平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(松阪市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

[1]運営協議会(年2回)

 (大学、松阪国際交流協会、松阪市観光交流課、センター校・準センター校、県教委、市教委)

[2]連絡協議会
  • 外国人児童生徒教育プロジェクト会議(年3回)
     (大学、センター校・準センター校担当者、母語スタッフ、「いっぽ」教室担当者、市教委)
  • 外国人児童生徒教育ネットワーク会議(年3回)
     (市内小中学校外国人児童生徒教育担当者、市教委)
  • 外国人児童生徒教育担当者会議(年7回)
     (センター校・準センター校担当者、母語スタッフ、市教委)

2.具体の取組内容

[1]運営協議会・連絡協議会の実施
  • 運営協議会
    • 事業説明、センター校・準センター校における取組について、事業の経過報告、成果と課題の検討等
  • プロジェクト会議
    • 教科指導、日本語指導、学習評価の実践研究
    • 子どもたちのアイデンティティ形成の実践研究
    • 校内体制の整備、教職員の意識高揚のための実践研究
    • 日本語能力測定方法活用のための協議
    • 「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議
  • ネットワーク会議
    • 特別の教育課程編成に係る研修
    • JSLカリキュラムに基づく教科指導・日本語指導の取組について
    • 各校の多文化共生教育の取組について
  • 担当者会議
    • 各校の取組や児童生徒の実態について
    • 教材の交流や教科学習の取組について
    • アイデンティティの確立の取組について
    • 日本語能力測定方法活用のための学習会
    • 「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた「実施計画・報告書」の検討
[2]拠点校等の設置や拠点的機能の整備
  • センター校(3校)・準センター校(4校)を設置し、受入体制を整備
  • JSLカリキュラムに基づく公開授業・研究会議の実施
  • 学習支援のあり方について実践研究
  • アイデンティティの確立をめざす取組(愛知淑徳大学との連携)
  • 日本語指導法講座の実施
  • 多文化理解の授業の実施(三重大学国際交流チームとの連携)
  • センター校・準センター校教職員研修会の実施
[3]日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施
  • 「外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修」への参加
  • 「外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修」の報告及び研修
  • センター校・準センター校外国人児童生徒教育担当者会議における、日本語能力測定方法の理念や内容についての学習会実施
[4]「特別の教育課程」による日本語指導の実施
  • 昨年度作成した「個別の指導計画」実践事例集を活用した研修会の実施
  • 個票及び「個別の指導計画」の作成
[6]児童生徒の母語が分かる支援員の配置
  • 学校における児童生徒の言語支援
  • 高校生活入門講座等への母語スタッフの派遣
  • 外国人幼児のための就学前支援教室「ふたば」への母語スタッフ派遣
[7]学力保障・進路指導
  • JSLカリキュラムに基づく公開授業・研究会議の実施
  • 「外国人生徒教育に関する松阪地区中高関係者情報交流会」の実施
  • 個票及び「個別の指導計画」の小中及び高校への引き継ぎ
  • 進路ガイダンスの実施
[9]成果の普及
  • 外国人児童生徒教育ネットワーク会議での「個別の指導計画」実践事例集を活用した研修会の実施、センター校・準センター校の多文化共生教育の取組の報告や各校での取組の交流
[10]その他
  • 外国人幼児のための就学前支援教室「ふたば」(プレスクール)の開設

3.成果と課題

[1]運営協議会・連絡協議会の実施

<成果>

  • ネットワーク会議では、昨年度作成した「個別の指導計画」実践事例集を活用した研修会を行い、作成の定着を図った。また、センター校・準センター校の多文化共生教育の取組を市内の全校に紹介するとともに、グループに分かれて各校の取組の交流を行い他校からの学び合いができた。
  • 担当者会議では、小中の児童生徒の情報交換・共有をすることで、それぞれの児童生徒の生活状況の把握や保護者との連絡などの面で連携を図ることができた。

<課題>

  • 各校それぞれで自作教材を作成するには膨大な時間がかかるため、共通教材の作成(中学校間や小学校間での各教科のワークシート、進路に向けての教材等)をすすめていく必要がある。
  • 日本語能力測定方法の効果的な活用方法について、さらに研修を積む必要がある。
[2]拠点校等の設置や拠点的機能の整備

