平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(出雲市)
平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題
1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)
2.具体の取組内容
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
(在籍校)
- DLA及び担当教員、担任等の観察による日本語能力の測定を実施。
- 測定結果を反映させた個別の指導計画の作成。
- 作成した個別の指導計画にもとづいた日本語指導及び教科指導の実施。
(市教委)
- 対象児童生徒の必要指導時数の算出、指導員の配置・派遣計画の立案に活用。
- 日本語能力測定法及び測定結果を活かした指導計画の作成に関する教職員研修会の実施。
[出雲市日本語指導教職員研修]
- 日時 平成30年2月7日(水曜日)
- 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員、市通訳・翻訳支援員 計37名
- 講師 同志社大学 日本語・日本文化教育センター 櫻井 千穂 准教授
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
- 全在籍校による日本語指導における「特別の教育課程」の編成、「日本語の能力に応じた指導のための教育課程に関する届出書」(編成届)の提出。
- 「特別の教育課程」に関する教職員研修【「特別の教育課程」等に関する説明、実践発表】
[小・中学校 日本語指導が必要な児童生徒教育研修](県教育委員会主催、市内全校悉皆)
- 日時 平成29年5月31日(水曜日)
- 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計54名
- 講師 東京学芸大学国際教育センター 吉谷 武志 教授
[出雲市日本語指導管理職研修]
- 日時 平成29年6月13日(火曜日)
- 参加者 市内小・中学校管理職 計51名
- 学期ごともしくは前期/後期で、各在籍校において指導計画の見直しを実施。
- 個別の指導計画について評価及び次年度に向けた指導計画の立案を実施。
- 「日本語の能力に応じた指導のための教育課程に関する届出書」(実施届)の提出。(平成30年4月末)
(5)日本語指導ができる支援員の派遣
- 日本語指導員(4時間×5日×35週、小学校8名・中学校4名)の配置・派遣。
- 巡回日本語指導員(4時間×5日×35週・小学校1名、中学校1名)の配置・派遣。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
- 日本語指導補助員(ポルトガル語対応、週28時間×35週、小学校1校、2名)
- 対象児童に対する生活場面(休憩時間、給食、掃除等の寄り添い支援)及び学習時の入り込み支援。
- 対象児童の保護者支援。(電話連絡や来校時の通訳、連絡帳など簡単な内容の翻訳など)
- 通訳・翻訳支援員(ポルトガル語対応、年間1581時間、中学校1校、1名)
- 対象生徒及び保護者との面談、学習場面等での通訳支援
- 保護者宛て文書や各種書類、児童生徒への配布物や教材等の翻訳支援
(9)成果の普及
[小・中学校 日本語指導が必要な児童生徒教育研修](県教育委員会主催、市内全校悉皆)
- 日時 平成29年5月31日(水曜日)
- 参加者 市内小・中学校教職員、市日本語指導員 計54名(県内他市町より53名参加)
- 発表校 塩冶小学校、第二中学校
- 内容 ・各校の現状、指導方針、指導体制、生活・学習支援の実際、保護者との連携、担当者間の情報共有や連携の方法 等
[出雲市日本語指導管理職研修]
- 日時 平成29年6月13日(火曜日)
- 参加者 市内小・中学校管理職 計51名
- 発表校 塩冶小学校、第二中学校
- 内容 ・各校の現状、外国籍児童生徒の受入体制、指導体制、受入や指導における課題と、それに対する取組 等
- 出雲市教育委員会学校教育課ホームページで、今年度の取組状況と成果を公表。(3月末)
- 帰国・外国籍児童生徒支援事業の取組(DLAの活用、「特別の教育課程」の編成、日本語指導員、巡回日本語指導員の配置・派遣、通訳・翻訳支援員、日本語指導補助員による母語支援、教職員研修)
- 取組の成果と課題
3.成果と課題
(3)日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
- 成果
- ステージの向上が見られた児童:67/111名、生徒:35/37名、合計:102/148名
- 測定結果をもとに、個別の指導計画を作成し、個々の日本語能力や学習状況を担当者間で共有することができた。
- ある程度日本語がわかる児童についても、重点的に指導が必要な領域があることが見えてきた。
- 日本語能力について判断する重要なものさしとなっており、在籍学級に帰すかどうか判断する際にも活用している。
- 年度の後半に再度測定を行い、対象児童生徒の評価や指導計画の見直しに活用した。
- 課題
- 日々の生活・学習指導に時間を割いており、日本語能力測定や測定結果の分析のための時間の確保が難しい。
- 校内にDLAを実施できる教員がおらず、測定や分析にかなりの期間を要した。
(4)「特別の教育課程」による日本語指導の実施
- 成果
- 個別の指導目標を達成した児童:75/111名、生徒:22/37名、合計:96/148名
- 「特別の教育課程」を編成することで、来日間もない児童の初期指導を充実させることができた。
