平成31年度「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(静岡県)

平成31年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

           会議名: 「帰国・外国人児童生徒等教育連絡協議会」
  構成員: 外国人児童生徒が在籍する市町の教育委員会担当指導主事等
政令市教育委員会担当指導主事等、外国人児童生徒スーパーバイザー・相談員等
教育事務所地域支援課担当指導主事等、義務教育課担当
県多文化共生課担当、県国際交流協会担当
  運営体制: 県多文化共生課、県国際交流協会との連携により、市町多文化共生担当も参加する終日の会議とする。
  内容: 行政説明、事業報告、事例発表等

 

2.具体の取組内容 

①運営協議会・連絡協議会の実施

(運営体制)
県多文化共生課、県国際交流協会との連携により、市町多文化共生担当も参加する終日の会議とする。
(内容)
事例紹介に対する助言(講師:文部科学省外国人児童生徒教育専門官 林 健悟氏)、行政説明、事業報告、事例発表等

②拠点校の設置等による指導体制の構築

外国人児童生徒支援加配教員(基礎定数分含む、以下同じ)は、原則として教諭をあて、外国人児童生徒支援加配教員が配置された学校を「拠点校(小37校・中11校)」と位置付け、各教育事務所に配置している「日本語指導コーディネーター」が「拠点校」を訪問し、「特別の教育課程の編成・実施」について、実態把握をするともに、助言を行った。加配教員のほか、学び方非常勤講師(日本語指導)を11人配置し、学び方非常勤講師のいる学校には派遣要請に応じて日本語指導コーディネーターが出向き、
「拠点校」での取組及び成果をもとに、指導体制構築のための助言を行った。

④「特別の教育課程」による日本語指導の実施

文部科学省の「外国人児童生徒等の教育を担う教育の養成・研修プログラム」を活用し、県教育委員会が各市町に開催希望を募って「日本語指導が必要な児童生徒支援研修会」と題した研修会を13市町で開催した。特別の教育課程に関する内容を中心とした研修会では、日本語指導コーディネーターが講師となり、加配教員や外国人児童生徒等担当教員、支援員等、64人が参加した。
また、特別の教育課程の編成・実施等について指導助言をするために、市町教育委員会・学校の要請に応じて日本語指導コーディネーターを派遣した。

⑥日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

(外国人児童生徒相談員)
  • ポルトガル語 4人、スペイン語 3人、中国語 5人、フィリピノ語 4人、ベトナム語 2人 (うち4人は、教員免許状保持者)
  • 外国人及び日本国籍を有するが日本語指導が必要な児童生徒の学校生活への適応(外国人保護者の日本の学校生活への理解が児童生徒の適応にも深く関わるため、保護者への通訳支援も含む)や学習内容の理解を支援するために、上記の言語及び人数の相談員・SVを任用し、市町教育委員会・学校の要請に応じて派遣した。

相談員及びSVの訪問回数:小学校536回 中学校257回 特別支援学校176回 合計969回

(日本語指導コーディネーター)
  • 2教育事務所に各2人、合計4人(平成29年度からの任用、今年度2人増員)
  • 特別の教育課程の編成・実施等について指導助言をするために任用し、市町教育委員会・学校の要請に応じて派遣した。

日本語指導コーディネーターの訪問回数:小学校130回 中学校136回 その他48回 合計314回

⑧共生社会における共に学び成長する授業の在り方に関する調査研究の実施

「取り出し指導での学習の成果を在籍学級でどう生かし学ぶことができるか」について、加配教員だけでなく、学級担任等も対象とした研修会を行ったり、日本語指導コーディネーターが学校訪問をした際に、学級担任と日本語指導担当教員との連携の方法等の実態把握をし、改善点等について指導を行ったりした。
また、日本語指導コーディネーターが高校視察を実施し、日本語指導が必要な生徒が在籍する学校の実態を知ることで、小・中学校での指導につなげていくことができた。見えてきた成果と課題を、10月に行った連絡協議会において広く情報を共有することができた。

⑩ICTを活用した教育・支援

日本語指導コーディネーターが学校訪問の際、タブレット端末を持参するようにした。タブレット端末を利用し、無料アプリ(日本語学習、教科学習に活用可能)を活用し、日本語指導担当教員との打合せ時間にアプリ紹介したり、日本語指導コーディネーターや担当教員が実際に授業場面で活用したりした。

⑪高校生等に対する包括的な教育・支援

日本語コーディネーターによる日本語学習講座・個別支援により日本語の修得を目指すとともに、キャリアコンサルティング技能士によるキャリア支援を行うことで、外国人生徒の日本での自立支援を行い、かつ地域経済の担い手となる外国人人材の育成を目指す。

⑫成果の普及

静岡県教育委員会教育広報紙 Eジャーナルへの記事掲載
静岡県教育委員会義務教育課Webページへの事業成果等の記事を掲載

3.成果と課題

①運営協議会・連絡協議会の実施

◆成果

県多文化共生課や国際交流協会と連携し、市町首長部局の多文化共生担当課等の担当職員との「合同ネットワーク会議」とした。市町教育委員会担当と市町多文化共生担当が一堂に会する会議となり、一層の連携推進を図ることができた。

