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平成27年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(兵庫県姫路市)

平成27年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

2.具体の取組内容

[1]運営協議会・連絡協議会の実施
  • 大学教員及び姫路市教育委員会指導主事・姫路市内各学校の日本語指導教員・支援員等で構成する「連絡協議会」を3回開催した。
    • 第1回姫路市帰国・外国人児童生徒受入促進事業連絡協議会 平成27年6月2日開催
      • 【参加者】 各校担当者等 30人 支援員 8人 指導主事等 6人
      • 【内容】
        • 事業説明
        • 演習 「日本語能力測定方法を活用した日本語指導」
        • 実践発表「日本語指導のわかりやすい授業づくり」
    • 第2回姫路市帰国・外国人児童生徒受入促進事業連絡協議会 平成27年11月4日開催
      • 【参加者】 大学教員1人 各校担当者等 38人 支援員 11人 指導主事等 6人
      • 【内容】
        • 授業公開 4年 社会 「ごみの処理と利用」
        • 指導助言及び講義 「在籍学級における教科指導型日本語指導について」
    • 第3回姫路市帰国・外国人児童生徒受入促進事業連絡協議会 平成28年1月26日開催
      • 【参加者】 大学教員1人 各校担当者等 36人 支援員 7人 指導主事等7人
      • 【内容】
        • 授業公開 1年 数学科 「空間図形」
        • 指導助言及び講義 「在籍学級における教科指導型日本語指導について」
[3]日本語能力測定方法の活用
  • 6月に開催した第1回姫路市帰国・外国人児童生徒受入促進事業連絡協議会において、日本語指導研究推進校の日本語指導担当教師を講師とした日本語能力測定の演習を行った。
  • 年度末に本年度、渡日した児童生徒を中心に日本語能力測定を実施した。
[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施(必須実施項目)
  • 「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた説明会 平成27年6月2日開催
[5]日本語指導ができる支援員の派遣
  • 日本語指導が必要な外国人児童生徒の在籍する小学校(3校)・中学校(1校)に、日本語指導ができる支援員を派遣し、学力保障に向けた取組を充実させた。
[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • バイリンガル支援員(スタディサポーター29人・通訳18人)の派遣
  • 日本語指導が必要な児童生徒の在籍する小・中学校等に、外国語が話せるバイリンガル支援員(スタディサポーター)・バイリンガル支援員(通訳)を派遣し、日本語指導の補助や学校との連絡調整を行った。
  • ・バイリンガル支援員(スタディサポーター)・バイリンガル支援員(通訳)を派遣し、コミュニケーションの円滑化を図ることにより、児童生徒及び保護者の心の安定を図った。
  • バイリンガル支援員(就学促進員)の派遣
     不就学の子どもがいる外国人家庭に対して、日本の教育制度や就学についての具体的な説明や働きかけを行い就学を促した。

3.成果と課題

[1]運営協議会・連絡協議会の実施

(成果)

 第1回連絡協議会では、本市における日本語指導が必要な児童生徒の受入体制及びDLAの概要及び活用方法について説明を行った。日本語指導研究推進校の日本語指導担当教師による日本語能力測定の演習及び、長年日本語指導が必要な児童生徒を多数受け入れている学校の日本語指導担当教師から、取り出し指導及び同室指導の取組について、スライドやDVDを活用して発表していただいた。今年度初めて、日本語指導担当になった教員や日本語指導が必要な児童生徒の担任になった教員も多く、参加者の感想には「本市における支援体制や支援員の活用方法について理解することができた」「DLAを活用し、児童の実態をより性格に理解し、指導へとつなげたい」「担任に任せるだけでなく、校内の連携体制作りが大切であることが分かった」「支援員との連携をもっと密にし、今後指導していく上で参考になった」などがあり、指導・支援のポイント等数多く得ることができた協議会となった。

 第2回連絡協議会では、小学4年生のクラスで社会科「ごみの処理と活用」の授業公開を行った。公開授業には多くの参観者があり、授業後の参加者の感想には「ICT機器や図、表を効果的に使っていたので、文字が分からない児童にも分かりやすい」や「話形の提示、まとめる時のキーワードの指定などで、外国語を母語とする児童だけでなく、どの児童にとっても考えを発表しやすい配慮がなされていた」などがあり、授業実践に役立つ公開授業となった。その後の大学教員による指導助言・講義では、公開授業での講評及び指導ポイントの事例等を示唆していただき、具体的な指導の在り方を学ぶことができた。

