平成28年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(岡崎市)

平成28年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

  • 教育委員会
    • 外国人児童生徒教育担当指導主事1名、語学相談員(常勤7名、臨時4名)
  • 校長会・教務主任研修会
    • 各学校長・教務主任
  • 外国人児童生徒教育研修会・担当者会(協議会)
    • 外国人児童生徒教育部・・・部長1名、副部長1名、外国人児童生徒教育指導員1名
    • 日本語指導を必要とする外国人児童生徒が在籍する学校の外国人児童生徒担当者及び日本語教育担当教員
  • 市内小中学校
    • 外国人児童生徒教育指導員が日本語指導を行っている学校を訪問し、授業の指導、協議会を行う。

2.具体の取組内容

 ※取り組んだ実施事項[1]~[8]について、それぞれ記入すること

[1]初期指導教室やセンター校等の設置

 平成28年5月の調査で、外国籍児童生徒は497名在籍している。このうち、日本語教育を必要とする児童生徒が253名、日本国籍で日本語指導を必要とする生徒が83名、合計 336名であった。
 そこで、日本語指導を必要とする外国人児童生徒が在籍し、語学相談員の派遣を希望する学校をセンター校とし、語学相談員を派遣して日本語教育を推進した。
 平成28年度は、ポルトガル語26校、中国語17校、タガログ語28校に、3か国語の語学相談員((5)参照)を派遣して、日本語指導を行った。
 初期指導教室は開催していない。それを補うために、常勤の語学相談員のいない言語(ベトナム語)の児童生徒2名と、転入によるセンター校以外の学校に、初期対応として中国語の児童生徒・5名、ポルトガル語の児童生徒・2名に対応した。

[3]日本語能力測定方法の活用

 5月の第1回 外国人児童生徒教育研修会・担当者会において、日本語能力測定方法の学習会を実施した。その後、各校において、個々の児童生徒の日本語能力測定を実施し、個別の指導計画に記載することにした。この結果をもとに、日本語指導の計画を立てることができた。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 外国人児童生徒教育研修会・担当者会において、「特別の教育課程」の導入について説明し、2学期より各学校において取り組みを始めた。

  • 5月・・・「特別の教育課程」の概要説明。
     「個別の指導計画」の作成を進めていくために、平成27年度に一部、試行した学校の「個別の指導計画」を使用して、研修を行った。
  • 5月~7月・・・外国人児童生徒教育部会において、「特別の教育課程」を導入するため、実施方法・報告様式・「個別の指導計画」の様式について、検討した。
  • 9月・・・各校において、「特別の教育課程」による日本語指導を開始。
     導入した学校については、教育委員会に、「平成28年度特別の教育課程編成・実施計画」を提出。合わせて、「個別の指導計画」の作成を始める。
  • 2月・・・各校で作成した「個別の指導計画」 様式2 (指導に関する記録)をレポートとして提出し、それを基に、グループ協議を行った。
  • 3月・・・「特別の教育課程」による日本語指導を実施した学校は、教育委員会に、「平成28年度特別の教育課程編成・実施報告」を提出。
[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 平成28年度の支援員は、ポルトガル語4名、中国語1名、タガログ語2名、計7名である。
 支援員については、日本語指導を必要とする外国人児童生徒が在籍し、語学相談員の派遣を希望する学校をセンター校に派遣し、日本語指導や翻訳、生活適応相談を行った。
 1回の訪問は午前3時間、または午後2時間とし、センター校1校について週1回の訪問を基本としたが、該当する児童生徒の人数が多い学校には、2回から3.5回(隔週派遣による1回を含む)とした。
 また、転入児童生徒等に対して、ベトナム語・中国語・ポルトガル語の臨時語学相談員を派遣し、初期対応とした。平成28年度の臨時語学相談員は、ベトナム語・中国語・ポルトガル語について、それぞれ1名ずつであった。

[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 本市の語学相談員7名と臨時語学相談員3名は、「[5]日本語指導ができる支援員」を兼務である。日本語指導に加え、入学式や就学時健康診断(就学ガイダンス)の実施時の通訳や日本での生活に適応できるように説明したり、相談に乗ったりした。

