本市では,平成26年度から,原則来日後1年以内の児童生徒を対象とした「特別の教育課程」による日本語指導を拠点校巡回方式により全面実施している。今年度は,「日本語指導トータルサポートシステム」を構築し,長期的な視野での日本語指導,対象児童生徒とその保護者への母語支援,そして,在籍校の受入れ体制づくりの支援等,対象児童生徒に関わる全ての人々が連携できる体制づくりをめざした。
具体的な事業の推進体制は,以下の図の通りである。
※取り組んだ実施事項[1]~[8]について、それぞれ記入すること
6月に日本語指導担当教員を対象に,「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」について研修した。開発者の1人である,同志社大学准教授の櫻井千穂先生を講師に迎え,理論の理解に加え,実際に評価に係るワークショップを実施した。この研修を受けて,前期終了時・年度末の2回,特別の教育課程による日本語指導対象児童生徒に対してアセスメントを実施した。
アセスメント結果については,評価とともに個別の指導計画に記入し,一人一人の子ども達の目標設定や指導計画の見直し等に活用した。
本市では,平成26年度より,原則来日後1年以内の児童生徒に対して,特別の教育課程による日本語指導を実施している。
※取り組んだ実施事項[1]~[8]について、それぞれ記入すること
成果
昨年度まで,全市の受入れ対応を担当指導主事が行なっていたが,トータルサポート校にコーディネーターを配置し,担当エリアを分けたことにより,受入後の対応がより迅速になった。トータルサポート校・サブサポート校に日本語指導担当教員等を複数配置することにより,担当者会を定期的に実施したり,指導について互いに相談したりする機会を設けることが可能となり,従来学校に一人配置であった担当者の心理的な不安が解消され,モチベーションの向上にもつながった。
課題
全市の小中学校への受入れに対して,各サポート校から巡回方式で対応しているが,配置している日本語指導担当教員だけでは巡回しきれず,市費非常勤講師で対応している。その場合,拠点校がないことから,教材研究や準備の場所や時間の確保,そして各在籍校との連携時間の確保が難しい。また,いつどこの学校に編入するのかがわからないことから,巡回に係る移動時間が長くなることもあり,指導者の負担が大きい。
成果
時期を定めてアセスメントを実施,その結果を評価とともに個別の指導計画に明記し担当指導主事に提出することとした。その結果,子どもの日本語習得状況が技能毎に明確になり,学級担任や教科担任,保護者,日本語指導担当教員等が子どもの現状を共通理解し,必要な指導や支援について具体的に考えることが可能となった。
課題
指導者のこれまでの経験や考え方によって評価が異なる場合がある。各指導者が事例と評価をもちより,具体的な基準について考えていく必要がある。
成果
年間7回のセミナーを実施したことから,日本語指導担当教員の指導力向上につながっただけではなく,担当教員同士のつながりも生まれた。
課題
今年度,セミナー対象を日本語指導担当教員のみとしたことから,学級担任や教科担任が,日本語指導や母語支援についての理解を深めたり,指導を振り返ったりする機会を設けることができなかった。来年度は,内容により対象を広げ,日本語指導担当教員,子どもの在籍校の教員そして母語支援員がともに研修する場を設けていきたい。
成果
「特別の教育課程」による日本語指導終了後も,引き続き個別学習の場があることにより,子どもの学力保障や気持ちの安定につながっている。
課題
日本語指導ボランティアには,DLAの実施を義務付けていないため,具体的な評価がしにくい状況がある。そのことから,指導の継続・終了を決定する明確な材料がない。
成果
来日直後に母語がわかる支援員を派遣することにより,子ども及び保護者が,日本の学校について理解し適応することができた。また,受入れ校の不安の軽減にもつながり,お互いが安心できる体制づくりにつながった。
課題
新規来日数が増加することにより,母語がわかる支援員が不足している現状がある。人材の確保が急務である。
※日本語指導担当教員指導力向上セミナーの対象を広げる等
電話番号:03-6734-2035