平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(浜松市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

(1)運営協議会・連絡協議会の実施

 外国人児童生徒等教育に係りのある委員16人で構成し、年間3回(5月 8月 1月)開催した。

  • ア 自律した学習ができる子供を育てるための日本語指導の体制の在り方について意見交換を行った。
  • イ 増加しているフィリピンにつながる子供の状況とその対応について意見交換を行った。
  • ウ 毎年、教員の異動に伴い多くの学校で外国人児童生徒等の教育に携わる教員が変更するという状況がある。浜松市の外国人児童生徒等教育を確固たるものにするために、リーダー養成という観点から、研修についての意見交換を行った。
  • エ 子供たちに夢や希望を持たせるためのキャリア支援について意見交換を行った。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施 (必須実施項目)
  • ア 外国人児童生徒教育担当者と希望者を対象にDLA研修会を2回実施した。1回目は「子供の日本語能力の把握と校内体制作り」と題して、市内の小学校で外国人児童生徒教育を担当している加配教員に自校での実践を事例として提供してもらい、DLAで児童の日本語の能力をつかみ、支援にどのように生かすのか研修した。2回目は、県外から講師を招き、DLA「読む」について研修を行った。
  • イ 外国人児童生徒等が編入するときに、DLA「はじめの一歩」を行い、結果を学校と共有し指導に生かした。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (必須実施項目)
  • ア 4月には各学校より、実施計画の提出があり、2月末には報告書の提出を義務付けている。指導主事と外国人指導教科指導員とで対象となる学校のうち市内小中学校10校を訪問し、授業参観、個別の指導計画への指導・助言、校内研修での指導助言等を行った。
  • イ 「特別の教育課程」を編成し、実施するための研修会を2回行った。1回目は指導主事による「特別の教育課程と個別の指導計画について」、2回目は外部講師による「JSLカリキュラムの授業づくりについて」である。
(5)日本語指導ができる支援員の派遣
  • ア 指導補助者の配置を行った。小学校では、在籍学級の学習進度に合わせたJSLカリキュラムによる算数科の取り出し指導を行い、学習用語や算数科における日本語の表現の定着を図った。中学校では、学校や生徒の実態に応じて、授業への入り込みや取り出し指導または、放課後等の補充学習支援を実施した。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • ア 市内小学校48校中学校22校に、外国人児童生徒就学サポーター(38人)を派遣した。ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、英語、ベトナム語、中国語、インドネシア語に対応した。学校生活への適応支援、加配教員による取り出し指導の補助、保護者宛文書の翻訳、面談通訳、母語による電話対応等を行った。
  • イ 教育総合支援センターにバイリンガル相談員(浜松市非常勤3人 委嘱者2人)バイリンガル協力員(委嘱者1人)常駐させた。ポルトガル語、タガログ語、スペイン語、英語、中国語に対応し、就学ガイダンスにおける通訳、電話相談における母国語での対応、学校訪問による適応指導や保護者面談時の通訳を行った。
  • ウ 小中学校からの要請に応じ就学促進員(委嘱者4人)を派遣した。ポルトガル語、中国語、ベトナム語、タイ語に対応した。
(7)学力保障・進路指導
  • ア 教科指導ができる人材を指導補助者(教員免許取得者・日本語教師等)として委嘱し、進学を目指す中学生の個別学習の支援のための通級型教室を市内2か所で年間61回実施した。
(8)追加実施項目
  • ア 小学校5年生~中学校2年生の外国籍児童生徒とその保護者を対象に「進路について語る会」を開催した。先輩である大学生の成功体験やこれまでの努力など「生きた情報」を聞くことにより、自身の進路について考える機会とした。
  • イ ロールモデルを小学校に派遣し、外国人児童やその保護者が進路を考える際の参考にする機会を持った。
(9)成果の普及 (必須実施項目)
  • ア 各種研修会や協議会での報告、他県市町からの視察の際や大学関係者への業務説明を行った。
  • イ 浜松市ウェブサイトへの「外国人子供教育推進事業」を掲載している。
  • ウ 保護者対象の催しが新聞へ掲載された。
(10)その他
  • ア 外国につながる子供の適応支援について指導力向上を図るため、年間7回の外国人児童生徒就学サポーター研修会を実施した。
  • イ 入学前に準備しておくべきものや保護者の心構えを伝えるために、年間2回、入学準備ガイダンスを開催した。
  • ウ 外国人児童生徒等への指導において必要な知識や技能を習得し、浜松市の外国人児童生徒等指導を推進するための資質向上を図るため、年間7回の外国人児童生徒指導リーダー研修を実施した。

