平成29年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(小牧市)

平成29年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

[1]小牧市における運営協議会・連絡協議会の実施

(1)小牧市外国人児童生徒教育連絡協議会

  • ア 目的
    • 小牧市内小中学校の外国人児童生徒教育の充実を図ることを目的とする。
  • イ 構成員(77名)
    • 代表学校長・代表教頭・指導主事
    • 市内小中学校外国人児童生徒教育担当者(55名)
    • 語学相談員 (ポルトガル語6名、スペイン語4名、タガログ語6名、中国語3名)
  • ウ 「外国人連絡協議会」実施 (年7回開催)
    • (5月・6月・7月・9月・10月・1月・2月)
    • 5月・・・「日本語指導担当教員の役割」 講師:大城小 伊藤敦子教諭
    • 7月・・・夏季研修のための確認、進路説明会の最終確認
    • 9月・・・「就学時健診及び就学までの流れ」 講師:米野小 志村幸代教諭
    • 10月・・・「個別の指導計画の作成について ―DLAを活用してー」講師:大城小 伊藤敦子教諭
    • 1月・・・生活相談部情報交流会(中学校区別)
  • エ 「外国人児童生徒のための進路説明会」の実施
    • 日時 7月23日(日曜日)13時~16時
    • 参加者 小牧工業教頭、小牧高校教頭、誉高校渉外部長、中学校進路指導主事、指導主事、外国人児童生徒教育担当教員(28名)、体験発表(卒業生2名)、語学相談員(12名)
    • 対象者 外国につながる児童生徒とその保護者
    • 当日参加者 児童・生徒 68名 保護者 92名
    • プログラム
      1. 「中学校卒業後の進路について」(中学校進路指導主事)
      2. 上級学校からの説明
      3. 体験発表
      4. ガイドブックを利用して各グループでの相談会
        言語別グループ
        各グループに中学校教員がおり質問に答える
        上級学校の先生方への相談もできる
[2]小牧市における拠点校等の設置や拠点的機能の整備

(1)日本語初期教室へ在籍した児童生徒(12月22日現在)
 小牧市へ編入転入してきた日本語がほとんど分からない児童生徒

  • ア 本室(大城小学校内)
    • 在籍した児童・・・7名
    • 在籍した生徒・・・1名
  • イ 味岡分室(旧味岡児童館)
    • 在籍した生徒・・・25名
    • 在籍した生徒・・・9名

(2)指導方針

  • 教室で最低限必要な日本語の学習及び生活適応指導を約3ヶ月集中的に行う

(3)指導内容

  • <1>学校生活上必要となる最小限の日本語、簡単な日常生活
  • <2>ひらがな・カタカナ・小学校1年生程度の漢字
  • <3>日本の学校生活のきまりや習慣
     教科指導〈算数・数学〉
[3]小牧市における日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施 (必須実施項目)

(1)授業研修実施・・・5月

 国語 「見立てる」 ・・・大城小 伊藤敦子教諭
 授業研修部8名参加

(2)DLA研修会(夏季教職員研修の一環として・・・8月

  • ア 「これからの外国人教育のすすめ方 『特別の教育課程』による日本語指導」」
     豊橋市教育委員会 築樋博子先生
    • 参加者 51名
    • 日本語の能力に応じた指導プログラムについて
    • DLAを活用した「個別の指導課程」作成について
  • イ 「外国人児童生徒教育のあり方」 京都市教育委員会 大菅佐妃子先生
    • 参加者 27名
    • JSLカリキュラムでの授業づくり
    • 外国人児童生徒教育担当者としての悩み、困り感について

(3)「個別の指導計画の作成について」(外国人児童生徒連絡協議会10月)

  • 参加者 30名
  • DLAの学習会実施
[4]小牧市における「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (必須実施項目)