 第3回連絡協議会では、中学1年生のクラスで数学科「空間図形」の授業公開を行った。指導案作成時から、日本語指導をどのように取り入れていくべきかという話し合いが何度も行われた。その後の大学教員による指導助言・講義では、公開授業での講評及び他校での実践を例に、教科指導型日本語指導について説明をしていただいた。また、各校から事前に提出された今年度の各校の取組の成果や課題をまとめたものを印刷して配布し、各校の取組について交流する場をもつことができた。

(課題)

  • 学校内での受入及び研修体制をより充実させ、日本語指導担当や担任のみならず、学校全体で日本語指導が必要な児童生徒に関わり、情報を共有する体制づくりが必要である。
  • 協議会等で各校担当者等の定期的な意見交換が不可欠であり、日本語指導が必要な児童生徒を長年受け入れている学校の取組を聞いたり、各校における悩みや課題を共有したりする機会を継続的に設定していきたい。
  • 公開授業も取り入れながら、学校間での効果的な学習教材や指導・支援方法等の情報を共有できるような連携を視野にいれ今後も年3回程度の実施を行っていきたい。
  • 今年度は、講師を2回招聘し、公開授業後、「在籍学級における教科指導型日本語指導」についてお話をしていただいたが、参加者からは、「もっとお話が聞きたい」と言う感想が多かった。来年度も、初めて日本語指導担当になる教員や日本語指導が必要な児童生徒の担任になる教員も多いことが予想されるため、来年度は、3回講師を招聘し研修を進め、姫路市内の帰国・外国人児童生徒教育の充実を図っていきたい。
[3]日本語能力測定方法の活用(必須実施項目)

(成果)

  • 日本語能力測定の演習を行うことで、伝達講習を受けた先生方の感想には、「やり方がよく分かり、すぐに実践できると思った」「児童が話す・読む・書く・聴くに関して何が得意で何が不得意なのか、児童の学習到達度を理解し、個に応じた支援方法を模索したい」 「対象児童に必要なアセスメントを選び実施し、日本語能力を把握し、担任と今後の支援について計画したい」「支援員と連携し計画的に実施し、支援生徒の支援に活かしたい」などがあり、日本語能力測定方法の必要性を理解することができた。
  • 日本語指導に対する捉え方が曖昧であったが、DLAを活用することで、より焦点化して日本語指導の在り方を考えて対応することができた。
  • 来日すぐに母語支援員といっしょに日本語能力測定を実施することで、対象児童生徒の母語に関する理解度を把握することができ、今後の日本語指導を行う上でたいへん参考になることが分かった。
  • 年度末に日本語能力測定を実施することで、客観的に対象となる児童生徒の日本語能力の現状を把握することができ、来年度以降、どのような指導を行っていけばよいのか考えることができた。

(課題)

  • 全ての測定を実施するには、時間がかかりすぎるため、まず、どの測定を行うのが有効であるか、検討していくことが課題である。
  • 測定する時間の確保が難しいため、どのように実施していくかが課題である。
  • 日本語能力を測定した結果を、日本語指導に有効に活用していくことが重要である。
  • 日本語能力測定の方法などを、多くの先生方に理解してもらうための研修が必要である。
[4]「特別の教育課程」による日本語指導の導入に向けた協議会の実施(必須実施項目)

(成果)

  • 個別の指導計画を作成しているため、学校内で日本語指導担当者や学級担任が換わっても、支援方法等について引継ぎしやすい。小学校から中学校、または他校へ転入する場合も、対象児童生徒の学習歴や支援状況を把握することができる等、「特別の教育課程」編成の意義を共通理解することができた。
  • 「特別の教育課程」編成、個別の指導計画とも、文部科学省作成の様式及び記入例を提示したため、各校担当者とも記入例を参考に作成することができた。
  • 昨年度作成の個別の指導計画を参考に今年度の指導計画を作成することができた。

(課題)

  • 別室指導を行っている日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍する学校では、個別の指導計画を児童生徒数分作成しなければならないため、教師の負担が大きい。
[5]日本語指導ができる支援員の派遣

(成果)

