がみられた。

<課題>

母国での学習環境や来日期間が児童生徒によって様々であるため、日本語習得状況に合わせた教材を作成し、指導の充実をはかる。市内には日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍し、特別な教育課程を編成し、きめ細かな指導を十分行えない状況がある。学校全体で連携していく必要がある。

(5)学力保障・進路保障

<成果>

JSL公開授業をセンター2校で行った。大学准教授の指導を受け、日本語の目標、目標を達成するための手立て、視覚支援、ワークシートの工夫など学ぶことができた。不就学状況にあった児童生徒に対し、家庭訪問を繰り返し、学校生活への不安を取り除きながら、就学の重要性を説明していった。その結果、2名の児童生徒を小中学校に就学させることができた。初期的な日本語指導、適応支援をと学校といっぽ教室で連携しながら行うことで、安心して学習に取り組むことができている。

<課題>

センター校各校でのJSL授業研究の実践を交流し合ったり、他の市町での実践を紹介したりして指導力の向上をはかる。中学校・高等学校での生徒の学習状況や日本語指導、教科指導の具体的な取組について情報共有を図ることで、学力向上や進路保障につなげていく。

(6)日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

<成果>

できる限り校区や学校ごとに母語スタッフを配置することで、母語スタッフ、児童生徒、保護者がつながり、きめ細かい支援を行うことができた。進路ガイダンスでは、母語ごとにグループになり、対応する言語の通訳支援を行った。参加生徒や保護者にとって、疑問に思ったことをその場で聞くことができ、入試制度、進路に向けて取り組むべきことの理解が深まった。希望する高校生活入門講座等(2校)へ母語スタッフを派遣し、9人の児童生徒の通訳支援をすることができた。高等学校の説明を直接聞くことで、進路に向けて意識が高まった。

<課題>

急な家庭訪問、保護者からの相談の対応、翻訳、文化祭、運動会等の学校行事での通訳等、勤務時間外に母語スタッフが必要となるケースが多くなっている。学校の実情を考慮し、本当に母語スタッフによる支援が必要な時を見極め、効果的な母語スタッフの配置を考えていく必要がある。

(7)小学校入学前の幼児や保護者を対象としたプレスクール

<成果>

小学校生活を想定した体験活動を多く取り入れることで、子どもたちは楽しみながら日本の学校の文化を学ぶことができ、小学校入学を楽しみにしている様子が見られた。参加保護者へ、子どもの生活状況や入学予定の学校への願いを聞き取り、個々の調査票を作成することができた。小中学校で作成する個別の指導計画(個票)の形式を参考にし、ふたばでの学習状況を小学校に引き継いでいきたい。

<課題>

ふたば教室のカリキュラムや指導方法について、さらに検討し内容の充実をはかる。市内の小学校に来年度就学する外国籍幼児32人のうち、18人がふたば教室で学んでいる。さらに周知を図っていく。

(12)成果の普及(必須実施項目)

<成果>

外国人児童生徒・保護者の困り感から、対応策を考えることで、課題意識をもってグループワークに取り組むことができた。学校生活への不安解消の手立て、日本語指導、仲間づくり、教材・教具のアイデア、初期適応支援教室「いっぽ」との連携、、地域とのつながりをつくるための取組などセンター校の取組紹介を中心に話し合いを深めることができた。市内小中学校での外国人受入体制について共通理解を図ることができた。

<課題>

外国人児童生徒教育の取組を、ネットワーク会議の場だけでなく、ホームページや通信等で市内 小中学校に広めていき、外国人受入体制の充実をはかる。

(13)その他

<成果>

フォトストーリーづくりでは、生い立ちや夢、家族への思いを映像にまとめることができた。大学生との対話を通して、自分の気持ちに向き合い、家族への感謝の気持ち、将来への希望をもつことができた。発表会では、保護者、在籍校の先生など、50人以上の参観があった。留学生から、それぞれの国について、生活習慣や学校生活、遊びなどの話があり、多文化に触れる機会が持てた。外国の文化に興味や親しみを持ち、学級に在籍する仲間の思いを共有することができた。日本語指導法講座では、教科学習において、外国の子どもたちが言葉の理解でつまづくポイントを知り、やさしい日本語に言い換えるこつを学ぶことができた。

<課題>

フォトストーリー等の取組がイベントで終わるのではなく、各校の多文化理解の教育へ広げていく取組を考えていきたい。日本語指導法講座では、内容を吟味し、外国人児童生徒教育に関わる教職員の参加を増やしていきたい。

表

4.その他(今後の取組予定等)

  • 子どもたち、それぞれの学習の実態に合わせた教材、教具作りに年間を通して取り組む。
  • センター校での取組の深まりと他校への広がりをめざして、さらに取組を進める。
  • 個々の学びに応じた「特別の教育課程」の体制づくりを進める。また、個々の学びを引き継ぐため指導カルテ(個票・指導計画)等を活用し、小学校・中学校・高等学校との連携をさらに進める。
     

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