3.成果と課題

 ※取り組んだ実施事項[1]~[8]について、それぞれ記入すること

(1)[2]初期指導教室やセンター校等の設置

 外国人児童生徒が在籍する学校には、語学相談員の派遣し、センター校とした。これにより、各校で語学相談員が必要に応じて母語を使用したので、児童生徒の日本語能力が向上したり、落ち着いた生活をするための支援をしたりすることができた。
 センター校とはいうものの、在籍する児童生徒を対象とすることが多かったので、他校の受入の状況は十分と言えない。これは、児童生徒の学校間の移動について、安全面や費用面での問題や、受け入れ側の学校において、他校の児童生徒に対する日本語指導の体制が整いにくいためである。センター校としての設置では、指導体制を整えることが必要である。合わせて、初期指導教室を設置することは、児童生徒の在籍状況や、そこに通うことについて、上記のようなことがあるため、難しさがある。

(2)[3]日本語能力測定方法の活用

 日本語能力測定方法を活用することによって、全ての児童生徒について、同様の方法で日本語能力を測定することができることがよかった。実際に活用している学校の担当者から、「項目ごとに能力が測定できる。一つ一つ、調べられるのがよい」という感想があった。
 研修会を通じて、各校の外国人児童生徒教育担当者や日本語指導担当者に日本語能力測定方法について研修を重ねてきた。しかし、担当者からは「測定から分析まで行うには時間が必要」「結果を指導に生かす方法難しい」「教科学習の指導を優先したい」などの意見があった。さらに、日本語能力測定方法について研修を重ねていく必要がある。

(3)[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 第1回の研修会で「特別の教育課程」の導入に向けての説明をし、準備を進め、平成29年2学期から「特別の教育課程」による日本語指導を導入した。学校においては、日本語指導を必要とする児童生徒について確認し、「平成28年度特別の教育課程編成・実施計画」を作成して、教育委員会に提出した。年度末には、「平成28年度特別の教育課程編成・実施報告」を提出する。
 また各校において「個別の指導計画」の作成を始めた。すでに試行していたので、どの学校もスムーズに取り掛かることができている。「個別の指導計画」を作成することにより、日本語指導についての学習目標を明確にすることができた。様式についても、本格実施に合わせて、試行していた様式を改良したものを使用することにした。これによって、今年度、行われた日本語指導をまとめて次年度以降に生かすためのものとしての機能も持たせることができた。

(4)[5]日本語指導ができる支援員の派遣

 支援員(語学相談員)を学校に派遣したことで、日本語指導の補助、保護者等への書類の翻訳、日本の文化・生活に適応するための相談をすることができた。本市の語学相談員は、児童生徒の母語が分かり、日本語指導ができるため、計画的に派遣日程を設定することで、児童生徒の日本語能力の向上に大きな役割を果たしている。

(5)[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

 (4)で記述したように、市語学相談員は母語が分かる支援員を兼ねる。転入したばかり、また日本語で十分に自らの思いを話すことができない児童生徒にとって、母語で話すことができること、話を聞いてもらうことができる語学相談員の存在は、精神的な安定につながっている。
 [5]と[6]を兼ねていることで、日本語能力の向上につながっていることは間違いない。しかし、児童生徒の日本語能力を十分に伸長するだけの派遣をすることができていない。各校への派遣が週1回、2~3時間の基本から、複数回の派遣ができるようにしていけるのがよい。

4.その他(今後の取組等)

 平成27年度より、中国語とフィリピノ語を母語とする児童生徒の転入が増加してきていた。そのため、市当局にこの実態を伝え、平成29年度については、上記の2か国語について、語学相談員を1名ずつ、増員するための予算を獲得した。これにより、語学相談員を派遣について、これまでより充実することができる予定である。
 また、転入する児童生徒が、多国籍化している。今後については、様々な言語の語学相談員を確保していけるとよい。そして、ますます増える日本語指導が必要な児童生徒に対応するため、どんな言語の児童生徒にも、個に応じて適切に日本語指導をすることができる方法について研究をしていく必要がある。

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