平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(桑名市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

運営協議会

 三重県国際交流財団・大学教員・関係行政機関<子ども総合相談センター職員・政策経営課政策調整係・市民課受付係・学校(センター校小中校長、小中教員各1名、国際化対応教職員各1名)・市教育委員会(学校教育課・人権教育課・指導課)>

外国人児童生徒教育担当者連絡会

 各小中学校担当者1名・国際化対応教職員

2.具体の取組内容

[1]‐1受入にあたっての指導・支援の在り方を協議する運営協議会の設置・開催

 「桑名市外国人児童生徒教育運営協議会」(年間1回開催)
 大学教員・三重県国際交流財団・関係行政機関・学校(センター校)・市教育委員会で構成する「桑名市外国人児童生徒教育運営協議会」を年1回開催した。今年度の事業について周知し、就学支援・指導のあり方や外国人児童生徒の現状・課題について協議した。

[1]‐2地域内で情報共有するための連絡協議会の開催

 「桑名市外国人児童生徒教育担当者連絡会」(年間2回開催)
 5月に開催された第1回の連絡会では、今年度市で取り組んでいく外国人児童生徒教育事業の紹介をした。後半は外国人児童生徒の転入はどの学校にも可能性があり、近年それが増えていることをふまえ、センター校の光陵中学校の国際化対応の先生から「外国につながる児童生徒が転入してきたら」というテーマで講話をいただいた。対応と指導について考え合い、理解を深めた。
 2月に開催された第2回の連絡会では、今年度、市の外国人児童生徒教育事業の取組について報告した。後半は、センター校中心に取り組んだ特別の教育課程とDLA についての報告を行い、来年度にどう取り組んでいくのかについて説明をし、確認した。

[2]‐1初期指導教室(プレクラス)の実施

 センター校に初期適応指導教室を設置し、外国人児童生徒に対し、日本の学校生活への適応指導や基本的な日本語指導を実施した。また、巡回による初期適応指導を実施した。

[2]‐2センター校等の設置

 外国人児童生徒在籍者数の多い大山田北小学校・光陵中学校をセンター校とし、外国人児童生徒に対する適応指導や日本語指導の充実を図るとともに、市内の学校への情報発信・支援を行った。

[3]日本語能力測定方法の活用

 毎月1回開催している、国際化対応教員・外国人児童生徒教育推進非常勤協力員のための会議(国際ミーティング)にて、日本語能力測定方法(DLA)の活用について研修し、センター校での実施に取り組んだ。また、検証も行った。
 日本語能力測定方法(DLA)について5月開催の第1回の外国人児童生徒担当者連絡会では、資料で取組例を挙げながら説明をし、来年度日本語指導が必要な児童生徒がいる学校は実施の方向でいくことを伝えた。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施
  • センター校の大山田北小学校、光陵中学校を中心に実施した。研修会で全職員共通理解のもと、担任、学年を中心に日本語指導が必要な児童生徒の日本語能力の状況把握と手立ての確認をした。前期と後期で分けて、評価と見直しをおこない、継続した取組を進めた。
  • 2月開催の第2回桑名市外国人児童生徒教育担当者連絡会において、市内全ての外国人児童生徒教育担当者に「特別の教育課程」についての資料を提示し、センター校の実践報告をふまえながら、指導計画の立て方、記入方法などを説明し、外国人児童生徒の状況把握を継続的に行っていくことの大切さを確認した。
[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 センター校及び日本語指導が必要な外国人児童生徒が在籍する学校に、日本語指導や学校と保護者との連絡調整を行うため日本語指導経験などがある指導員・支援員等を配置し、学習支援や相談活動を行った。

[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 日本語能力が十分でない児童生徒が学校生活に適応する際、および、学校と外国人保護者との連絡調整を行う際に必要となる外国語能力を有する母語支援員(ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・ビサイヤ語・英語・中国語)を派遣した。また、就学相談や就学リーフレット等の作成にあたり、通訳・翻訳を行った。

[7]‐1教育委員会と関係機関との連携による就学支援
  • 外国人児童生徒が不就学にならないように、他課と連携し、学校への受け入れ手続きをする学校教育課と外国人児童生徒の支援を行う人権教育課で連携しながら窓口で対応した。
  • はじめて桑名の学校に転入する場合は、教育委員会事務局窓口で、また新1年生保護者には、就学案内ガイドブック「ようこそ桑名の学校へ」を配布した。
[7]‐2ことばの教室「ガンバチアンド」および外国人児童生徒交流会の実施

 夏季休業中を活用し、ガンバチアンドでは市内在住の外国人児童生徒が一堂に会し学習する機会を設け、学力補充等の支援を行った。参加人数は58名だった。また「ガンバチアンド」に来られない児童生徒のために該当校で学習支援をおこなった。外国人児童生徒交流会では、言語に関するゲームや、運動を通して交流を深めた。33名の参加だった。

3.成果と課題

[1]‐1受入にあたっての指導・支援の在り方を協議する運営協議会の設置・開催

 <成果>運営協議会を行うことによって、外国人児童生徒にとって、どのような課題があり、課題を解決していくにはどうするとよいかといった視点で話し合いができた。

 <課題>外国人児童生徒への対応は学校中心に行うものの、その保護者の日本語の学びの場が必要であることや、厳しい経済状況であることなど、外国人保護者への対応も関係機関との連携をとりながらやっていく必要がある。

[1]‐2地域内で情報共有するための連絡協議会の開催

 <成果>日本語指導が必要な外国人児童生徒の転入の増加により、どの学校にも起こりうることとして、転入当初の初期対応や、長期的な対応等、ノウハウがある学校の先生から、実践の話を共有することで、対応につなげることができた学校もあった。