3.成果と課題

(1)運営協議会・連絡協議会の実施
  • ア 成果
     平成30年度より、指導者や支援者が目標を持ち、初期適応指導から日本語基礎プログラム、そして教科指導と適時的な支援を行う日本語指導体制を実施する。また、学校にも指導体制を周知するよう新任日本語指導加配研修や浜松の外国人指導の牽引するリーダーを育てるための研修も引き続き行う。
     フィリピンルーツの子供の増加を始め、多国籍化している状況にも対応できるようタブレットを導入する予定である。
  • イ 課題
     中学校から編入した子供たちへの支援が間に合わない。高校へ入学しても、退学していく子供も多い。就労につながるスキルアップもさせていきたい。
     子供たちが将来の展望について現実と向き合い、自身のステップアップへの意欲や実践につながるようなロールモデルの提示をしたい。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施 (必須実施項目)
  • ア 成果
     参加者は、児童生徒の実態をより正確につかむことで、次の支援方法が見えてくることや伸び悩んでいる児童生徒の原因がどこにあるのか探るための方策としてDLAが有効であることが実感できた。
  • イ 課題
     実践事例が「読む」だけであったので、他の力でも実践したいという声が上がった。また、主体的な研修にするために、できるだけ多くの参加者が実践を報告するようにしたい。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (必須実施項目)
  • ア 成果
     「特別の教育課程」及び「個別の指導計画」について協議を行うことで、外国人児童生徒教育担当教員が、「特別な教育課程」の編成・実施に関する理解を深めることができた。また、実際に作成した「個別の指導計画」を持ち寄り、協議を行うことで、児童生徒の日本語能力に合った指導に向けて話し合いをすることができた。また、加配教員同士の横のつながりを持つことができた。
  • イ 課題
     「特別な教育課程」を編成した指導にかかわる指導者すべてが内容を把握し児童生徒の実態から目標を共有する必要がある。今回は、加配措置されている外国人担当者のみの悉皆であったので内容によっては、その他の指導者や支援者も研修できるようにしていく必要がある。
(5)日本語指導ができる支援員の派遣
  • ア 成果
     小学校では、少人数指導により、個々のつまずきや理解の状況に応じて指導を行った結果、学習に対する意欲や算数の基礎的な力が向上した。在籍学級での授業にも、積極的に参加する様子が見られた。中学校では、生徒の日本語能力に応じた支援を実施したことで、日本語能力の向上、及び学習言語の習得が進み、学習に対する意欲が高まった。
  • イ 課題
     小学校では、全ての学校の要望に応え、指導補助者を配置することができないのが現状であり、中学校では、学習内容が小学校より複雑になり、支援する教科も増えるため指導者の配置が進まない。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • ア 成果
     母語話者が近くにいることで、子供は安心して自分の思いを伝えられ、学校への適応を進めることができた。
     生徒指導や進路指導や発達関係など、経験や知識が必要とされる面談に対し、相談員が学校訪問をすることで、学校の思いを正しく保護者に伝えたり、教育活動への理解を促したりすることができた。
  • イ 課題
     新1年生で日本語が分からない状態で入学した児童に対し、就学サポーターを十分に派遣できていない。
(7)学力保障・進路指導
  • ア 成果
     指導者が、日本語指導が必要な子供に寄り添うことで、意欲的に学び、学校では自分を出せずにいる子供も、進んで質問したり学習したりする姿が見られた。
  • イ 課題
     20名以上の子供を3人の指導者と大学生のボランティアとで担当しているが、子供たちのニーズに十分に応えることができない。指導者の確保が難しい。
(8)追加実施項目
  • ア 成果
     人生の先輩から経験をふまえた話を聞くことにより、進路に関わる生きた情報を得ることができた。子供たちは、自分も努力すれば道が開かれることを実感し、保護者は、子供がつまずいたときにどのような言葉かけをしたらよいのか知ることができた。
  • イ 課題
     ロールモデルとなる人材を発掘する必要がある。他の団体の講演会などと同じ人材に依頼することが多い。様々な業種でモデルとなる人材が育てば、子供たちのニーズにさらに応えることができる。
(9)成果の普及 (必須実施項目)
  • ア 成果
     市民や連携している団体から、本事業について理解を得ることができた。また、県外や国外の団体にも説明をする機会があり、取り組みや成果を広く発信することができた。
  • イ 課題
     業務について説明することが主であったが、今後の参考や業務改善のために意見交換をしたい。
(10)その他
  • ア 成果
    バイリンガル支援者が校内で初期適応指導を行うための知識を得、具体的な支援の仕方(初期適応プログラムの内容・指導法)について学ぶことができた。
    入学準備ガイダンスで個別相談の時間を設けたことで個々に対応でき、保護者が抱いている不安を解消できた。
    外国人児童生徒等の指導に係る者として必要とされる資質・能力について理解することができた。
  • イ 課題
    学校では日本語・学習指導だけでなく、就学や学校生活などで様々な課題がある。外国人児童生徒等に係る指導者や支援者が、さらにスキルアップを図ることが必要である。

4.その他(今後の取組予定等)

  • (1)子供にも指導者にも目標を持たせた適時的な日本語指導体制の実施
  • (2)新任日本語指導加配教員研修の実施
  • (3)タブレット端末を使用した母語支援

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