平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(相模原市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 実施項目(3)(4)

  • 日本語指導合同連絡会
     対象:日本語巡回指導講師、日本語指導等協力者
  • 国際教室担当者会
     対象:国際教室設置校の国際教室担当者(教員)

 実施項目(5)(6)(9)(10)

  • 日本語指導研究会
     対象:国際教室担当者、日本語巡回指導講師、日本語指導等協力者

2.具体の取組内容

(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 日本語巡回指導講師と国際教室担当者に測定方法についての説明
  • 各学校で児童生徒の状況に応じて測定を実施
     (基礎的な会話力の測定から始め、徐々に読解力・;作文力・聴解力の習得度を測定)
  • 測定により日本語能力を把握し児童生徒の指導に生かすとともに、児童生徒の発達のプロセスを記録
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 国際教室設置校の担当者に対して、「特別の教育課程」について説明
  • 国際教室在籍の児童生徒に対して試行(H29は試行期間の2年目)
  • 各国際教室担当者と協議
(5)日本語指導ができる支援員の派遣

 「日本語巡回指導講師」の派遣

  • 指導期間 1~1年6ヶ月が目安
  • 指導時間 毎週1~2回

 原則1回の支援につき3時間を超えない範囲(授業2単位時間、情報交換等)

  • 指導場所 日本語指導を要する児童・生徒が在籍する小・中学校に直接赴く
  • 指導内容
    • ア 日本語の基礎的な「聞く」「話す」「読む」「書く」の指導
    • イ 教科の学習をする上で必要な日本語の指導
    • ウ 生活の指導
    • エ 上記に揚げるもののほか、教育委員会が必要と認める事項
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

「日本語指導等協力者」の派遣

  • 指導期間 最長1年間が目安
  • 指導時間 週1~2回、原則1回の支援につき2時間
  • 指導場所 日本語指導を要する児童・生徒が在籍する小・中学校に直接赴く
  • 指導内容
    • ア 児童生徒の学校生活への適応支援
    • イ 日本語での会話等に支障がある保護者等への適応支援
    • ウ 上記に掲げるもののほか、教育委員会が必要と認める事項
  • 保護者面談・家庭訪問・懇談会等における通訳
(9)成果の普及
  • 国際教室担当者、日本語巡回指導講師、日本語指導等協力者対象が参加する研究会において、担当している児童生徒の情報交換を行う時間を設定する。
  • 国際教室担当者、日本語巡回指導講師、日本語指導等協力者対象をバランスよくグループに配置し、様々な意見が聞けるような協議の持ち方を工夫する。
(10)その他

〔日本語指導合同連絡会の開催〕
 日本語巡回指導講師及び日本語指導等協力者が帰国・外国人児童生徒等に対する理解を深めるとともに、指導のあり方や指導方法について情報交換を行い、指導力の向上を図った。

〔日本語指導研究会の開催〕
 国際教室担当教員、日本語巡回指導講師、日本語指導等協力者の帰国・外国人児童生徒等に対する日本語指導の質的向上を図り、3者を含めた連携・協力を強化した。

3.成果と課題

(3)日本語能力測定法等を活用した実践研究の実施

 (成果)

  • 児童生徒の日本語能力については、日本語巡回指導講師の経験に基づく主観に任されていた部分が大きかったが、児童生徒一人一人の力を丁寧に捉えられることができ、指導の成果や課題を把握することができた。
  • 学期末には日本語巡回指導講師が「児童・生徒状況調査票」により日本語習熟状況を評価し、学校と状況を共有することができた。

 (課題)

  • 日本語能力測定を行うには、時間を要するため、限られた指導時間の中で実施することが難しい。
  • 日本語巡回指導講師と国際教室担当者を対象に、日本語能力測定方法を活用するための学習会を実施することが必要である
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施

 (成果)

  • 指導を行う目標を決めることで具体的な指導が行える
  • 担任の先生と情報共有するときの参考資料となる

 (課題)

  • 個別指導の計画および指導記録を作成する上で、日本語能力を評価することに難しさがある。
  • 国際教室が設置されていない学校における特別の教育課程の編成には、担当教員が継続的に記録する必要等があり実施することは難しい。
(5)日本語指導ができる支援員の派遣

 (成果)

  • 日本に来て間もない児童生徒が日本語巡回指導講師による日本語の指導を受けることで、日本語での会話ができるようになったり、ひらがな・カタカナを書いたり読んだりできるようになった。
  • 教科につながる日本語について指導することで、児童生徒が安心して学習へ参加するようになった。

 (課題)

  • 日本語の指導によりある程度の日常会話ができるようになっても、学習中に使用される言葉が分からず、学習につまずく児童生徒がいるため、学校と情報を共有し支援体制を整える必要がある。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 (成果)

  • 日本に来て間もない児童生徒が、協力者から母語による支援を受けることで、安心して学校生活が送れるようになる。
  • 日本語での会話等に支障がある保護者等へ対して、必要に応じて支援を行うことで、保護者や教職員がともに児童生徒の様子を把握し、保護者自身も学校との連携が取れるようになる。

 (課題)

  • 日本語指導等協力者が指導・支援する内容が、基礎的な日本語の指導や学校生活上の諸問題にとどまらず、家庭の諸問題や不登校、将来の悩みなど、極めて多岐に渡っている現状があり、関係機関(福祉関係・NPO・青少年相談センター)とのさらなる連携が必要である。
(9)成果の普及

 (成果)

  • これまでは現時点で担当している児童生徒の様子について、情報交換をすることが多かったが、指導してきた児童生徒の様子を客観的に捉えて協議することで、新しい発見があった。

 (課題)

  • 国際教室が設置されていない学校にも、外国につながる児童生徒や日本語指導を必要としている児童生徒が在籍しており、今は担任をしていないが、今後、外国につながる児童生徒に接するときにどのように対応すべきか知りたいと言う要望がある。
(10)その他

 日本語指導合同連絡会
 (成果)

  • 年度当初の合同連絡会により、日本語巡回指導講師及び日本語指導等協力者が共通で指導している帰国・外国人児童生徒に対する理解を深めるとともに、指導方法等について情報交換を行い指導の工夫を図ることができた。

 日本語指導研究会
 (成果)

  • 日本語指導研究会を開催することにより、国際教室担当教員、日本語巡回指導講師、日本語指導等協力者の帰国・外国人児童生徒に対する日本語指導の質的向上が図られたり、協議を行うことで連携が深まったりした。

 (課題)

  • 外部講師を招いた研修会等は、とても有意義であるが、日本語巡回指導講師の授業時間と予算確保が難しいため、これ以上増やすことは難しい。研究会の有効なものとするため、指導者の実態を把握し計画を立てていく必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

  • 日本語能力測定方法を活用するための学習会等を開催し、より日本語能力測定が実施されるようにしていく。
  • 母語を活用した通訳の場面(個人面談、懇談会等)が増えているため、学校や保護者の要望に十分に応えられるよう、対応できる言語を増やす。
  • 国際教室設置校に対し、特別の教育課程の編成について丁寧に説明していく。
  • 今後も日本語の支援を必要とする児童・生徒が増加することが考えられるが、現状の体制で対応が難しくなるおそれがあり、引き続き支援体制を検討していく必要がある。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035