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平成27年度 「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」に係る報告書の概要(京都市)

平成27年度に実施した取組の内容及び成果と課題

1.事業の実施体制(運営協議会・連絡協議会の構成員等)

 平成26年度に引き続き「特別の教育課程による日本語指導」を,原則,来日1年以内の児童生徒に全面実施した。実施体制は,拠点校からの巡回指導方式である。対象児童生徒の在籍数が多い学校に,日本語指導担当教員を配置し,そこから,少数在籍校へ指導者が巡回して指導している。日本語指導拠点校と巡回対象校には,担当指導主事が定期的に学校訪問し,抽出の日本語指導だけではなく,在籍学級での指導の様子や,全校的な体制づくりについて助言等を行った。
 また,日本語指導担当教員連絡会,全市教職員対象(希望制)の日本語指導に関わる研修会を開催した。

2.具体の取組内容

[2]初期指導教室やセンター校等の配置

 小学校9校,中学校5校を「日本語指導拠点校」として位置づけ,それぞれの学校の日本語指導担当教員(教諭・常勤講師)が自校の日本語指導に加えて少数在籍校への巡回指導にあたった。拠点校で巡回しきれない児童生徒については,日本語指導担当非常勤講師を任用して指導にあたった。(市費非常勤8名)

[3]日本語能力測定方法の活用

 6月の「日本語指導担当者連絡会」で日本語能力測定方法についてのワークショップを実施した。その上で,前期終了前の9月,年度末の3月に測定の実施し,その結果を記入した個別の指導計画の提出を義務づけた。提出された結果については,担当指導主事が集計・分析して,評価が適切であるかどうかを確認したり,次年度の指導・支援について考える材料としたりした。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導導入に向けた協議会の実施

 日本語指導担当教員の指導力向上をめざして,年間4回「日本語指導担当教員連絡会」を開催した。
 夏季休業中には,全市全校種教職員を対象とした,「日本語指導に関わる研修会」を開催した。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣 6児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 日本語指導ボランティアの派遣
     日本生れ,もしくは来日後一定の年数を経ている児童生徒,特別の教育課程による日本語指導が終了した児童生徒について,各学校からの申請に基づき「日本語指導ボランティア」を派遣した。
     ※放課後の時間帯での指導,年間52回上限(1回あたり1時間程度)
  • 母語支援員の派遣(市非常勤嘱託職員)
     昨年度に引き続き,日本語指導が必要な児童生徒及びその保護者に対して,母語による生活適応指導や,コミュニケーション支援を行う支援員を日本語指導拠点校に配置している。
     フィリピノ語1名(2校兼務),中国語2名

3.成果と課題

[2]初期指導教室やセンター校の配置

 日本語指導拠点校を配置したことにより,少数在籍校への新規来日児童生徒に対する日本語指導や母語支援が迅速に開始できるようになった。また,拠点校の存在を全市的に周知したことにより,日本語の力が十分ではない児童生徒の編入があった際に,必ず連絡が入ってくるようになり,指導や支援のもれがなくなってきた。
 しかし,来日後1年間の指導では,学習に必要な言語の習得までには至らない現状がある。指導期間の延長には,指導者の増員が不可欠であるとともに,巡回指導方式による,移動時間のロスについて改善できるような体制を構築することが必要である。

[3]日本語能力測定方法の活用

 測定方法の研修をした後,年間2回の実施と提出を義務付けたことにより,日本語指導担当教員だけではなく,在籍校の管理職や学級担任が対象児童生徒の様子を把握し,共通理解する機会となった。その結果,子どもに関わる教員が連携して指導・支援にあたる体制が,各学校で構築されつつあると考える。また,在籍学級での授業にどのような形で参加できるのかが,ステージで判定できるため,抽出終了時期や学級で必要な支援が明確になった。
 課題としては,測定方法や,実施マニュアルを見ながらできるが,評価に関して統一された具体的な基準がないため指導者の主観によって評価が異なることがあげられる。また,担当する児童生徒数が多い場合,実施・評価に時間がかかることも課題である。

[4]「特別の教育課程」による日本語指導導入に向けた協議会の実施

 定期的に「日本語指導担当教員連絡会」を開催したことにより,指導力の向上につながっただけではなく,教員同士の交流が深まり,日常的に情報交換等をすることが可能な雰囲気ができた。また,「日本語指導に関わる研修会」を開催したことにより,各学校での受入れ体制について理解が深まった。
 「日本語指導担当教員連絡会」については,今年度の年間4回からもう少し回数を確保し,能力測定方法の評価に関する内容や,実践交流の場を設けていく必要がある。全市全校種全教職員対象の研修については,日本語指導に限った内容ではなく,広く外国にルーツをもつ子どもたち等の教育に関わる内容とし,より参加者を増やしていく。

[5]日本語指導ができる支援員の派遣,6.児童生徒の母語が分かる支援員の派遣
  • 日本語指導ボランティアの成果と課題
     長期的な派遣をすることにより,学習に必要な言語の習得の手助けとなっている。しかし,終了時期を明確にする基準がないため,本当に支援が必要なのかどうかがわからない状況がある。
  • 母語支援員の成果と課題
     来日直後の児童生徒に対して,母語で適切な支援ができるようになったことから,日本の学校生活への不適応を起こすことなく,学校生活を送ることができていることが一番の成果である。また,保護者についても,日本での生活経験が長い同じ国にルーツをもつ支援者がいることは大変心強く,学校との連携も深まった。
     来日する児童生徒の多言語化に伴って,現在の2言語では対応しきれない現状がある。また,支援員の人数から,支援の期間や回数が十分に確保できていない課題もある。

4.その他(今後の取組等)

  • 来日直後の日本語指導が必要な児童生徒を,日本語指導面,母語支援面等トータルに支援できるシステムの開発
     ※来年度,試験的に「日本語指導トータルサポート校」を設置
  • 日本語指導担当教員の研修回数の増加
     ※来年度,「指導力向上セミナー」を年間7回程度開催すると共に,外部の研修会への公費派遣も行う
  • 学校連絡文書の各国語訳等をはじめとする,関連資料のウェブ配信とその周知

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課

電話番号:03-6734-2035

-- 登録:平成29年02月 --