平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(福岡市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

【日本語指導担当教員配置校連絡会】
  • 教育委員会学校指導課長,担当主事,日本語指導担当配置校の校長,
  • 日本語指導担当教員(コーディネーター、拠点校指導教員、配置校指導教員)
【拠点校指導教員連絡会】
  • 教育員会指導主事、コーディネーター、拠点校指導教員
【外国人児童生徒等連携協議会】
  •  今年度は準備委員会として発足

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施
  • 日本語指導担当教員配置校連絡会の実施(4月・6月)
  • 拠点校指導教員連絡会(毎月1回開催)
  • 外国人児童生徒等連携協議会(発足に向けた準備委員会として開催)
(2)拠点校の設置や拠点的機能の整備
  • 日本語指導体制の整備
    • サポートセンター、拠点校、配置校の各機能及び担当者の明確化
  • コーディネーター、拠点校教員の役割の強化
    • 日本語指導が必要な児童生徒の編入・転入の面接時、コーディネーター及び各エリアの拠点校指導教員が同席し、在籍校の管理職、保護者に対する今後の指導方法に関する指導助言
    • 拠点校指導教員による通級・巡回指導の充実
    • コーディネーター、拠点校指導教員による在籍学級訪問
    • 拠点校指導教員による在籍学級担任連絡会の実施
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • コーディネーターによる面談時の日本語能力測定
    • サポートセンターコーディネーターが面談時に、DLA等の「日本語能力評価キット」を活用して、日本語能力を測定
    • 測定結果をもとに、在籍校の管理職、保護者等に対し、指導体制、指導内容等に関する指導助言の実施
  • 研修会における実践研究
    <教育センター主催の日本語指導担当教員研修会>
    • コーディネーターによる日本語能力測定方法等に関する概要の説明
    • 拠点校指導教員による日本語能力の測定、評価に関する具体的な実践の紹介
    <JSL日本語指導教育研究会(月1回日本語指導担当教員全員での研修会)>
    • 課題別研修会,DLAに関する実践研修等
    • アンケート等による測定方法の実態把握
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 特別の教育課程に関する説明会の実施
    • 市内全小中学校の教頭対象に、「特別の教育課程」における日本語指導の法的根拠、指導の実際、個別の指導計画の作成等について説明
    • 日本語指導担当教員配置校連絡会で対象校の校長、新規担当教員に説明
    • 中途採用日本語指導教諭への説明
  • 特別の教育課程に関する研修会の実施
    • 教育センター主催の日本語指導担当教員研修会における日本語指導授業公開・協議会
  • 特別の教育課程による日本語指導に向けた個別の日本語指導計画等の作成
(5)日本語指導ができる指導員の派遣
  • 申請のあった学校(福岡市立の小・中学校・特別支援学校(小・中学部))へ,教育委員会に登録のある日本語指導員を派遣。日本語指導員には,児童生徒の在籍校にて,日本語指導担当教員が作成した指導計画に基づく日本語指導の補助を実施。
  • 日本語指導員による指導上限時間は1人の児童生徒につき96時間で,指導員には指導時間1時間あたり2,700円(交通費込)の謝金を支払。
  • 日本語指導用の教材の貸与(教育委員会に教材を整備し,日本語指導員向けに貸与)
  • 日本語指導員向け研修会を1月24日に福岡市教育センターにて開催
  • 日本語指導員のJSL日本語指導教育研究会研修会への参加
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 公益財団法人福岡よかトピア国際交流財団と連携し,当財団の語学ボランティア制度を活用して,学校からの申請に基づき語学ボランティアを学校へ派遣。日本語の理解が難しい保護者と学校間の通訳を行った。
(8)少数在籍校(日本語指導担当教員未配置校)における指導体制の構築の支援
  • 指導主事、コーディネーターによる支援
    • 指導主事、コーディネーターによる学校訪問
    • 転入・編入時の面談、日本語能力の測定
    • 指導内容、方法の検討
  • 拠点校指導教員によるサポート
    • 個に応じた通級・巡回指導
    • 在籍校の指導支援体制づくりへの助言
    • 校内研修の実施
    • 「個別の指導計画」モデルの作成
    • 「日本語指導通信表」の作成
    • 拠点校指導教員による在籍学級担任への適応支援・学習指導への指導助言
    • エリア内の通級・巡回指導の在籍学級担任会の実施
    • エリア内の通級・巡回指導の保護者会の実施
  • 日本語指導員等の派遣
    • 学校からの申請に応じて、教育員会登録の有償ボランティアの派遣(教育委員会が報償費負担)
    • 通訳等の派遣
(9)成果の普及
  • 市政だよりを市内全家庭に配布
  • ウェブサイト等での公表
  • 研究紀要の作成
    • 『帰国・外国人児童生徒等のための日本語指導』平成29年度研究紀要
      (福岡市JSL日本語指導教育研究会 編)
  • リーフレット等の作成・配布