<成果>

  • 外国人児童生徒教育の推進のため、今年度もセンター校・準センター校で学校行動計画、国際教室経営方針及び外国人児童生徒教育指導計画を作成し、全教職員の共通理解のもと取り組むことができた。
  • センター校・準センター校教職員研修会は、学校の職員が入れ替わっていく中で、JSLカリキュラムについて各教科での具体的な実践など含めながら、とても分かりやすく基礎的なことから学習することができた。
  • 日本語指導法講座は、「やさしい日本語」の大切さや話す時のポイントなど、具体的な内容のものが多く大変好評であった。今後の日本語指導・教科指導にどのように生かしていったらいいのか、グループで他の受講者の意見も聞くことができ、実りのある研修会となった。
  • フォトストーリーづくりでは、参加した児童生徒が、これまで自分の思いなどをなかなかじっくり聞いてもらう機会がなかったが、将来の夢や日頃の思いなどを大学生に話すことができた。自分の存在を見つめなおし、自分が出せるフォトストーリーづくりの取組は、アイデンティティの確立に向けてとても大切な取組である。
  • 多文化理解の授業では、留学生からそれぞれの国について生活習慣や学校のことなどの話があり、多文化に触れる機会がもてた。

<課題>

  • 校内外国人児童生徒推進委員会の定例化に向け全てのセンター校・準センター校で取り組んでいく必要がある。
  • 初期日本語指導やJSLカリキュラムを活用した授業づくりについては、引き続き全教職員で取組を進め、研究を深めていく必要がある。
  • 外国につながりのある児童生徒のアイデンティティの確立には、文化や言葉などの違いを認めあえる「なかまづくり」が土台となる。自分のルーツに誇りをもち、自尊感情を高めていくことができるよう、今後も「なかまづくり」の推進が必要である。
  • 多文化理解の授業の取組は、外国にルーツのある児童生徒が在籍するしないにかかわらず、全ての学校で必要である。より多くの学校で実践ができるような工夫をしていかなければならない。
[3]日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施

<成果>

  • 担当者会議で、日本語能力測定方法について学習会を行い、測定のための教材の準備や実際の測定方法について共通理解を図ることができた。
  • 「外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修」に参加した教職員から、日本語能力測定方法についての還流報告を行った。その後、各校で測定を実施し、その様子を交流し合うことで具体的な活用方法について検討することができた。

<課題>

  • センター校・準センター校においては、日本語能力測定を実施することができたが、他の学校については実施することができなかった。また、センター校・準センター校でも全ての児童生徒を対象に実施するには時間的にも難しかった。今後は、日本語能力測定方法についてさらに研修を積み、課題点等を検証しながら、より現場に即した効果的な活用について研修を行っていく必要がある。
[4]「特別の教育課程」による日本語指導の実施

<成果>

  • 外国人児童生徒教育ネットワーク会議で、昨年度作成した「個別の指導計画」実践事例集を全小中学校に配布し、センター校・準センター校での実際の活用例を紹介しながら研修会を行うことができた。今後、市内全体で共通した指導・支援ができるようにしていきたい。
  • 「特別の教育課程」編成にかかる計画書の提出を、小学校13校、中学校5校から受けた。

<課題>

  • 「特別の教育課程」編成については、今後もさらに周知が進むように研修会等で取組を進めていく必要がある。
  • 「個別の指導計画」の作成は、センター校・準センター校での活用にとどまっているのが現状である。記入方法や内容の精選など検討を重ね、全ての小中学校で作成できるようにしていかなければならない。
[6]児童生徒の母語が分かる支援員の配置

<成果>

  • 学校に母語スタッフを派遣することで、児童生徒の学習支援だけでなく、母語で話せる安心感・心の安定につながっている。また、保護者との連絡、文書の翻訳など学校と家庭の連携を図ることができた。
  • 外国人児童生徒が希望をする高校生活入門講座等への母語スタッフ派遣を行った。合計4校へ母語スタッフを派遣し、13人の生徒の言語支援を行った。進学を希望する学校の説明を通訳を介して直接聞くことで、進路に向けて前向きな気持ちになることができた。