 研修会実施

(1)「これからの外国人教育のすすめ方 ―『特別の教育課程』による日本語指導―」 (8月)
 豊橋市教育委員会 築樋博子先生

  • ア 参加者 51名
  • イ 目的
    • 日本語の能力に応じた指導プログラムやDLAを活用した「個別の指導課程」作成について担 当者が、把握し指導に生かすことにより、「特別の教育課程」による日本語指導の充実を図るため。
    • 夏季研修で「特別の教育課程」の研修を行うことで、日本語指導担当者だけでなく、児童生徒の在籍する学級担任の参加もえられる。日本語指導担当と学級担任が連携をとりやすくするため、夏季研修で実施をした。

(2)「個別の指導計画の作成について」(10月)
 大城小学校教諭 伊藤敦子 教諭

  • ア 参加者 30名
  • イ 目的
     DLAを活用し、児童生徒の日本語の雨量を把握したうえで、個別の教育課程をつくり、授業作りに生かしていくようにするため。
  • ウ 内容
    • 担当児童生徒を思い浮かべ、日本語能力に応じたプログラムを参考に個別の指導計画を作る。
    • グループで、立てた計画について協議する。
    • いくつかのグループ代表が発表をする。
[5]小牧市における日本語指導ができる支援員の派遣

(1)目的

  • 語学相談員を市内小中学校へ派遣し、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、中国語を母語とする児童生徒の就学者に言語指導を行ったり、文書の翻訳や懇談会での通訳を行ったりすることにより、外国人児童生徒教育の充実を図る。
  • 日本語初期教室で日本への編入間もない児童生徒が在籍校での就学が円滑に行えるよう、一定期間集中的に学習することを助ける。

(2)語学相談員の言語と人数

  • 日本語初期教室(本室)に主任語学相談員を1人(常勤・スペイン語)配置する。
  • ポルトガル語語学相談員・・・6名
  • スペイン語語学相談員・・・・・3名
  • タガログ語語学相談員・・・・・6名
  • 中国語語学相談員・・・・・・・・3名
  • 日本語指導員・・・・・・・・・・・・4名

(2)業務内容

  • 外国人児童生徒への日本語指導支援
  • 外国人児童生徒に対する母語指導
  • 外国人児童生徒及びその保護者への文書などの翻訳
  • 外国人児童生徒の保護者への通訳

(4)訪問の実施

  • 巡回
     市内小学校 16校 中学校 9校
     13名の語学相談員と2名の日本語指導員の配置
  • 日本語初期教室での支援
     市内2箇所
     6名の語学相談員と2名の日本語指導員を配置

(5)語学相談員研修会

  • 年3回(4月・7月・3月)
  • 参加者
     19名(語学相談員全員)
  • 研修内容
     「子どもの学びや支援体制の事実に基づき、充実に向け語学相談員としてできること」
    • 訪問語学相談員からの報告
    • 日本語初期教室からの報告
    • 語学相談員としての確認事項
    • 情報交換
[6]小牧市における児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

(1)目的

  • 母語指導を希望する児童生徒については母語指導を実施し、児童生徒及び保護者のアイテンティティを大切にした支援を心がけ、外国人児童生徒教育の充実を図る。
  • 語学相談員を市内小中学校へ派遣し、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、中国語を母語とする児童生徒の就学者に言語指導を行ったり、文書の翻訳や懇談会での通訳yを行ったりすることにより、外国人児童生徒教育の充実を図るため。

(2)語学相談員の言語と人数

  • ポルトガル語語学相談員 6名
  • スペイン語語学相談員 4名
  • タガログ語語学相談員 6名
  • 中国語語学相談員3名

(3)語学相談員打合せ会(年間10回実施)

  • 参加者
     巡回語学相談員 13名
  • 内容
    • 連絡事項
    • 情報交換
    • 母語指導の取組(大城小学校の実践)
    • 母語指導の教材紹介
    • 4言語の母国における教育制度・学校について紹介
[7]小牧市における学力保証・進路指導