 <課題>外国人児童生徒の受入体制については各校での取組が進んできたと思われるが、日本語が少しずつ理解できるようになった児童生徒の教科指導や、子どもどうしのかかわりについて課題をかかえている学校が多い。これらの点については今後も協議が必要である。

[2]‐1初期指導教室(プレクラス)の実施

 <成果>基本的な日本語指導や生活面での指導を併せて行うことで、言葉の習得と児童生徒の自信や自尊感情を育む上で効果があった。

 <課題>年間を通じて断続的に転出入があり、指導体制を整えるのに難しい面がある。多くの転入と居住地の市内分散傾向に、どう対応していくか検討していく必要がある。

[2]‐2センター校等の設置

 <成果>受入や初期適応指導に関する経験や適切な指導のあり方、教材や資料が蓄積されている。在籍教室と国際教室が連携のもと、児童生徒のもつ課題に対応することができた。

 <課題>センター校としての成果を、今後も市内各校へ発信していく必要がある。

[3]日本語能力測定方法の活用

 <成果>資料について検討していくことで、児童生徒につけさせていきたい日本語の力がどのようなものか協議することができた。共通の測定方法により日本語能力をはかることでの達成状況がわかりやすくなることを実感した。

 <課題>限られた日本語指導の授業時間の中で、日本語能力測定方法(DLA)に取り組む時間を確保するのに苦労したため、年間計画に組み込んでいく必要がある。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 <成果>「特別な教育課程」に取り組むことで、個々に合わせたきめ細やかな指導の重要性を改めて理解した。計画立案までに、個々の生徒の状況把握と具体的に先を見通した児童生徒への対応の必要性も確認できた。

 <課題>外国人児童生徒の転出入が多く、児童生徒の変化も著しいため、「特別な教育課程」の計画立案までになかなか辿りつきにくい現状もある

[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 <成果>児童生徒が学校に慣れる手助けとなり、保護者の不安を軽減する上で貢献した。児童生徒が母語で思いや悩みを出せる場をつくることで、心のケアができ、学習意欲につながった。児童生徒の日本語能力は国際化対応教員の指導や学校での補充学習により進んできた。

 <課題>転出入が激しく、適切な国際化対応教員の配置が難しかった。桑名市で通訳・翻訳をしていない言語を母語とする児童生徒、保護者については十分に支援できないこともあった。今後は、多言語への対応も検討していく必要がある。

[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 <成果>母語支援員の通訳・翻訳・取り出し授業があることで、児童生徒や保護者が安心して学校に適応できた。日本語の習得が、一斉授業へ入ることにつながり、児童生徒がより多くの児童生徒と関わりをもてるようになった。

 <課題>日本語習得には時間がかかるため、継続した指導が必要であるが、母語支援員や国際化対応教員に限りがあるため十分な支援がしきれていない現状もある。学校の外国人児童生徒担当者との連携を密にしながら、学校全体で取り組めるよう支援していく必要がある。

[7]‐1教育委員会と関係機関との連携による就学支援

 <成果>戸籍・住民課窓口、学校教育課等との連携により児童生徒をスムーズに就学へ導くことができるよう情報を共有することができた。

 <課題>就学の際の情報提供を、今後もていねいに行っていく必要がある。

[7]‐2ことばの教室「ガンバチアンド」および外国人児童生徒交流会の実施

 <成果>夏休みの宿題の支援や日本語の補充学習など児童生徒や保護者のニーズに応えることができた。市内の小中学校のセンター校で行い、計58名の参加があった。また、地域のボランティアの人や大山田北小学校教員や光陵中学校教員も支援に多く加わり、支援者が増えたことにより個々に応じた適切な指導支援ができた。学校に1人しかいない外国人児童生徒も夏季交流会の中で、他校の外国人児童生徒と母語や日本語で交流し楽しく活動することができた。児童生徒が協力しながら活動することで、学校という枠を越えたつながりが生まれた。

 <課題>地理的状況から、参加しづらい児童生徒への配慮を引き続き行っていく必要がある。
 また、ガンバチアンドや学校での補充学習だけでなく家庭学習・自主学習ができるような支援のあり方を検討していく必要がある。

4.その他(今後の取組予定等)

[1]言語指導・教科指導の充実

 来日したばかりの児童生徒には、初期対応として、取り出し授業における適切な日本語指導を行い、教材・教具を充実させていくことが必要である。センター校だけでなく各校での受入を充実させ、学校全体で日本語指導が必要な児童生徒への支援、体制づくりが必要である。また、日本語が理解できるようになれば、教科指導も進め、JSLカリキュラムを活用した授業づくりをさらに進めていく必要がある。そのためには、教師の指導力向上が重要であり、研修会を充実させ、推進校の取組から学ぶことが必要である。

[2]児童生徒に応じた生活指導の強化

 言葉がわからず、誤解が生じたり、文化の違いから児童生徒間でのトラブルがおこったりすることが多い。文化・宗教の違いから他の児童生徒と同じことができない場合もあるため、保護者と情報共有し、児童生徒にも伝えていく必要がある。学校生活になじみ、様々な問題を解決するためには、学級担任が児童生徒の思いや考えを把握し、個別及び全体への指導を丁寧に行うことが必要である。日本語で会話ができても細かい内容までは理解できていないこともある。このことから、学級担任は、児童生徒から聴き取った話や国際化対応教員や外国人児童生徒教育推進非常勤協力員らからの情報を共有し、指導・支援を行うことが大切になる。また、保護者の思いを聴き取り、学級担任が国際化対応教員や外国人児童生徒教育推進非常勤協力員らと連携して指導に当たることが今後も大切である。

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