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施
  • 年度当初に第1回の会議の開催により,共通理解のもと,スタートを切ることができた。
  • 月一度の拠点校会議で細かな情報交換,迅速な対応ができた。
  • 大学等を含め,他の関係機関との連携を図る「外国人児童生徒等教育連携協議会」発足に向け,調整を行う。
(2)拠点校の設置や拠点的機能の整備
  • 体制整備に伴い,拠点校指導教員による通級・巡回指導が可能となり,日本語指導担当教員未配置校に在籍する児童生徒も,一定の質の担保が図れた指導を受けることができた。
  • 拠点校機能の整備が整い,エリアごとの指導・支援体制の充実が図れた。
  • 養護教育部会への支援,校内研修での研修会の実施等,日本語指導に限らず,外国人児童生徒等教育への充実に向けた取組の広がりにつながった。
  • 小学校拠点校で実施していた中学校の生徒への通級・巡回指導を,新年度中学校拠点校を新設し,校種に応じた指導の充実を図るようにする。
  • 次期拠点校指導教員等の指導的役割を担う教員の育成が必要である。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 転入・編入の面談時に,必ずコーディネーターによる日本語能力の測定を位置付けたことで,日本語能力の把握と評価の質をそろえることができた。
  • 日本語能力の測定に関する実践研修を実施したことで,指導者が測定の方法等を具体的に理解することができた。
  • 指導の記録に測定方法,測定の結果(評価)を記載する欄を設けたことで,次年度に向けた引き継ぎも具体的となった。
  • DLA等,日本語能力の測定に要する時間が必要である。指導計画作成の際に,測定の時期・時間を指導計画に含めておく必要がある。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 「個別の指導計画」の様式の変更により,「特別の教育課程」による指導がより明確になった。
  • 授業公開・協議会等を通して,実際の指導場面を基に指導の具体化が図れ,教員の指導力向上につながった。
  • 日本語指導担当教員による指導修了後,各在籍学校での継続指導につなぐ支援が必要である。
(5)日本語指導ができる指導員の派遣
  • 児童生徒の在籍校にて日本語指導員による日本語指導が受けられるため,個に応じた充実した初期指導を行うことができた。
  • 日本語指導員研修会を通して日本語指導員の知識習得・指導力の向上を図った。
  • 日本語指導担当教員との役割分担・それぞれの専門性を活かした指導につなぐことができた。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 入学式や進路説明会など,語学ボランティアを派遣することで,日本語の理解が難しい保護者と学校間のコミュニケーションが円滑に行えた。
  • 学校では多種類の言語の語学ボランティアの需要があるが,英語,中国語,韓国語以外の言語に対応できる人材はほとんどおらず,必要とする言語のボランティアが派遣できていない。
  • TV電話通訳を導入予定。
(8)少数在籍校(日本語指導担当教員未配置校)における指導体制の構築の支援
  • サポート校,拠点校,配置校の設置,指導体制の確立を図ったことにより,少数在籍校への支援・指導の充実が図れた。
  • 拠点校指導教員を中心に,エリア内の連携を図ることができた。
  • 各学校が,受け入れや在籍学級での指導を行うための手引き等の改訂が必要。
(9)成果の普及
  • 市政だよりやウェブサイト等での公開により,「子ども日本語サポートプロジェクト」に関して,県外や海外からの問い合わせも増え,転入編入の際の事前準備,確認ができるようになった。
  • 近隣の県市区町村からの問い合わせが増え,日本語指導の連携も図られるようになってきた。
  • 研究紀要の作成・全学校への配付により,日本語指導が必要な児童生徒が在籍していない学校にも支援・指導の実際について伝えることができた。
  • 海外や県外からの転入・編入の際に,「子ども日本語サポートプロジェクト」の概要が分かり,手続きの手順等がより分かりやすくするためのウェブサイトの内容を検討していく。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 中学校拠点校の新設外国人児童生徒等の就学・進学に向けた支援
  • 専門性をもつ教員の採用
  • 外国人児童生徒等の就学・進学に向けた支援
  • 多言語への対応に向けたTV電話通訳の導入

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035