◆課題

会議への参加数は、昨年度より増えて合計58人という成果であったが、日程調整が難しいとのことで担当が参加できない市町もあった。そのため、会議日については、年度当初に連絡し、より多くの担当が集まることができるようにする。また、今後の状況を見据え、現時点で外国人児童生徒等が在籍していない学校を所管する各市町教育委員会の担当指導主事にも参加を促す。

②拠点校の設置等による指導体制の構築

◆成果

「日本語指導コーディネーターの支援が役に立った」というアンケート結果が100%だったことから、日本語指導コーディネーターの支援は学校にとって有効であったことが分かる。加配教員がいない中でも一歩進んだ取り組みができるようになった学校が増え、特別の教育課程で指導を受けた児童生徒数も大きく増加した。

◆課題

少数在籍学校への訪問だけでなく、加配教員のいる拠点校にも訪問している。これは、新任の加配教員が多く、日本語指導についてのノウハウや知識・経験がほとんどないためである。次年度以降は、さらに多くの派遣要請を受けて訪問できるよう、「日本語指導コーディネーター」の派遣について周知し、4人の日本語指導コーディネーターの派遣を充実させていく。

④「特別の教育課程」による日本語指導の実施

◆成果

研修会等への参加により理解が深まり、特別の教育課程編成に着手する学校が増えている。学校へ訪問し、直接アドバイスをする日本語指導コーディネーターの存在は大きい。

◆課題

昨年度は、県内33市町のうち6市町の開催であったが、今年度は13市町での開催となり、大幅に増加した。新たな市町でも開催できるよう、市町に働き掛け、継続して実施していく予定である。

⑥日本語指導ができる、又は児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

◆成果

「相談員及びSV、日本語指導コーディネーターの等の支援が役に立った」というアンケート結果が98%以上だったことから、相談員及びスーパーバイザー、日本語指導コーディネーターの支援は学校や子供たちにとって有効であったことがわかる。

◆課題

日本語指導が必要な児童生徒が「学校が楽しい」と感じるためには、相談員等の支援だけでなく、クラスの友達との関係、学級担任や外国人児童生徒担当教員との連携、保護者の理解等、様々な要因がバランスよくかみ合うことが大切である。
今後も、日本語指導コーディネーターが日本語による指導方法等を広めることにより、バイリンガル支援員を発掘することが難しい市町教育委員会等における、日本人支援員等の任用が進んでいくと考えられる。

⑧共生社会における共に学び成長する授業の在り方に関する調査研究の実施

◆成果

日本語指導の加配教員や外国人児童生徒担当教員だけでなく、学級担任等も参加する研修会を行ったことにより、それぞれの立場でできる支援の方法や役割を知り、校内での支援体制の構築を図ることができた。
また、日本語指導が必要な生徒が在籍する高等学校の実態を知ることで、「中学校卒業までに日本語の力をいかにつけるかについて」や「小・中学校でのキャリア教育について」など、小中高の連携の必要性を改めて実感し、小・中学校での指導に生かしていく視点を得ることができた。

◆課題

加配教員、外国人児童生徒担当だけでなく校内での支援体制の構築を図るため、在籍学級で行う日本語指導を意識した教科指導について研修を、引き続き進めていく必要がある。
昨年度に引き続き全日制、定時制の高等学校を4校視察したが、そこから見えてきた課題について、小・中学校の指導に生かしていくとともに、高校教育課とも連携し、高等学校の外国人教育の充実につなげていく必要があると考える。

⑩ICTを活用した教育・支援

◆成果
  • ICTを活用したいが、どのような活用方法があるか分からない教員が多かったため、日本語指導コーディネーターによるICT(タブレット)を活用したアプリの紹介は大変有効だった。
  • アプリの視覚教材を活用することで、児童生徒が意欲的に学習に取り組み、理解も進んだ。
  • 教材や写真等、その場で画面を見せながら紹介できるので、教員も理解しやすかった。
◆課題
  • 学校によりICT環境や設備が異なるため、各学校の状況に合わせたICT活用の支援が必要となる。
  • 今後、研修会や学校訪問時にますます使用頻度が増すと思われるため、さらに効果的で有効な活用方法を模索し、今後も支援、助言に生かしていきたい。

⑪高校生等に対する包括的な教育・支援

◆成果

授業における学習理解の向上がみられるのと同時に、日本語で自分の考えや思いを考え、伝える機会が楽しいと感じる生徒が出てきた。また、将来日本の企業での就職を見据えて、日本語能力試験を受験しようとする積極的な態度がみられるようになり、自分の特性と進路を繋げて考えることができるようになった。

◆課題

日本語の理解力に差があるため、集団より個別での支援で対応するほうがよい場合があり、生徒の実態や集団の大きさ・様子に応じて支援の形態を臨機応変に変えていく必要がある。また、キャリア支援において日本語で支援をしても内容の理解ができないこともあり、早い段階での日本語習得を目指す必要がある.

⑫成果の普及

◆成果

本県の状況及び事業について、広く取組が周知された。

◆課題

今後も継続的に記事の掲載を行い、本県の外国人児童生徒等の状況や事業について周知していく。

 

表

4.その他(今後の取組予定等)

来年度も、日本語指導コーディネーターが講師となり、12市町で教員等の資質向上を図る研修会を実施する。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035