平成28年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(京都市)

平成28年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 本市では,平成26年度から,原則来日後1年以内の児童生徒を対象とした「特別の教育課程」による日本語指導を拠点校巡回方式により全面実施している。今年度は,「日本語指導トータルサポートシステム」を構築し,長期的な視野での日本語指導,対象児童生徒とその保護者への母語支援,そして,在籍校の受入れ体制づくりの支援等,対象児童生徒に関わる全ての人々が連携できる体制づくりをめざした。

 具体的な事業の推進体制は,以下の図の通りである。

事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

 ※取り組んだ実施事項[1]~[8]について、それぞれ記入すること

[2]初期指導教室やセンター校等の設置
  1. トータルサポート校の設置
    コーディネーター,日本語指導担当教員,母語支援員を配置し,担当エリア内の小中学校に編入した児童生徒に対する日本語指導,母語支援等について,コーディネーターが受入校と連携して,適切な指導・支援ができるように派遣を行った。また,自校の日本語指導についても実施した。平成28年度については,試行的に1校に設置した。 ※指導者人数,勤務形態等は図参照
  2. サブサポート校の設置
    トータルサポート校の担当エリア外の地域の小中学校に日本語指導が必要な児童生徒の編入があった場合,サブサポート校に配置した日本語指導担当教員が巡回指導を実施した。サブサポート校からの派遣調整については,担当指導主事が受入れ校と連携し,コーディネートを実施した。
[3]日本語能力測定方法の活用

 6月に日本語指導担当教員を対象に,「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」について研修した。開発者の1人である,同志社大学准教授の櫻井千穂先生を講師に迎え,理論の理解に加え,実際に評価に係るワークショップを実施した。この研修を受けて,前期終了時・年度末の2回,特別の教育課程による日本語指導対象児童生徒に対してアセスメントを実施した。
 アセスメント結果については,評価とともに個別の指導計画に記入し,一人一人の子ども達の目標設定や指導計画の見直し等に活用した。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

 本市では,平成26年度より,原則来日後1年以内の児童生徒に対して,特別の教育課程による日本語指導を実施している。

  • 日本語指導担当教員指導力向上セミナー
    日本語指導担当教員(教諭・常勤講師・非常勤講師)を対象に,今年度7回のセミナーを実施した。
[5]日本語指導ができる支援員の派遣
  • 日本語指導ボランティアの派遣
    「特別の教育課程」による日本語指導が終了した児童生徒,また,対象とならない児童生徒について,学校からの申請に応じて日本語指導ボランティアを派遣した。
    • ボランティア登録先:(公財)京都市国際交流協会
    • 対象校種:京都市立小学校・中学校及び総合支援学校の小学部・中学部
    • 派遣人数:対象児童生徒60名,ボランティア派遣人数31名 (平成28年度)
    • 派遣回数等:対象児童生徒1人あたり年間52回上限 1回あたり1時間程度 放課後の時間帯
[6]児童生徒の母語がわかる支援員の派遣
  • 母語支援員の派遣
     トータルサポート校,サブサポート校を拠点校として,母語支援員を配置し,必要に応じて少数在籍校に派遣している。来日直後の児童生徒及び保護者への適応支援が主な業務内容である。
    • 勤務形態:京都市教育委員会非常勤嘱託職員
    • 言語・人数:英語・3名,中国語・3名,フィリピノ語・2名
    • 派遣対象校種:京都市立小学校,中学校,総合支援学校の小学部・中学部

2.成果と課題

 ※取り組んだ実施事項[1]~[8]について、それぞれ記入すること

[2]初期指導教室やセンター校等の設置

成果

 昨年度まで,全市の受入れ対応を担当指導主事が行なっていたが,トータルサポート校にコーディネーターを配置し,担当エリアを分けたことにより,受入後の対応がより迅速になった。トータルサポート校・サブサポート校に日本語指導担当教員等を複数配置することにより,担当者会を定期的に実施したり,指導について互いに相談したりする機会を設けることが可能となり,従来学校に一人配置であった担当者の心理的な不安が解消され,モチベーションの向上にもつながった。

課題

 全市の小中学校への受入れに対して,各サポート校から巡回方式で対応しているが,配置している日本語指導担当教員だけでは巡回しきれず,市費非常勤講師で対応している。その場合,拠点校がないことから,教材研究や準備の場所や時間の確保,そして各在籍校との連携時間の確保が難しい。また,いつどこの学校に編入するのかがわからないことから,巡回に係る移動時間が長くなることもあり,指導者の負担が大きい。

[3]日本語能力測定方法の活用

成果

 時期を定めてアセスメントを実施,その結果を評価とともに個別の指導計画に明記し担当指導主事に提出することとした。その結果,子どもの日本語習得状況が技能毎に明確になり,学級担任や教科担任,保護者,日本語指導担当教員等が子どもの現状を共通理解し,必要な指導や支援について具体的に考えることが可能となった。

課題

 指導者のこれまでの経験や考え方によって評価が異なる場合がある。各指導者が事例と評価をもちより,具体的な基準について考えていく必要がある。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施

成果

 年間7回のセミナーを実施したことから,日本語指導担当教員の指導力向上につながっただけではなく,担当教員同士のつながりも生まれた。

課題

 今年度,セミナー対象を日本語指導担当教員のみとしたことから,学級担任や教科担任が,日本語指導や母語支援についての理解を深めたり,指導を振り返ったりする機会を設けることができなかった。来年度は,内容により対象を広げ,日本語指導担当教員,子どもの在籍校の教員そして母語支援員がともに研修する場を設けていきたい。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣

成果

 「特別の教育課程」による日本語指導終了後も,引き続き個別学習の場があることにより,子どもの学力保障や気持ちの安定につながっている。

課題

 日本語指導ボランティアには,DLAの実施を義務付けていないため,具体的な評価がしにくい状況がある。そのことから,指導の継続・終了を決定する明確な材料がない。

[6]児童生徒の母語がわかる支援員の派遣

成果

 来日直後に母語がわかる支援員を派遣することにより,子ども及び保護者が,日本の学校について理解し適応することができた。また,受入れ校の不安の軽減にもつながり,お互いが安心できる体制づくりにつながった。

課題

 新規来日数が増加することにより,母語がわかる支援員が不足している現状がある。人材の確保が急務である。

4.その他(今後の取組等)

  • 来年度以降も現在の日本語指導トータルサポートシステムによる取組を継続し,指導・支援の一層の充実を図る。
  • 在籍校の管理職,学級担任,教科担任等を対象とした研修会の充実を図る。

 ※日本語指導担当教員指導力向上セミナーの対象を広げる等

  • 学校連絡文書の各国語訳等をはじめとする,関連資料のウェブ配信とその周知

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

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