(1)「外国人児童生徒のための進路説明会」の実施

  • ア 日時 7月23日(日曜日)13時~16時
  • イ 参加者 小牧工業高等教頭、小牧高校教頭、誉高校渉外部長、中学校進路指導主事、指導主事、外国人児童生徒教育担当教員(28名)、体験発表(卒業生2名)、語学相談員(12名)
  • ウ 対象者  外国につながる児童生徒とその保護者、当日参加者、児童・生徒 68名、保護者 92名
  • エ プログラム
    1. 「中学校卒業後の進路について」(中学校進路指導主事)
    2. 上級学校からの説明
    3. 体験発表
    4. ガイドブックを利用して各グループでの相談会
      言語別グループ
      各グループに中学校教員がおり質問に答える
      上級学校の先生方への相談もできる

(2)懇談会への語学相談員の派遣

 就学時健診、入学説明会、進路説明会、個人懇談などには、巡回の語学相談印だけでなく、日本語初期教室の語学相談員も派遣し、保護者が言語の面で不安にならないように配慮する。
 それにより保護者と学校側が共通理解のもと児童生徒に対して支援をすすめることができる。

[9]小牧市における成果の普及

(1)日頃の活動をWebページで紹介
 他市町村の関係者がWebページを見ることにより、連絡を取り合うことができ。指導方法や教材などの情報を普及できる。多くの学校で、母語指導の活動の様子を紹介している。

(2)愛知県外国人児童生徒教育連絡協議会で小牧市の取組として紹介
 小牧市の取組について、連絡協議会のグループ協議において情報提供するとともに、日本語指導が必要な外国人児童生徒等が小・中学校に在籍している県内の市町村教育委員会に、資料提供の形で初期指導教室の取組や独自に行っている施策を紹介した。