<課題>

  • 日本語指導が必要な児童生徒は、年々増加傾向にある。保護者の多くは日本語の理解が難しいために、学校と家庭と連携していくには母語スタッフの充実は急務である。
  • 進路保障の観点から、日本語指導が必要な児童生徒が希望する全ての高校生活入門講座等へ母語スタッフを派遣していく必要がある。
[7]学力保障・進路指導

<成果>

  • 個票を作成することにより、児童生徒の学力や生活背景についての理解を深めることができた。前期・後期に見直すことで、より児童生徒の実態に即した支援ができるようにしていきたい。また、進学先への引き継ぎ資料としても役立てていきたい。
  • JSL公開授業(2校)を年度の早い時期に小中学校において行うことができたので、校内でのJSLカリキュラムに基づく授業づくりを進める上で有意義なものとなった。公開授業では、合わせて92人の参加があり、高等学校からの参加もあった。今後、中高の連携を深めていくために、高等学校が開催する公開授業等にも積極的に参加していく必要がある。
  • 中高の担当者が、日本語指導が必要な生徒の現状や日本語指導や教科指導の様子を交流することで様々な情報を共有することができた。

<課題>

  • JSLカリキュラムの授業づくりなど学力保障につながる取組を一層推進していく必要がある。
  • 外国にルーツのある子どもたちの中には、家庭での生活が安定せず、欠席・遅刻の児童生徒も多い。家庭学習の定着や在籍学級での教科学習の遅れなどの課題についても解決に向けて取り組んでいく。
  • 多様な背景を持つ外国人児童生徒が増加していて、その中には特別な支援を必要とするケースもあり、これまで以上に関係機関と連携を図っていかなければならない。
  • 進路ガイダンスでは、高校入試について、小学校の段階ではイメージすることが難しいが、見通しをもって学校生活を送ることは、学習意欲の向上にもつながっていく。早い段階から将来に向けて準備していく必要があるので、小学生もより目的意識を持って参加してもらえるような内容の工夫をしていく必要がある。
  • 中学校から高等学校へ、個々の学びを引き継いでいくために、個票や「個別の支援計画」を活用し、より一層高等学校と連携を図っていく必要がある。
[9]成果の普及

<成果>

  • ネットワーク会議では、個票や「個別の指導計画」の活用方法や多文化共生教育の取組など、センター校・準センター校の様々な取組を、市内全体に広めることができた。外国人児童生徒の在籍が少ない・在籍しない学校も担当者が研修を受けることで、今後の市内全体の受入体制の充実につなげていきたい。

<課題>

  • センター校・準センター校の取組、プロジェクト会議や外国人児童生徒教育担当者会議で協議した内容・成果物等について、ネットワーク会議だけでなく今後さまざまな場で、情報を発信していかなければならない。
[10]その他

<成果>

  • 就学前支援教室「ふたば」では、日本語指導員3人体制を継続することで、指導のための準備や授業での連携を図ることができた。また、母語スタッフの母語による支援は、子どもや保護者が日本の学校についての情報を母語で得ることができ安心感につながった。
  • 「ふたば」教室の開設は、こども未来課と連携をとり、幼稚園児だけでなく保育園児にも呼びかけ、25人の申し込みがあった。
  • 参加した保護者へ、子どもの生活状況や入学予定の学校への願いを聞き取り、個々の調査票を作成した。その調査票を入学予定の学校に提供し、保幼小の連携を図っていきたい。

<課題>

  • 「ふたば」教室の指導内容・方法等について、さらに検討し内容の充実をはかっていく必要がある。
  • 「ふたば」教室に通う幼児の入学する学校とさらに連携をとっていく必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

  • JSLカリキュラムに基づく「わかる授業」の教育実践と研究をさらに進め、教材の共有化を図る。また、日本語指導法の研究も深めていく。
  • すべての小中学校で、アイデンティティの確立をめざして、多文化共生の教育をさらに進めていく。
  • 「特別の教育課程」編成の体制づくりをさらに進め、個々の学びを引き継ぐために、個票・「個別の指導計画」を活用し、小・中・高の連携をさらに進めていく。
  • 外国人児童生徒の増加に伴い、母語スタッフの充実とより効果的な配置について検討を重ねていく。

お問合せ先

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電話番号:03-6734-2035