- 「特別の教育課程」の編成により、教科や単元、生徒の状況に応じて取り出し指導をすることができた。
- 個々のレベルや目標に合わせた細やかな指導ができ、学習言語の習得が進んだ。
- 指導計画をもとに担任と日本語指導員が共通理解を図ったことで、課題としている部分の学習にしっかりと取り組むことができた。
- 個別の目標に沿って日本語基礎を継続的に指導し、学級生活への適応が進んだ。また、個別の教科の補習により、学習進度に遅れが生じなかった。
【研修会参加者の感想より】
- 一人一人の言語や学習の習得状況をもとに指導計画を立てることの大切さが分かった。
- 個別の指導計画の立案・実施・評価・見直しにより、次のステージをめざす指導ができることが分かった。
- 個別の指導計画による指導を行うため、担当者間の連携や校内の共通理解が必要だと感じた。
- 課題
- 「特別の教育課程」や個別の指導計画に関する担当者間(その学校の全教職員)の共通理解を図ることと、そのための時間の確保が必要。
- 個別の指導と、集団で学ぶことの両方の良さをいかした指導計画を立てる必要がある。
- 言語以外の困難(発達障がい、学習障がい等)がある児童の特性に応じた指導(計画の立案)が難しい。
(5)日本語指導ができる支援員の派遣
- 成果
- 日本語指導員…対応した児童生徒数 110名(小学校86名、中学校24名)
指導実施時数 9,279時間(担任等との連絡、研修会参加を含む)
- 巡回日本語指導員…対応した児童生徒数 19名(小学校15名、中学校4名)
指導実施時数 1,409時間(担任等との連絡、研修会参加を含む)
- 対象児童生徒の在籍校に指導員を配置・派遣して日本語指導を行うことで、対象児童生徒が早く学校環境に慣れ、日本語の習得や学習内容の定着が進んだ。
- 個別もしくは少人数グループでの指導を行い、日本語能力やコミュニケーション力の向上が見られた。また、苦手なところを重点的に指導することができた。
- 複数配置校では、指導員同士の情報交換ができた。
- 転入直後からの継続した指導により、学校生活への不安が少しずつ解消された。
- 日本語指導員からの情報を担任に伝え、学級での指導に活かすことができた。
- 課題
- よりきめ細かな個に応じた指導を行うためには、増員と指導時間の増加が望まれる。
- 授業の準備や他の指導員、校内の教職員との情報交換の時間の確保が難しい。
- 各校の指導体制や勤務時間の都合上、指導員が研修会に参加できないことがあった。指導員に対する研修の機会の確保が必要。
(6)児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
- 成果
- 日本語指導補助員…対応した児童数(ステージ下位の児童を中心に)38名
支援実施時数 2,034時間
- 母語支援のおかげで、児童が安心して生活している。特に初期指導対象児童へのサポートが効果的だった。
- 対象児童にとって母語で会話をする時間ができ、精神的な安定につながっている。
- 保護者の急な来校や子ども同士のトラブルにも、その場で対応することができた。
- 遠足や学習発表会などの行事にも、他の子どもたちと同じように楽しみながら取り組むことができた。
- 通訳・翻訳支援員…支援実施時数 968.75時間
- 学習場面での通訳、翻訳により、内容の理解が深まった。
- 就学援助、進路等に関する申請書類や調査物等の翻訳ができ、保護者支援が充実してきている。
- 特に進路に関する面談での正確な通訳により、学校と保護者の意思の疎通が図れた。
- 課題
- よりニーズに応じた支援を行うには、増員と支援実施時間の増加が望まれる。
- 配置のない学校では、緊急の対応が難しい。
- 担任や教科担当教員との相談、打合せの時間が不足している。
- 現在対応しているのは、ポルトガル語のみ。人数は少ないが他言語のニーズもある。
(9)成果の普及
- 成果
【研修会参加者の感想より】
- 発表校の取組内容を、自校の指導に活かすことができた。
- DLAの実施と測定結果の活用について、有用な情報を手に入れることができた。
- 具体的な指導方法や教材についての紹介があり、すぐに実践に活かすことができた。
- 転入の際の対応や指導計画の作成にあたって、他校の取組が参考になった。
- 課題
- 担当教員がすべき研修であるという認識がある。
- 家庭との連携や支援についての情報が不足している。
- 成果や課題に対する対応を、校内でどう共通理解を図るかが課題となっている。
- 少数在籍校での支援・指導についても情報提供が必要である。
4.その他(今後の取組予定等)
- 研修会の開催及び資料・情報提供により、教職員の日本語能力測定法に関する知識や技能を高め、すべての対象児童生徒の日本語能力測定が実施できるようにする。
- 全教職員の共通理解のもとで「特別の教育課程」による日本語指導が実施されるよう、校内体制づくりに関して、管理職、校内担当者への啓発・情報提供等を行う。
- 日本語指導員及び巡回日本語指導員が適切に配置・派遣されるよう、市全体と学校ごとの対象児童生徒の在籍状況や個々の日本語能力、必要な指導時数等の実態把握に努める。
- 加配教員をはじめとする各校の日本語指導担当教員が、各校の実情に応じてマネジメントを行い、指導員や補助員、支援員の情報交換や研修等の時間を確保できるよう、指導計画を立案する。
- 研修会での実践報告や資料の配布等による取組の成果の普及、教材や翻訳文書の共有化を進める。
総合教育政策局国際教育課
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