3.成果と課題

[1]小牧市における運営協議会・連絡協議会の実施
  • ○ 市教委としての考え方を各小中学校の日本語指導担当教員や語学相談員に伝えるとができる。また学校や日本語初期教室での児童生徒の状況を教員や語学相談員から直接きくことができる。経験の浅い教員にとっては、日本語指導の在り方について、ベテランの教員から直接アドバイスをうけることができる。また取り組むべき課題について共通理解を図ることができた。
  • ○ 毎年「進路説明会」に多くの児童生徒保護者が参加している。日本での進路選択について知り、早めに準備することの大切さを知っていただく良い機会となっている。また上級学校の先生方の話や体験談など語学相談員が同時通訳することで、保護者にとっても分かりやすい会となっている。保護者が直接上級学校の先生方や中学校進路指導主事へ直接質問することができ、その後の指導の充実につながっている。
[2]小牧市における拠点校等の設置や拠点的機能の整備
  • ○ 来日して間もない子どもたちへの早期対応は、本人や保護者の不安を軽くし、在籍校への就学を円滑にしている。学校の負担軽減にも役立っている。
  • △ 日本語初期教室への入級へは保護者の送迎が必要である。比較的駅に近いところに分室を開設したが送迎ができないため入級をあきらめる児童生徒もいる。送迎についての支援は今後の課題である。
[3]小牧市における日本語能力測定方法等を活用した実践研究の実施 (必須実施項目)
  • ○ 外国人児童生徒連絡協議会や夏季研修など様々な場面でDLA及びその活用法の研修を行うことで、日本語指導担当教員の力量向上を図ることができた。
  • ○ DLAを活用した授業を公開し経験の浅い教員が授業研修に参加することで、小牧市の外国人児童生徒教育に携わる教員の力量が向上した。
  • ○ DLA実施により、子ども一人一人のモチベーションアップにつながった。
  • △ 今年度の研修である程度の成果は得られた。児童生徒は、多くの時間在籍する学級で学習をする。
     また今後も外国人児童生徒教育に携わる教員は入れ替わっていく。携わっている教員、語学相談員だけでなく、在籍する学級の教員にもDLAについて知ってもらう必要がある。
  • △ DLAは実施したら終わりではない。DLAを活用した授業計画の立て方についてもさらに研修を計画していきたい。
[4]小牧市における「特別の教育課程」による日本語指導の実施 (必須実施項目)
  • ○ 市内25校「特別の教育課程」を作成はしている。繰り返し研修を行うことで、児童生徒の日本語能力の実態にあった教育課程になりつつある。
  • ○ 「特別の教育課程」を作成することにより、日本語教育担当教員と在籍学級の担任が明確な到達目標や指導計画を共有することができ、児童生徒一人一人にあった指導・支援を行うことができる。
  • ○ 急に転校する児童生徒も、「特別の教育課程」が整備されていれば、適切な支援指導が引き継がれ、児童生の学力向上につながる。
  • △ 外国人児童生徒については、「特別の教育課程」とともに「個別の支援計画、指導計画」の作成が進んでいる。児童生徒の日本語能力、そして日本での就学に対する保護者の考え方など、次年度への引き継ぎが重要となる。今後は保護者と共に「個別の支援計画・指導計画」を作詞したり見直したりする必要であると考える。
[5]小牧市における日本語指導ができる支援員の派遣
  • ○ 通訳や翻訳を通し、保護者との信頼関係を築くことができ、協力を得られるようになった。
  • ○ 日本語初期教室で集中的に日本語指導や生活適応指導を行うことにより、在籍校への就学がスムーズになる。
  • ○ 児童生徒の不安が軽減でき、精神的安定にもつながった。
  • ○ 外国人児童生徒の日本語能力が向上した。
  • ○ 外国人児童生徒の学習意欲が向上し、学習理解が進んだ。
  • ○ 母語指導を通して、児童生徒が母国に感心を高め、ルーツに自信を持つことができた。
  • △ 語学相談員の活動内容として、文書の翻訳や保護者会での通訳が大きな割合を占めている。各学校で行っている翻訳文書の一部は、市内で統一できる文書もある。共通の翻訳文書について一括管理することで、翻訳の効率化ができる。
  • △ 在籍する日本語指導が必要な児童生徒の人数で、語学相談員の訪問回数を設定している。年度当初の急な編入で、語学相談員の訪問がなく支障をきたした学校があった。今後も各学校の実態を把握し、調整をしていきたい。
[6]小牧市における児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • ○ 日本語初期教室で集中的に日本語指導や生活適応指導を行うことにより、在籍校への就学がスムーズになる。
  • ○ 語学相談員による文書の翻訳や相談活動により、保護者との連携がとれやすくなる。
  • ○ 語学相談員が母語指導を行うことで、児童生徒と保護者のコミュニケーションを円滑にし、絆になる。
  • △ 母語が分かる支援員が学校いることで児童生徒や保護者は安心するが、保護者はなかなか日本語を覚えようとしない。日本語の方が得意となる児童生徒と母語に頼る保護者との間でのコミュニケーションがなかなかとれず、支援に困ることがある。親子でコミュニケーションがとれるよう母語指導は続けたいが、「子どもに早く日本語を覚えさせたい」と願う保護者の希望が強く、母語指導を希望する家庭は少ない。
[7]小牧市における学力保証・進路指導
  • ○ 「外国人児童生徒のための進路説明会」では、毎年多くの児童生徒保護者が参加している。日本での進路選択について知り、早めに準備することの大切さを知っていただく良い機会となっている。また、語学相談員が同時通訳する上級学校の先生方の話や体験談などを聞いたり、上級学校の先生方や中学校進路指導の先生へ直接質問したりすることができ、進路について理解を進め、その後の指導の充実につながる。
  • △ 子どもの進路について早くから準備をしようと思っている保護者は参加するが、日本語指導担当教員が声をかけても参加しない家庭、保護者は多い。子どもが小学生の頃から参加して将来について親子で考えている過程もあるが、まだまだそういった家庭は少ない。今後は情宣についても工夫していきたい。
[8]小牧市における成果の普及
  • ○ 各学校で日本語指導担当の教員が行っている授業や活動を、ホームページなどで紹介することにより、本市での外国人児童生徒教育について理解が得られる。特に「外国人児童生徒のための進路説明会」など他市町村からの問い合わせも多い。
  • △ 各学校でホームページにアップ回数などに差がある。今後は外国人児童生徒連絡協議会が小牧市の活動を紹介することなどを含め、検討していきたい。

4.その他(今後の取組予定等)

 

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