平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(静岡市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

指導員連絡協議会
  • 構成員:教育委員会:学校教育課長、指導主事1人、学校経営支援員3人
  • 通級指導員11人、訪問指導員6人
日本語指導担当者会
  • 構成員:学校教育課長、指導主事1人、学校経営支援員3人
  • 日本語指導担当者(小学校31人、中学校15人)

2.具体の取組内容

(1)運営協議会。連絡協議会の実施

[1]指導員連絡協議会(年1回開催)
 本年度の事業について、現状と課題の整理、本年度の重点や支援体制の改善についての協議を行った。

[2]日本語指導担当者会:(年1回開催)
 指導主事、加配教員の講義を中心に、当該児童生徒に関する背景についての理解や諸問題への対応、受入れ体制の整備や具体的な支援の方法等についての理解を図った。

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

[1]DLAの実施と活用
 指導主事や加配教員によるDLAを実施した。測定の記録と評価シートの作成を作成し、担任や関係職員と今後の指導について協議した。

[2]DLAの周知
 指導主事による説明や演習、加配教員による実践紹介を行った。

(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 「日本語指導担当者会」「教育課程説明会」などにおいて「特別の教育課程」の周知を図った。また、外国人児童生徒支援加配教員により「特別の教育課程」を実践した。

(5)日本語指導ができる支援員の派遣

 要請のあった学校に訪問指導員を派遣し、日本語初期、初級の当該児童生徒に対し、10~15時間程度の取り出し指導を行った。児童44名、生徒11名が指導を受けた。
 また、要請のあった学校に学生ボランティアを派遣し、学習や学校生活の支援を行った。静岡大学のNPO法人「ONES」、静岡県立大学の「にょっき☆」と連携をしている。

(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 要請のあった学校に適応相談員を派遣し、日本語が話せない児童生徒とその保護者に対して、日本の生活に適応するための相談の通訳を行った。小学校7件、中学校7件、相談時間は1回2時間程度で、相談員はポルトガル語、スペイン語、タガログ語、中国語、韓国語、英語の担当者がおり、本年度は、ポルトガル語スペイン語、タガログ語、中国語の通訳の依頼があった。主な相談内容は、転入当初の事務手続き、進学に伴う手続きや準備、生活指導、進路指導等であった。

(7)学力保障・進路指導

 日本語指導教室での学習指導では、連絡カードや電話連絡等で学校と学習面や生活面に関する情報共有を行い、指導に生かした。国際交流協会が共催の高校進学ガイダンスでは、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語の通訳を交えて、日本の受験システムや受験までの日程、心構え、受験料や入学料等の具体的な説明をした。

(9)成果の普及

 日本語指導担当者会、指導員連絡協議会における成果と課題の報告、日本語指導教室の月末ミーティングにおける報告、通級実施報告書、連絡カード(別紙資料)における個別支援の成果を報告、担任参観会での日本語指導員と担任の連絡協議を行った。

(10)その他

 学生によるNPO外国人児童生徒支援団体との協働し、依頼のあった学校に対する入り込み支援、放課後での取り出しの学習支援等を行った。

3.成果と課題

(1)運営協議会。連絡協議会の実施

<成果>

  • 指導員連絡協議会では、本年度の指導の重点について協議した。全指導員が一堂に会し、児童生徒に関する情報交換を行ったり、指導法について協議したりしそれぞれの意識の向上や今後の指導の重点確認を行うことができた。
  • 日本語指導担当者会では、講義やDLAの演習を通して、教職員の意識向上を図ることができた。

<課題>

  • 指導員、教員ともに、特別の教育課程、DLA等、日本語指導の現在の方向性についての知識が少ない。本市は散在型の地域であり、外国にルーツを持つ児童生徒を受け持ったことのある教員が少ないため、実践が積み重ねられていないことが課題である。
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

<成果>

  • DLAを行い、その結果をもとに担任や担当者と今後の指導について協議では、児童の日本語の力が数値で表されたこと、どの力が弱いのか明確になったことで、今後の指導の方向性について考えることができ、中学進学に向け必要な指導が見えてきた。また、保護者に対する説明資料としても使用することができ、現状を伝えることに役立てることができた。

<課題>

  • DLAについて知らない教員も多く、実際に活用している学校は少ない。また、担任が実施する場合は時間の確保が難しい。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

<成果>

  • 外国人児童生徒支援加配教員がDLAを実施し、担任と加配教員の間で「特別の教育課程」の進捗状況について頻繁に連絡を取り合い、目標実現に向けて充実した指導ができた。

<課題>

  •  一番の課題は加配教員が少ないということである。現状では、実際に多くの学校で取り組むことは難しい。それゆえ教員間に理解が進んでいないことも課題である。本市は少数散在型であるため、日本語指導に関わってない学校、教員も多い。さらなる周知を図らなければならない。
(5)日本語指導ができる支援員の派遣

<成果>

  • 訪問指導では担任や教頭と密に連絡をとることができ、指導内容の改善や連携した個別指導に結び付けることができた。日本語指導教室に通う子も、来日直後の初期指導が必要とされる者について訪問指導を集中的に行い、着実に力をつけた。

<課題>

  • 訪問指導の要望は多いが、予算の関係から、一人に対し、10~15時間しか行うことができていない。学校からの継続依頼もあるため、訪問指導の充実は大きな課題である。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

<成果>

  • 日本の教育や学校制度について、外国人の保護者が理解していないことが多くあり、言語の問題だけでなく違いを説明することが難しいが、ベテランの相談員により保護者側と学校側の双方の考えを上手に伝えることができた。

<課題>

  •  今年度は順調に本事業を進めることができた。相談の業務に関しては次年度以降も継続的に行いたい。
(7)学力保障・進路指導

<成果>

  • [1]学力向上

<成果>

  • 担任と日本語指導員が連絡を取り合うことで、同じ方向を向いて指導を行い、当該児童生徒の日本語力や学力の向上を図ることができた。高校進学ガイダンスでは、保護者の母語の通訳をできる限り同席させたことで日本の受験体制に対する理解を深めることができた。

<課題>

  • 日本語指導教室では、日本語に課題が見られるだけでなく、落ち着いて取り組めず周囲とトラブルになる子も増えてきている。手厚い支援体制を整えていく必要がある。
(9)成果の普及

<成果>

  •  指導者間(指導員と教員)、教育委員会と指導員とがの頻繁に連絡を取り合い、連携を図ることで、子どもたちの実態を把握し、支援を充実させたりできた。

<課題>

  •  少数散在型の地域であるため、先生方の日本語指導に対する知識等がまだまだ十分周知されているとは言えない。そのため、教員と指導員が子どもの表れを報告し合い連携を図る中で、指導員が主導権を握ることが多く、受け身の教員が多い。
(10)その他

<成果>

  • 学校生活への支援等、指導員だけでは十分対応し切れていない部分を学生ボランティアが請け負ってくれたことで個別の対応ができ、学力向上につながった。

<課題>

  •  学生ボランティアの活用は、子どもにとって有効な取組であるが、支援が必要な時間と学生の授業時間が重なってしまうこと、また学生の交通手段が限られていること等から、支援の規模や範囲が広がりにくい。

4.その他(今後の取組予定等)

 来年度は加配教員による訪問指導を実施し、特別の教育課程の取組を増やしていく予定である。それにより、日本語指導員による指導時間の確保も可能になってくると考えている。

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