平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(豊田市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

(1)外国人児童生徒教育

 豊田市教育委員会学校教育課 担当指導主事
 学校日本語指導員50人

  • ことばの教室(初期日本語指導教室)指導員7人
  • 集住校常駐指導員 11人
  • 学校巡回指導員 30人
  • 外国人児童生徒サポートセンター指導員 2人
(2)豊田市教育国際化推進連絡協議会

 教育長、企業代表3人、高等学校長2人、小中学校長7人、園代表1人、保育課長、国際まちづくり推進課長、国際交流協会理事長、学校教育部(事務局)5人

(3)連携団体

 NPO法人2団体、愛知教育大学リソースルーム

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

 豊田市の教育国際化を推進するため、帰国児童生徒及び外国人児童生徒の個に応じた特色ある教育活動のあり方等について「豊田市教育国際化推進連絡協議会」を開催し、指導研究を進めた。
 年に1回の理事会で、6つの専門委員会(調査・相談・指導研究・情報・国際理解・研修)の事業計画を審議し、重点取組について協議、確認した。理事会での決定を受け、6つの専門委員会がそれぞれの重点取組に従って活動を行った。

(2)拠点校等の設置や拠点的機能を備えた体制の整備

 外国人児童生徒の編入の著しい増加や多言語化、散在化に伴い、市内の外国人児童生徒教育の拠点として、「外国人児童生徒サポートセンター」を西保見小学校内に開設している。サポートセンターでは、各学校からの学習指導に対する相談や学校生活適応相談に応じたり、教材の提供を行ったりした。日本語能力測定(DLA)の実施支援等も行った。また、各校から依頼された翻訳や通訳派遣等を行った。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

 活用についての周知や実際の方法等について、3回の研修会を行った。実施する際には、外国人児童生徒サポートセンター指導員や母語の分かる指導員を学校へ派遣し、学校が測定を指導に効果的に生かすことができるよう連携して取り組んだ。
 また、集住地区校では、DLAの研究者を招聘し、測定結果を指導に生かすための実践研究に取り組み始めている。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 昨年度の反省をふまえ、個別指導計画シートを修正した。日本語教育適応学級担当教員研修会において、「特別の教育課程」の意義や個別の指導計画必要性について説明を行った。また、外国人児童生徒指導者研修会において、個別指導計画作成についての支援を行った。愛知教育大学リソースルームとの連携により「学習目標例」の一覧を年度末に作成した。この一覧は平成30年度から活用を予定している。

(5)日本語指導ができる支援員の派遣

 市内3か所に設置している初期日本語指導教室(ことばの教室)に、日本語指導ができる支援員(学校日本語指導員)を8人配置している。来日して間もない外国人児童生徒や外国人学校から公立小中学校へ編入した児童生徒に対して、日本語指導及び学校生活適応指導を実施した。また、ことばの教室へ通うことができない児童生徒については、巡回で日本語指導ができる支援員を学校に配置した。

(6)児童生徒の母語かわかる支援員の派遣

 日本語が十分理解できない児童生徒が在籍する学校に対して、母語のわかる支援員(学校日本語指導員)を常駐または巡回で派遣し、学校生活適応支援や日本語の支援、学習支援等を行った。また、保護者への便り等の翻訳や各種説明会、個別懇談会等の通訳を行った。

(7)学力保障・進路指導

 「外国人児童生徒保護者教育説明会」を開催し、進路についての情報提供を行った。高等学校での外国人生徒の様子や進路選択について、高等学校の教員や中学校の進路指導主事を招いて講演を行い、周知を図った。また、奨学金制度や就職情報等についての文書を翻訳して配布した。

(8)プレスクール事業

 次年度小学校入学予定の外国人幼児に、簡単な日本語と学校生活のルールを学ばせ、入学後の学校生活をスムーズに送れるようにするため、NPO法人トルシーダに委託して、プレスクール事業を25回実施した。

(9)成果の普及

 専門委員会の実践の概要や成果を市のウェブサイトに公表した。また、各委員会の実践をまとめた活動報告集を作成し、関係機関へ配布した。

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

 関係諸団体が集まる機会をもつことにより、帰国・外国人児童生徒教育に対し、理解と協力を得ることができ、各専門員会の活動を効果的に実施することができた。
 編入の急増等、状況の変化に応じて委員会の活動内容を検討していく必要がある。

(2)拠点校等の設置や拠点的機能を備えた体制の整備

 外国人児童生徒サポートセンターを拠点とすることで、急増する外国人児童生徒への編入に対応した学習相談や教材提供を充実して行うことができた。全市にかかわる翻訳を一括して行う等、データ整理をしたことで、翻訳の効率化が図れ、その分児童生徒への支援を充実して行うことができた。
 多国籍に対応できる通訳体制等を整えていく必要がある。また、学校や保護者のニーズに合った個別の相談に対応できる指導員の育成が必要である。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

 日本語能力測定を行うことで、児童生徒の日本語理解の状況や伸びが分かり、個別指導計画を立てる際、適切な目標設定を行うことができ、効果的な指導につながった。また、複数の担当者で評価することで、児童生徒を多面的に見ることができ、理解や支援につながった。
 集住地区校での実践研究を始めたので、今後、他校へ成果を広めていく。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 個別指導計画シートを見直し、カルテ例を提示したり、研修で作成支援を行ったりしたことで、各校で実施の意識が高まった。また、愛知教育大学と連携し、学習目標例を一覧で示したリーフレットを作成したので、来年度の作成に活用していく。

(5)日本語指導ができる支援員の派遣

 児童生徒の状況に合わせて個別に初期日本語指導を行ったことで、児童生徒はおおむね学校生活に適応できた。日本語指導ができる指導員がカリキュラムに沿って教えることで、児童生徒が市内どの学校に在籍することになっても、日本語の基礎を系統的に学ぶことができている。
 編入の急増やことばの教室へ通えない児童生徒への対応等、状況に応じて指導できる体制を整える必要がある。

(6)児童生徒の母語かわかる支援員の派遣

 母語が分かる指導員が翻訳や通訳を行い、学校生活に関する情報を保護者に提供することで、保護者の理解が深まり、学校との信頼関係を築くことができた。また、学習支援や児童生徒の悩み相談等にも大きく貢献することができた。
 支援希望が多く、現状の人数では十分な対応が難しい。翻訳等をさらに効率化し、支援時間を生み出す工夫が必要である。

(7)学力保障・進路指導

 説明会を行うことで、適切な情報提供を行うことができ、進路についての不安が軽減した。また、必要な情報を翻訳して文書やリーフレットを作成し、配布することで、説明会に参加できなかった児童生徒へも適切に情報提供を行うことができた。
 説明会の開催を知らなかったという家庭があり、情報の周知方法を検討する必要がある。

(8)プレスクール事業

 実際に小学校の教室で体験活動を繰り返し行うことで、入学を楽しみに待つ気持ちが芽生えた。また、保護者への情報提供を行ったり、質問等に答えたりすることで、保護者の不安も軽減することができた。
 参加希望者が増えているため、開催場所を増やす等の検討が必要である。

(9)成果の普及

 市のウェブサイトに成果を発信することで、閲覧した他市町や研究者等から視察依頼があり連携が広がった。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 日本語教育適応学級担当教員や日本語指導員の力量向上のための効果的な研修会の実施
  • よりよい進路選択のための支援の充実
  • 日本語能力測定方法等を活用した実践研究の継続

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035