  • かつて学校で教鞭をとっていた支援員が多く、指導についてはポイントを押さえた効果的な指導ができていた。
  • 日本語指導及び教科指導を各学校とも1年間に70回の派遣であったが、学校の実態に応じて有効に活用していただいた。小学校では主に基礎学力の定着に向けた指導、中学校では進路保障に向けた取組を充実させることができた。日本語支援教室(取り出し指導)での学習指導では、一人一人の現状を的確に把握し、個に応じて効果的な指導を行い、学習成果を上げることができた。

(課題)

  • 来年度さらに取り出し児童生徒の人数が増える派遣校があるため、来年度の派遣回数については今年度の状況を踏まえて考えていきたい。
  • 今年度派遣している学校以外にも、来年度新たに日本語指導が必要な児童生徒が多数在籍する学校がある。現在派遣している4校よりも、多くの学校に日本語指導支援員を派遣したい。
[6]児童生徒の母語が分かる支援員の派遣

(成果)

  • 日本語理解が十分でない児童生徒には、教科書や参考図書を翻訳し、児童生徒が理解できる言語で学習を進めることができた。また、難しい日本語の意味を母語で説明することで、学習への意欲が持続し日本語での理解が深まった。
  • 渡日歴の浅い児童にとって支援員が心の拠り所になり、母語での会話を通して、心配なことや分からないこと、悩み等の相談に乗り心の安定を図ることができた。
  • 休み時間もいっしょに過ごし、遊びや他の児童と関わるときのルールを教え、当該児童は集団生活にずいぶん慣れることができた。
  • 内向的な児童に積極的に話しかけ、能動的に学習に取り組むように指示をし本人の学習意欲が大変高まった。
  • 学年便りや学校行事、学校便りのプリント等、保護者に伝えることを翻訳したり、電話や家庭訪問などでの通訳をしたりして、学校と保護者をつなぐ重要な役割をした。
  • 保護者会や進路相談時に、日本語の理解が十分でない保護者への通訳を行うことで担任と生徒、及び保護者間の意思疎通に大いに役立った。
  • 懇談時の通訳や通知表を含む配付物の翻訳等、必要に応じて細かなことまで伝えることができ、保護者は児童の様子を正しく理解でき、学校への不安を減らすことができた。

(課題)

  • 支援回数が多いほど学習効果が高い。少ない回数で、いかに効果的な支援になるか工夫したり、計画を綿密に立てたりする必要がある。
  • 学年が上がるにつれて、教科や学習内容が増えるため、習得が追いつかず学力の積み上げが難しくなってきている児童生徒が増えている。また、文字は読めるが、内容を把握したり、意見や考えを書いたりする力が弱い児童生徒も多い。日本語指導担当や学級担任だけでなく、学校職員全体で取り組む必要がある。
  • 外国籍児童が多数在籍する学校では、指導や支援に当たる人材が多いほど、確実にきめ細かな対応が可能になるため、今後も支援員の配置が必要である。
  • 日本人児童と外国人児童がよりよく共生できる学校にするため、支援員の体験や経験を教員や児童が聞く場を設定し、多文化共生教育の推進に努める必要がある。
  • 理解できていないにもかかわらず、同室指導において、支援員に翻訳してもらったり、通訳してもらったりすることは、特別扱いされていると感じ、支援員の配置を嫌がる児童生徒がいる。保護者を含め、話し合う必要がある。
  • 在留期間に関係なく、保護者も含め継続した母語支援が必要である。
  • 日本生まれで母語が理解できない外国人児童生徒は、母語しか話せない保護者と意思疎通ができにくくなっている。外国人児童生徒の母語理解も必要である。
  • 文化交流に貢献していただいたが、ますます積極的に活動をお願いして、多文化共生教育を推進していきたい。
  • 今後も支援員と連携して児童や保護者と繋がり、日本で生活する力を育てていきたい。
  • 昨年度と比べ、年度途中の転入が多く、転入生への派遣回数は十分でなかった。来年度も年度途中の転入が多くあると考えられるため、今年度の状況を踏まえて、計画的にバイリンガル支援員を配置する。

4.その他(今後の取組等)

  • 各学校において、在籍学級における教科型日本語指導を推進していくために、どのような取り組み行ってっていけばよいか、研修できる場を設定したい。

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成29年02月 --